ある王国の王室の物語

朝山みどり

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ひと夏の恋

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その夏は特別な夏だった。

ライオネル・マクバーディは友人の屋敷で下働きのマギーを見かけた。軽い気持ちで声をかけた。田舎からでてきたばかりの若い娘を落とすのは簡単だった。
彼女をもらいうけ屋敷につれかえり別宅に住まわせたのは彼女が夏の休暇みたいだったからだ。暑さも倦怠感も涼しさも、彼女はみんな持っていた。
マギーの体はお陽さまの匂いがした。

ただ、休暇は終わりアーサーは日常に戻った。マギーは過去になったが、マギーは妊娠して女の子を生んだ。赤ん坊は彼と同じ目をしていた。彼は赤ん坊をキャサリンと名付けた。


マギーは産後回復することなく亡くなった。アーサーは自分の子供のなかでキャサリンだけが自分の目を引き継いだことを運命チャンスと考えた。

とりあえず、アーサーは悲劇の男の演技を始めた。思いがけなく愛した身分違いの若い女、権力に物を言わせて我がものにして大切にしていた女。その忘れ形見を大切に育てる父親ってところで・・・・

まわりはあの年で、純愛だっと評した。



キャサリンは美しく優秀だった。縁談は降るほどあった。そしてアーサーはある男を選んで嫁がせた。


アーサーがキャサリンの嫁ぎ先として選んだのはバンドリン侯爵だった。
期待の長男が落馬で死んでしまい、次男は隣国の末の王女に望まれ婿入りした。なんでも国王が手放せないほど可愛がった王女で、結婚後も王宮の一角に住まわしているそうだ。

そんなわけで適当に育てられた三男が侯爵となり、そこを支える為に嫁がせた。



キャサリンがエリザベートを生んだ時、四公爵は祝杯をあげた。
エリザベートはすぐに王太子妃に内定した。

あくまで内定であったが他の候補は存在せず、王太子妃教育は彼女だけがうけた。

その翌年キャサリンが亡くなると侯爵はすぐに子連れの女性と結婚した。


そのころから四公爵の付き合いが濃くなった。若い頃のように頻繁に会うようになった。公爵と言っても政治に口を出すことはない。この国は王室の力がとても強いのだ。

それは今の国王の結婚に表れている。国王は幼い頃からの婚約を破棄して学生の時に知り合い愛し合うようになった今の王妃と結婚したのだ。

王妃は家庭を守り、お茶会を開いて国内の貴族の夫人たちをまとめることに専念している。




マクバーディ公爵はエリザベートの服装を整えるために久しぶりにドレスメーカーを家に呼んだ。今回の助手は新顔だった。

「こんなお嬢様どこから?」とキャラウェイ夫人が言うと
「見つけたんだ」と悪戯っぽく答えた。

公爵はわざとエリザベートの素性を口にしなかった。

実際エリザベートを知る人は少ない、母親のお茶会について行ったこともなく、学校にも行っていない。侯爵夫妻の子供はシャーロットひとりだと世間は思っている程だ。

マクバーディ公爵が、あたらしい楽しみを見つけたといううわさはこの時から、もっと言うとこの時の助手から広まった。

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