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48 秘密のお気楽夜会
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「いやだわ、うふふ」
「そんな、まさか。ねえ?」
淑女達の涼やかな囁き声。
「聞きましたよ、素晴らしい鉱山が見つかったとか」
「ええ、期待出来そうです。どうです?我が家に投資してみるのは」
「乗せていただこうかな?」
紳士達の取り引きがあちこちで起こり、優雅な楽団の音に合わせ、男女のカップルがワルツを踊る。
「お招きありがとうございます、リッツプール大公」
「やあ!一家で来てくれるとは光栄だよ、アダム。昔のようにマクスウェルと呼んでくれ。ああ、エヴァン君もアリシア嬢もありがとう、ファルクが世話になっているのだろう?」
「いえ、いつもファルク様におせわになっているのはこちらです」
お兄様がゆっくりとお辞儀をし、私もカーテシーを崩さない……つ、辛い。
「アリシア嬢、楽にして。今日は知っての通り気軽な集まりだ。堅苦しいのはなしなんだからね」
「ありがとうございます」
気軽を強調するリッツプール家の夜会。ファルク様のお父様が思いつきで気軽に開いた物……ということになっている。何せ国王陛下の誕生会はあと5日後にある。各貴族達は大体はそこに参加するのだが……我がフェンルース家は出ない。もう国王一家の顔も見たくないからだ。
「アリシア様ぁーー!素敵!妖精のようです」
「ミオさん?」
「はいっ!ファルク様にお願いして招待状をいただきました!代わりにリッツプール大公の腰痛を治さなくちゃならなくなりましたけど!」
「あら、責任重大ね? 」
もう終わりましたよ!とにっこり笑っている。そういえばリッツプール大公は元気にあちこち挨拶をして回ってるわ、流石ね。
「アリシア様、後で歌ってくださるんですよね?あの、妖精の歌を」
遠慮がちに小さな声で尋ねてきたけれど、周りが一瞬で静かになってしまった。えっと……あの?
私が何事かとキョロキョロ辺りを見回すと、お兄様は苦笑しているし、お父様とお母様も少し困ったように眉を下げていらっしゃる。
「それは構わないんですけど」
ざわりっ!また人が一瞬だけざわめいて静かになった。な、なにかしら……。
「けど、けど何かありましたか?!」
必死な顔で聞いてくるミオさん。
「実は私、歌があまり上手ではないからびっくりさせてしまうかもしれないわ」
子供の頃から嫌味ばっかり聞こえて来て歌うことをやめてしまったから、実は下手くそなの……でもそれは口の悪い妖精の声で私に相手をして欲しくて悪態をついていたのが分かったからもう大丈夫なんだけど、練習不足はどうしようもないわよ?
「いいえ!アリシア様の美しい声が聞けるだけでうっとりですよー!あと、やっぱり妖精は見てみたいっていうのはあります、ごめんなさい」
「あら、良いのよ。だって珍しいものね。何でも妖精と波長を合わせられる魔力の持ち主があまりいないから見ることができないらしいわ。難しいものね」
「ふえーー!そうなんですか、しらなかったです」
何か奥の方で「波長だと?!」「なんということだ!すぐ学会に報告だ!」とか言いながら走り去る男性が数人見えたけど、どうしたのかしら?
「妖精をみると幸運が舞い込むって聞いて、見たい人がいっぱいなんですよ!」
「あら、そうなの?じゃあ頑張って歌うわね」
何故か知らないけれどその後拍手喝采されてしまった。幸運が本当に来てくれれば良いなぁ。
「そんな、まさか。ねえ?」
淑女達の涼やかな囁き声。
「聞きましたよ、素晴らしい鉱山が見つかったとか」
「ええ、期待出来そうです。どうです?我が家に投資してみるのは」
「乗せていただこうかな?」
紳士達の取り引きがあちこちで起こり、優雅な楽団の音に合わせ、男女のカップルがワルツを踊る。
「お招きありがとうございます、リッツプール大公」
「やあ!一家で来てくれるとは光栄だよ、アダム。昔のようにマクスウェルと呼んでくれ。ああ、エヴァン君もアリシア嬢もありがとう、ファルクが世話になっているのだろう?」
「いえ、いつもファルク様におせわになっているのはこちらです」
お兄様がゆっくりとお辞儀をし、私もカーテシーを崩さない……つ、辛い。
「アリシア嬢、楽にして。今日は知っての通り気軽な集まりだ。堅苦しいのはなしなんだからね」
「ありがとうございます」
気軽を強調するリッツプール家の夜会。ファルク様のお父様が思いつきで気軽に開いた物……ということになっている。何せ国王陛下の誕生会はあと5日後にある。各貴族達は大体はそこに参加するのだが……我がフェンルース家は出ない。もう国王一家の顔も見たくないからだ。
「アリシア様ぁーー!素敵!妖精のようです」
「ミオさん?」
「はいっ!ファルク様にお願いして招待状をいただきました!代わりにリッツプール大公の腰痛を治さなくちゃならなくなりましたけど!」
「あら、責任重大ね? 」
もう終わりましたよ!とにっこり笑っている。そういえばリッツプール大公は元気にあちこち挨拶をして回ってるわ、流石ね。
「アリシア様、後で歌ってくださるんですよね?あの、妖精の歌を」
遠慮がちに小さな声で尋ねてきたけれど、周りが一瞬で静かになってしまった。えっと……あの?
私が何事かとキョロキョロ辺りを見回すと、お兄様は苦笑しているし、お父様とお母様も少し困ったように眉を下げていらっしゃる。
「それは構わないんですけど」
ざわりっ!また人が一瞬だけざわめいて静かになった。な、なにかしら……。
「けど、けど何かありましたか?!」
必死な顔で聞いてくるミオさん。
「実は私、歌があまり上手ではないからびっくりさせてしまうかもしれないわ」
子供の頃から嫌味ばっかり聞こえて来て歌うことをやめてしまったから、実は下手くそなの……でもそれは口の悪い妖精の声で私に相手をして欲しくて悪態をついていたのが分かったからもう大丈夫なんだけど、練習不足はどうしようもないわよ?
「いいえ!アリシア様の美しい声が聞けるだけでうっとりですよー!あと、やっぱり妖精は見てみたいっていうのはあります、ごめんなさい」
「あら、良いのよ。だって珍しいものね。何でも妖精と波長を合わせられる魔力の持ち主があまりいないから見ることができないらしいわ。難しいものね」
「ふえーー!そうなんですか、しらなかったです」
何か奥の方で「波長だと?!」「なんということだ!すぐ学会に報告だ!」とか言いながら走り去る男性が数人見えたけど、どうしたのかしら?
「妖精をみると幸運が舞い込むって聞いて、見たい人がいっぱいなんですよ!」
「あら、そうなの?じゃあ頑張って歌うわね」
何故か知らないけれどその後拍手喝采されてしまった。幸運が本当に来てくれれば良いなぁ。
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