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60 秘密なく見えてしまいますから

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「アリシア、週末の我が家での晩餐会は出席で大丈夫だったね? 」
「はい、エヴァンお兄様と伺わせて頂きますわ」
「ミオはどう?」
「しょうがないのでクレス様にエスコートさせてあげて出席させて頂きます。神殿側もやるきですから」

 ファルク様とブランシェ様に話しかけられ、にこやかに返事をする。

「隣国の大使も来るらしいけれど、大丈夫かな?」
「何も問題ないですわ」
「私も大丈夫ですー」

 そんな華々しい私達の会話に、数名の生徒が寄ってくる。

「我が家もご招待を受けておりますので、当日はお邪魔致します」
「ああ、レント侯爵には父から話があるようだ。手間をかけるね」
「私もお邪魔させていただきますね、ブランシェ様」
「ええ、お待ちしておりますわ」

 光と影、そんな言葉がぴったりなようにファルク様とブランシェ様が輝けば輝くほど王太子殿下の周りは影が落ちてゆくようでした。

「……お、王太子は、私だぞ……」
「も、もちろんですよ」

 殿下の周りにはまだ数名のご友人がいるけれど、少し前まで一緒だった宰相家のご子息や有力貴族の子供達の姿は見えない。エヴァンお兄様曰く

「暫く学園を休ませて趨勢をみているんだと思う。良い方へ早く動かなければ大変なことになるから」
「……なるほど」

 でもどう見ても流れはファルク様たちの方へ向かっている。他国から来るお客様もまずリッツプール大公家にいらっしゃるし、国によっては王家に顔を出さずに帰ってしまうところもある。色々な話し合いもまずリッツプール大公家で決まり、そこから実行されていく。
 国政も国王出席の元開かれる会議では何も決まらず、大抵こう言葉が出るらしい。

「……リッツプール大公はなんと申されておりますか? 」

 そして大公の言ったことがほぼ丸ごと採択される。王宮での会議は不必要ではないかとほとんどの貴族が考える所にまでなったらしい。

「し、しかしそれでは我々が困るのではないか……? 」

 ほぼ決まりかけた意見に国王が口をはさんでも、会議に出席した貴族達からは冷たい目でギロリと睨まれたりしているらしい。

「……これだから大局を見ることができないヤツは……」
「我々って困るのはアンタだけだろ……」

 陰でそんなことまで言われているらしい。でももっといたたまれないのは王太子殿下かもしれない。

「頑張りましたしね」
「わあ……」

 学園という実力が数字で表れてしまう場所にいる上に、ファルク様が同学年というのも思いっきり比較対象になってしまっているのだ。試験の成績表が張り出されてしまえば一目瞭然。大体1位にいるファルク様。そして可哀想なことにファルク様に取り入りたい家門の令息や令嬢が学業に打ち込んで目に留まろうと必死になったらしく、皆成績が物凄く伸びている。
 だから相対的に王太子殿下の順位は下がってしまう。多分、殿下もいつも以上に勉強はしたんだと思う、でももっと頑張っている子達が多すぎて上の順位は取れなくなってしまっている。

「あーやっぱりファルク様が一番か~」
「それにしても……へえ……」
「やっぱり、ファルク様は凄いんだなあ……」

 口には出さないけれど、含みがあるそんな囁きが漏れ聞こえてしまう。分かりやすく優劣がついてしまうのは少し残酷な気もする。

「アリーも頑張ったね」
「う……恥ずかしいです」

 私も成績自体はそう悪くはなかったんだけれども、順位は低い……。あ、でもゲームでお馬鹿な悪役令嬢をやっていた頃よりはかなり賢くなっていますよ、本当ですよ!




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