ある王国の王室の物語

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
19 / 21

執事が逃げた

しおりを挟む
侯爵家からわたしに連絡がきた。


ただ、身内で保護者と言うことでお祖父様が先に書簡を読んだ。そしてわたしに内容を教えてくれた。


侯爵家の執事のチートンが大金を持って逃げたらしい。だからなに?と思ったが、好奇心に負けて王宮で侯爵と会うことにした。

この執事を雇う際、わたしは反対したのだ。紹介状も怪しいし家のなかを値踏みするように見ていたのだ。

だが、侯爵に意見するわたしが生意気だということでシャーロットが王太子に言いつけたのだ。

すると王太子が、王宮の庭でわたしを呼び止め、執事のことで意見を言ったことを咎めたのだ。

あの頃のわたしは可哀想に涙を堪えて侘びをいれて、被害を最小にできるよう努力したのだ。

バカバカしい。つきそいはバージルとお祖父様。



二人には今回の経緯をきちんと話して執事の件で王太子がわたしを非難したことを、公の場で避難して目撃者がたくさんいることも話している。


そして自分で対処すると念を押している。あの王太子のこと、わたし恨んでいるのよね。すごく・・・ほえづら書きやがれ!!ってんだ。



そんなわけでわたしは馬車からバージルに手をかしてもらって優雅に降りた。



宰相を始めたとした王宮の文官さんを交えた侍従の皆さんがずらっと並んで出迎える中、侯爵が待っている部屋に向かった。



部屋には王太子とシャーロットが待っていた。



「おや、この部屋でいいの?」と案内の侍従に独り言のように問いかけると



「王太子殿下、シャーロット様お邪魔してしまい申し訳ございません。すぐにお暇します」とカテシーをした。


バージルは無言で頭を下げた。お祖父様はふたりを無視していた。


「いや、エリザベート、ここでいい」と王太子が答えると



「エリザベートを名前で呼ぶのは礼を逸しておりますよ、王太子殿下」とバージルが言い

「小倅はほんとに礼儀を欠いておるな」とお祖父様が呟く、絶妙に相手に聞こえる音量で悪気なくびっくりしたって感じが無邪気な感じだ。お祖父様の演技力に乾杯だね。



「失礼した、リンバロスト子爵」



「お姉さま、わかってらしたんでしょ」


「シャーロット様、前にも申し上げましたががわたしは姉ではありません」


「シャーロット、リンバロスト子爵にお詫びと挨拶を」


と王太子が言うとシャーロットはショックを受けて無言になった。


この二人、打ち合わせをしていないのでしょうか?



「挨拶など不要です。侯爵に会いにきたのですが、いらっしゃらないようですので失礼します」というとバージルもお祖父様もうなづいた。



「待ってくれ、侯爵ではなく、わたしとシャーロットと話をして欲しい」



「話とはなんの話しですか?」



「執事の件だ」



「執事とは?」



「侯爵家の執事だ」



「王太子殿下が太鼓判を押した執事のことですか?」



「そうだ、もったいぶらずに話をしたい、その執事が大金を持って姿を消した」



「消したのなら探せばいいのでは?」



「探している・・・・見つからない」


「そうですか」

「どうしてあいつが怪しいとわかった?」

「なんとなく」


「なんとなくか・・・まぁどうでもいい、早い話があの執事が金を持ち逃げして侯爵家は困ったことになった。そこで最初の妻の娘のおまえが金の面倒を見てやって欲しい。シャーロットはおまえの妹ではないか?おまえも俺を妹に取られてくやしいだろうが、そこは・・・・家族の・・・・」

「王太子様は婚約者の情がありますか?」

「もちろん、ある」

「では婚約者の情でお金の面倒を見ればよいのでは?あの執事は王太子殿下が保証した執事ですし・・・・」

「そう、簡単なことでないのだ」

「お金の問題ですよ。簡単だと思いますが。」

「執事に関しては王太子殿下が保証した方です」

「お金は王太子殿下が補えばいいのでは?」



「王太子、王家はどうも教育を間違ったようだな。好きにやらせ過ぎたようだ」とお祖父様が王太子に言った。


「なに?その態度は」と王太子が大声を上げたが、お祖父様は涼しい顔をしていた。


とドアが開けられ、国王夫妻が入って来た。


「マクバーディ公爵閣下、息子が無礼を」と国王が頭を下げた。隣で王妃も頭を下げている。


「父上、どうして公爵に頭を・・・・王命で侯爵家を助けるよう言って下さい」


「助けてやりたい・・・・お金はなんとかなるが・・・・おまえは国王になれない」


「なぜですか?」


「おまえもわたしたちも気付かなかった。愚かだった。いや、最初から・・・・」


「公爵閣下、わたしから若い者に説明していいか?」


「どうぞ、年寄りには荷が重い」とお祖父様が国王に答えた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

処理中です...