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第7話

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「山崎の声、聞こえた人~」



キッ・・・と胸ぐらを掴んでいる男を睨みつけていると、二海が唐突に口を開いた。



「聞こえた」



「よゆーで聞こえた~」



二海の問いにほぼ全員の同意の声が耳に入る。



「・・・みーんな、聞こえたってさ。お前だけだよ、聞こえてねーのは。・・・分かったらさっさとそいつの胸ぐらを掴んでるきったねぇ手を離せやクソ豚」



誰かが席を立つ音が聞こえたと思った瞬間、胸ぐらを掴んでいる男がうめき声を上げる。


かと思えば、私の胸ぐらから手を離して大事なところを押さえるように座り込んだ。



もしかしなくても二海のやつ・・・蹴り、入れたな。



「っ・・・!ちっ・・・!クソっ・・・!いつかその顔面ぶん殴ってやる・・・!」



蹴られたいじめっ子は、前かがみになりながら見苦しい捨て台詞を吐き、教室から出ていった──。



「・・・ったく・・・・・・あのいじめっ子野郎相手にフツーに喧嘩売ってんじゃねーよ、猪突猛進女。おかげで蹴りたくねぇもん蹴るはめになったじゃねーかっ!」



胸ぐらを掴んでた男が出て行ったあとの扉を見つめていると、ゴンっと頭を殴られて唐突に痛みが走る。



「いった・・・!何も殴ることないじゃん!!」



しゃがみこんで頭を抑えながらキッ・・・!っと二海のことを睨みつける。



「っ・・・!?・・・・・・助けてやったんだから文句言うんじゃねぇ!」



二海は私の方を見るなり目を見開き、勢いよく私に背を向けた。



そして、自分の席に座って頬杖をつきながら窓側の方を眺め出す。



「・・・あ、あとな。・・・・・・シャツ、ボタン外れて・・・胸元が──」



キーンコーンカーンコーン──・・・。



二海の言葉を遮るように、ホームルーム終了のチャイムが鳴り響く。



「え・・・?なんて言った?」



「だっ、だからっ・・・!お、お前のっ・・・!お前の・・・むっ・・・むな・・・!」



聞き返すと、なぜか言葉を濁し始める二海。



そんなに言い難いこと?



「っ──・・・!!なんでもねぇよ、デブ!」



「はぁ!?」



ガタッと立ち上がり私を罵倒ながら教室からいそいそと出ていく。



彼が立ち去ったあと手を握りしめる。



「ほんっっとに、性格悪すぎでしょ・・・!!」



助けてくれた時は良い奴なのかなとか思ったけど・・・!



頭殴るし暴言吐くし・・・!!!



ホント、性格悪すぎる!

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