上 下
16 / 78

16 昔っから嫌いな事は秘密

しおりを挟む
「だからもう私達も堪忍袋の緒が切れた。万が一にでもアリシアがヴィクター殿下のことを好きになって、婚約者になりたいと言って来たらそれはそれで考えただろうけれど」
「アリシアは子供の頃からヴィクター殿下のことを避けてたしね」
「だって、からかってきて嫌いでしたもの」

 今思えば、気になる子にちょっかいを出したのだろうけれど、私は凄く嫌だった。もう典型的なアレだ。
 義務感で体調の良い時を見計らって出かけたお茶会でも酷い物だった。

 
「返してー!それはおかあさまからいただいた大切なリボンなの~!」
「返してほしかったら追いついてみな!」
「うう……うううーー……」

 今よりもっと体が弱かった私は、男の子の殿下たちが走って逃げるのに追いつける訳もなかった。それでも一生懸命足を動かして……転んで動けなくなり、心配して探しに来てくれたお兄様に助けられた……。
 当然その日の夜から高熱は出るし、膝から良くない菌も入って真っ赤に腫れるし、ショックのあまり頭も痛いしで一週間くらい意識が朦朧として2週間以上ベッドに寝たままだった。

「あ……」
「アリシアちゃん!!」

 目を覚ますと泣きはらしたお母様が抱きしめてくれたし、お父様も傍にいてくれた。

「アリシア、リボンは取り返しておいたよ」
「おに……さま、ありがと」

 リボンを手に握らせてくれて、やっと安心したことは絶対忘れない。謝罪しに来たいと何度も手紙は貰ったけれど、全部お父様に処分して貰った。だって絶対顔を合わせたくなかったんだもん。そんな人を好きになる?ない話よね。


「もう国王主催のパーティには一切出向かん。王家との縁組など断固お断りだ!」
「そうですわ!きっぱり切りましょう。今まで王族と思い敬ってきましたが、もう遠慮しませんわ!良いかしらエヴァン」
「当然です。私も家の為になるかと思い、王太子殿下とは懇意にすべきかと思っていましたが、アレでは我が家の害になる……切りましょう」

 わあ……話が大事になってしまった。でも、そう言ってくれるならちょっと心強いわ。それに殿下は聖女と結果的に仲良くなって結婚すればいいんだものね。うん、きっと途中で私が聖女のことを虐めなくてもくっ付いてくれれば問題ないわよね?終わり良ければ総て良し、っていうし。うんうん。

「そうよね、殿下には聖女様と仲良くしてもらいたいし」
「ああ、聖女様ね……そうだね、聖女様のお世話は殿下にお任せしよう、それがいい」

 あれ?なんだかお兄様の言い方に含みがあるような気がするけど、聖女様って何かあるのかしら?可愛くて頑張り屋さんのヒロインじゃないのかしら?

「はぁ……もっと「犬」が頑張ってくれないと……あんな駄犬じゃ使い物にならないじゃないか」
「い、犬?」

 ま、まさかクレス様のことじゃないでしょうね?お兄様……!?え、物凄い素敵な笑顔で追及を避けられてしまった!お、お兄様どこで腹黒属性を装備してきたのですか!?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

らんか
恋愛
 あれ?    何で私が悪役令嬢に転生してるの?  えっ!   しかも、断罪後に思い出したって、私の人生、すでに終わってるじゃん!  国外追放かぁ。  娼館送りや、公開処刑とかじゃなくて良かったけど、これからどうしよう……。  そう思ってた私の前に精霊達が現れて……。  愛し子って、私が!?  普通はヒロインの役目じゃないの!?  

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。 *少しでも気に入ってくださった方、登録やいいね等してくださるととっても嬉しいです♪*

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】婚約破棄で私は自由になる

らんか
恋愛
 いよいよ、明日、私は婚約破棄される。  思えば、生まれてからすぐに前世の記憶があった私は、この日が来るのを待ち続けていた。  早く婚約破棄されて……私は自由になりたい!

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...