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11 夜会に、お茶会に

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王家主催の夜会。アレクサンダーとアーデリアは勇者として招待された。

王家が主催するそれには、貴族に今の勇者の姿。自分の一部を捧げた姿を見せる意味合いがあるらしい。


社交に不慣れなというより、今回が初めての出席のアーデリアは不安だった。

だが、勇者とその奥方が全員、一緒だったので、どうにか切り抜けた。

この夜会でアーデリアはアレクとダンスをした。緊張しているアーデリアを、半分かかえてアレクは踊り抜けた。

「ありがとう、なんだか緊張したせいかしら、床に足が着いてないみたいだった」とアーデリアが息も絶え絶えにささやくと、

「うん、それは正しい感想だね。他の人もそう思ったと思うよ」とアレクが、笑いながら答えた。


帰りの馬車の中で、アーデリアは

「わたくし、着飾って夜会に行く母とリリベルが、うらやましかったの。だけど、やってみると大変ね」

半分眠りながら、アレクにそう言った。



同じく、馬車の中でリリベルが母親にこう言っていた。

「お姉様、ドレスも宝石も独り占めして、ずるいですわね。醜い顔の男と、結婚できる人だから・・・・あの勇者のお披露目が続くからドレスも宝石もたくさんいるのに・・・・」


「リリベル、お姉様って言うのは、妹を妬む者なのよ・・・わたしはそれを知ってるから、そうならないようにアーデリアに厳しくしたけど・・・・無駄だったみたい・・・・でもリリベルは可愛いもの。見返せばいいのよ」


こう言いながら、会場で、大勢に取り囲まれていた姿を、思い出していた。

アレクは美しい意匠の仮面に宝石を飾り、アーデリアは同じ意匠で片目を覆う仮面をつけていた。

広い会場でそこは目立って明るかった。それを見て、侯爵夫人は敗北感を味わったのだが、同時に闘志も燃やした。お姉様なんかには負けないと。

レイモンドは二人の会話を聞きながら、自分も義父のように逃げる準備をしておくかなと考えた。






次のお披露目のお茶会は、着席した形だった。勇者がそれぞれ四人掛けのテーブルに座った所に、客が挨拶に来て、少し話をして、去って行くと言う形だった。

アレクサンダーの父親のニック侯爵が、

「アレクサンダー、元気なようで」と声をかけてきた。横に夫人も立っている。

アーデリアは立ち上がると、黙って頭を下げた。それから椅子をどうぞと指し示した。


侍従がお茶と、小さな焼き菓子をニック侯爵夫妻の前に置いた。


「元気そうで、なにより・・・・お父上はいらしているだろうか?」とニック侯爵はアーデリアに話しかけた。

「どうでしょうか?見かけておりませんが・・・・」とアーデリアは気をつけて答えた。始めて言葉を交わす相手だ。細心の注意を払った。

「兄君は・・・・」と侯爵が言うと

「わたくしに兄はおりませんが」とアーデリアが答えると、侯爵は自分の妻に助けを求めて、目線を送った。

侯爵夫人は

「姉君でしたよね」と言って、アーデリアを困惑させた。

「侯爵も、侯爵夫人もわたしの婚約者の顔など覚えておらぬと言う事ですね。結婚式で名前を聞き、姿を見たはずですが」とアレクサンダーが冷たい声で言うと

二人は、はっとなった。

「彼女はデステ侯爵令嬢です。メアリー・リードではありません」

「は?」「え?」二人が、驚くと、

「誤解されたままでは、困る事があるかも知れないので、言っておきます。前に紹介した婚約者はメアリー・リード。彼女には確かに兄君がいます。彼女とはその後、縁が切れました」

「あの、ご存知なかったのですか?」とアーデリアが小さな声で言った。

「リード嬢との婚約解消は話していない。会ってないのに話せない」とアレクが言うと

「相談くらいは・・・・」と侯爵が言うと、夫人もうなづいた。

「必要と思わなかったもので、化物と結婚したくないと泣いていますと、言いつければ良かったですか?一度くらいは、助けてくれましたか?」とアレクが短く答えた。

「そうだな・・・・それでは行こうか。長居をしたようだ」と侯爵は席を立つと、アーデリアに軽く頭を下げた。

夫人もそれに習ったが、目に涙が浮かんでいた。


アーデリアは気遣うようにアレクを見たが、アレクは次の客の挨拶に答えていた。




帰りの馬車でアーデリアは、疲れた頭で考えた。『アレクのご両親は挨拶に来た。うちは来なかったわね』

なにか話しかけたいと、思ったが、アーデリアは睡魔に勝てなかった。





帰りの馬車でリリベルは怒っていた。

「ひどいわ。お姉様。また新しいドレスを先に着てた。レイモンも来ればお姉様のひどさがわかったでしょうに、忙しいとか言って欠席するし、お父様は引退するからとしか言わないし・・・・・お母様、お姉様に注意して」

「リリベル・・・・辛かったわね」とだけ返って来た。



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