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第29話
しおりを挟む「・・・ここ、置いとくぜ」
あの後、二海は重さを感じさせずに何食わぬ顔で荷物を運び、所定の場所にドサッと音を立てながら下ろした。
「うん。・・・あの・・・」
それを少し後ろの方で見ながらお礼を言おうとするけど、言葉につまる。
いつもはクソみたいな性格で腹立つだけなのに、優しいところもあるんだなって思った瞬間、なんかちょっと気恥ずかしくなってきた。
「おいおい二海ぃ~、なんで辻本の持ってやってんだよ~」
「それなー。マドンナちゃんのなら分かるけど、辻本の運ぶとか」
そんな中、私の荷物を運んでくれている所を見たクラスメイトの男子が二海に絡らんでくる。
うわ・・・めんどくさいタイプ・・・。
二海のやつ、どうすんの・・・?
不安に思いながら、恐る恐る二海の方を見る。
だけど、二海はケロッとしたような表情のまま親指で私の方を指さしてこう続けた。
「なんでって・・・コイツ、野蛮人だから機械壊すかもしんねーだろ?」
「あー、確かに!辻本のやつ力強いもんな!前に背中叩かれた時骨イカれるかと思ったわ!」
「それなら納得」
・・・は?
野蛮人・・・?
壊す・・・?
「・・・アンタらぁ・・・!!」
その言葉にフツフツと湧き上がってくる怒りが、音を立てて爆発する。
「うわ、野蛮人がお怒りだ!」
「退散退散」
文句のひとつでも言おうと思った時、そう言ってすごい速さで逃げていくクラスメイト。
だけど、二海だけはその場に留まり続けていた。
ちょっと見直してたのに・・・やっぱり二海は二海だったわ。
「ハァ・・・」
怒りを沈めようと一息つく。
たとえ野蛮人って言われても、運んでくれた事実は変わらない。
お礼は言わないと・・・。
「・・・二海。荷物、ありがとね」
こいつに野蛮人って言われなきゃ、もっと良かったんだけどな。
そんなふうに思いながら、困り気味に笑みを浮かべ、二海にお礼を言う。
「っ──・・・。あぁ、別に構わねぇよ。たとえ野蛮人でも重いもんは重いだろうからな。また誰かにタックルでもしたらそいつ、ひとたまりもねぇし」
私のことを見て一瞬、目を見開いて動きを止める二海は、フイっと顔を背けた。
そして、またもや電車内のことを彷彿とさせるような言葉を口にする。
「えぇ、そうですね!どんな理由でも助かりましたよ!性格がひん曲がってるクセにずいぶんと紳士的だと思いました!」
「ひん曲がってませーん、自分に素直なだけですぅ~!」
嫌味たっぷりに言うと、その言葉を否定しながら私の頬を挟み込むように掴まれる。
そのせいで、頬の肉が口元に集められ、口がとがってしまう。
「なにふんのよ!てぇはなひて!」
「アハハ、何言ってるのかわかりませーん」
“なにすんのよ!手ぇ離して!”
そういったはずなのに、二海には伝わらず・・・先生が現れるまでプニプニと頬をつまみ続けられた。
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