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幕間3.叶わぬ想いなら出会わなければよかった
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しおりを挟む「ユイ、ごちそうさま」
「お腹空いてたのね。元気になってよかったわ」
ユイはそう言って頭や喉の辺りを優しく撫でる。タクミとは違う、細くしなやかな指に物足りなさを感じる。
「そうだ、これ。どうやってつけてたのかしら。ちゃんとお家に帰ったら飼い主さんに直してもらって」
ユイは首元に手を回して、首輪をつけてくれた。真っ黒なベルトに、タクミに貰った髪飾りを括り付けてくれたようだ。
「ありがとう。これは宝物なんだ。もう平気だから、帰らせてもらう」
「待てよ。ユイは今日泊まっていけって言ってるだろ。まだ外は雨だ。帰るなら、明日の朝にすればいい」
「でも……ここにいたら迷惑をかける」
「もうすでにかけてるんだから、変わらない。それにお前が今からまた出ていったらユイが心配する。だから、行かせるわけにはいかない」
どうやら今日のうちにここを出ていくのは難しそうだ。存在が消える、というのは死ぬのとは違うのだろうか。ここでもし死ぬことになるなら、ユイの手を煩わせることになる。だけど、跡形もなく消えるなら問題ないか。
「なあ、お前の名前はなんていうんだ?」
「鈴音だ」
「お前の飼い主がつけてくれた名前か。いい名前だ。お前に似合ってるな。今頃飼い主も心配しているだろう」
「どうだろう。鈴音は邪魔みたいだから」
大福は何も言わず隣に座ると、ふさふさとした尻尾でぺしぺしと背中を叩いてくる。彼なりに慰めてくれているのだろう。大福は眠りにつくまで寄り添ってくれた。
「おい、鈴音。いい加減起きろ」
大福の声で目を覚ます。眩しい。来ないと思っていた朝が来ていた。伸びをして、ゆっくりと立ち上がる。猫の姿に戻ってしまったことも、存在が消えてしまわなかったことも、聞いていた話と違う。
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