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31 ストーリー上の秘密ではなくて?

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「ふふ」
「アリー、ご機嫌だね? 」
「ええ!そうなのよ。お兄様」

 なんとゲームの流れに乗り出したのよー!これで滞っていたイベントも発生するかもしれないし、あんな事やこんなことが起こっちゃうかもしれないの!
 ああっ!楽しみすぎて眩暈が……。

「アリー?! 大変だ、救護室に」

 だ、駄目ね興奮しすぎると目の前が暗くなるわ。

「これでは新入生歓迎パーティには参加できないね」
「えっ?!う、嘘……」

 新入生歓迎パーティは、聖女ミオにアリシアが意地悪するのよ。来たばっかりでダンスもできないミオを笑ってドレスにブドウジュースをかけるのよ!
 凄い、凄い悪役ぶりなの。そこでクール眼鏡枠の攻略者と出会うのよ。そ、それを見に行けないなんて……。

「わ、私……パーティに出たいです、お兄様」
「ダニエルが駄目だって言ってる。流石に許可できないよ、アリー」
「そんな……」

 嬉しい気持ちは急降下。ついでに頭に上った血も急降下で、眩暈はすっかり良くなってしまったけどショック過ぎて倒れそうだ。

「も、もう……帰ります。今日は……寮で休みます」
「え?ああ、そうした方が良いだろう。寮まで送るよ」
「いえ、お兄様は学業に励んで下さいませ。カタリナと二人で戻れますわ……」

 とぼとぼと寮に向かって歩き出す。なんて事、イベントは起こるのに見る事が出来ないなんて。神様、私は何か悪いことをしましたか……?

 とぼとぼ歩く私の後ろをカタリナがゆっくりついてくる。ごめんね、これ以上早く歩けないわ。

「アリシア様、噴水のところで少し休憩致しましょう?」
「……そうね」

 噴水、ああ、新入生歓迎パーティでも噴水あったわね。

「う、ううっ」
「アリシア様……」

 新入生歓迎パーティが見られないなんて、私この世界に何のために来たのか分からないじゃない……悲しい……いえ、もう絶望よ。

「アリシア様っ!」
「……ミオさん?」

 聖女ミオさんが走ってくる。一体どうしたのかしら?

「どうかなさったんですか?凄く悲しそうな顔をしています」
「え?ええ、大丈夫よ。今日は気分が優れないから帰ろうと思って……」

 悲しいわ、まるで楽しみにしていた旅行に来たのに旅先で熱を出してどこにも行けない気分よ。

「アリシア様、お可哀想!私……私、頑張りますから!」
「ミオさん……なんだか眩しいわ」

 ミオさんが私の手を握りしめて、宣言している。あれ?私、これ見たことあるわ。

『私、頑張りますから……!』

 王太子の前で聖女としての自覚に目覚める主人公の輝きだったような?あれ?何で今ここで?

「私、アリシア様が健やかに生きられる世界を作ってみせます!」
「え?あ、ありがとう……?」

 そこは確か「この世界の皆が健やかに生きられる世界を守ってみせます」だった気がするけれど、良いのかしら?
 
 気のせいかもしれないけれど何か間違っていないかしら?






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