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第1章 メリッサの決意

8.オリジナリティ

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「オリジナリティねえ……」

 翌日、早速部屋を訪れた私から話を聞いたイレーヌさんは、しきりに
なにか考え込んでしまわれました。
 呆れられているのかもしれません。

 せっかくイレーヌさんから貸していただいた貴重な参考文献のおかげで
順調に「おもしれー女」力を向上させていたというのに、最後の最後で
余計なオリジナリティを加えてしまったせいで台無しになってしまったの
ですもの。仕方がありません。

「その……ずっと書き溜めていたネタ帳がありましてですね……」

「せっかくだから、温めていたネタを披露したかったと――そういう訳
かしら?」

「ええ、まあ……で、でも『おもしれー女』なら当然お笑いも たしなんで
いるはず――みたいな?」

「……」

「うう……ごめんなさい! ちょっとだけネタを披露したかった気持ちが
ありました……!」

 悪いのは私ですもの。
 クラリオン様の反応に、手ごたえを感じて調子に乗ってしまったのですから。
 ここは いさぎよく自供します。

「……ふふ、まあいいわ。で、次の茶会の約束は取り付けたのでしょう?」

「はい……。クラリオン様は律儀なお方ですから」

「それなら、次までに新しいネタを用意しないといけないわね!」

「え――? 昨夜は散々たる反応だったのに、また挑戦するのですか?」

「もちろんよ。リベンジしないと! おもしれー女は、相手の反応ごときで、
簡単に自分を変えたりはしないのよ。だからこそ俺様系は興味を惹かれるの
だから」

「なるほど……」

 少し強引ではありますが、一理あります。

 私が感心していると、おもむろにイレーヌさんがゴホンと せきばらいを
しました。

「さて、そんな新ネタ探し中のメリッサさんに、朗報です!」

「?」

「たくさんの参考文献が集まる一大イベントが今週末にイーリス島で行われ
ます! しかも恋愛マスターの私、イレーヌの特別解説付きよ!」

「……それって」 

「努力は決して裏切らない。それは恋愛にも言えるのよ――たぶん。
知らんけど」

「ちょ、最後……」

「いいから私と一緒にイーリス島に行くわよ! イベントで売り子が
足りないのよ!」

「そっちが本音ですわね!」

 こうして私はイーリス島で行われるイベントの売り子をしに……ではなく、
新ネタ探しと『おもしれー女』の参考文献の収集に向かうことになってしまい
ました。
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