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67 妖精の祝福の秘密

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「そんなに妖精からの祝福が欲しいのですか、殿下……国王陛下、王妃殿下」
「欲しいに決まっているだろう! 」
「なら差し上げましょう。幸い私は妖精の道を通ってきた身。この体には妖精の力が宿っています」

 エヴァンお兄様は真面目な顔で仰った。こんな人たちに妖精の祝福なんて上げられるわけがない!妖精達は殿下たちを嫌って……あれ?

〈いいぜ、エヴァンやれ〉

 良いのかしら……?お兄様にしがみつきながら辺りを見るとなんだか楽しそうな雰囲気になっている。

「では、お三人で宜しいか?そちらの騎士やこの屋敷の主人には必要ないか? 」
「わ、私は……とんでもございません!申し訳ありませんでした!! 」

 私を連れて来た騎士はその場にひれ伏して土下座をしてしまった。もう良心の呵責に耐え切れなかったんだろう。

「では……妖精よ、彼等に「年輪の祝福」を」

〈よし来た、任せろ!〉

 たくさんの妖精が三人に群がって行き、体のあちこちに木の年輪のようなたくさんの丸が重なった模様を描いてい行く。多分、妖精と仲良くしていない人には何も見えないんだろうけれど、私とお兄様にははっきりと見えている。体中至る所が丸で覆われ……最後に額の真ん中に大きな丸が書かれた。

「こ、これは……?」
「妖精の祝福、ですよ。ほら、額の真ん中に連なった丸が見えるでしょう。それが祝福を受けた証です」

 私達の目にはおでこ一杯に大きな円が何重にもなって書かれてみえるけれど、きっと殿下や陛下、王妃様には真ん中の小さな円、三つくらいしか見えないだろう。

「こ、これが……そうなのか!」
「そうですとも。これでアリシアを妻に迎えなくてもいいですよね」
「ああ!いくら美しくとも世継ぎが産めぬ娘は要らぬ」
「父上!?私はアリシアを妻に迎えたい!!」

 この辺は親子で意見の相違があるようだけれど、国王陛下の言い分が通るだろう……。

「まあ、どっちにしてももうあの三人はアリシアやフェンルース家には近づけないよ」
「えっ?」
「後で教えるね」

 お兄様が小声で教えてくれたのでとりあえずホッと胸をなでおろす事が出来た。

「帰ろう、アリー」
「……はい、エヴァン……お兄様……」

 流石にまだ恥ずかしくて、お兄様という敬称を外して呼べなかった。

「アリシア!エヴァン!! 」
「ブランシェ様! 」

 帰ろうかとお屋敷の門の方を振り返ると、物凄い勢いでブランシェ様が馬に乗って飛び込んできた。えっ馬車じゃなくて馬なのですか!?

「無事そうね!アリシア!エヴァンも!」
「ええ、私も無事でした」

 エヴァンお兄様が柔らかく微笑むけれど、よく見るとまだ体中妖精の粉を纏っていてキラキラと光っている。そう言えばどこから現れたのかしら!?お兄様は!

「エヴァンの事は後で話そう。アリシアを連れ去ったのはやっぱり殿下でしたのね……これは許されざることです!」
「ブランシェ嬢、その続きは後で大丈夫です。今はアリーを早く連れて帰ってあげたい」

 ブランシェ様ははっとしてから、馬から飛び降り駆け寄ってきてくれた。

「そうだったわ、怖かったわね……もうすぐうちの馬車も来るからそれに乗って頂戴。帰るのが先ね」
「お気遣い感謝いたします……ブランシェ様」

 お兄様に抱きかかえられるように立っているけれど、私の体力はもう限界を2回くらい突破したような感じだったし、精神力ももうゼロを下回ってマイナスみたいなものだった。

「もう大丈夫だよ、アリー」

 エヴァンお兄様の優しい声を聞いた途端、緊張の糸が限界を迎えて私はストンと気を失ってしまった。

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