6 / 30
06 第一印象は良好
しおりを挟む
城につくと、アーデリアは一人別室へ案内された。
「時間までこちらでおくつろぎ下さい」
待機していた侍女がお茶を入れてくれた。香りと湯気にほっとした。
そこに控えめなノックがあった。
「ニック侯爵ご令息がいらしてますが・・・・」
「お通しして下さい」
顔全体を仮面で覆った男性が、静かに入って来た。青みがかった黒髪がきれいだなと思った。
「二人で話したいがかまわないか?」
アーデリアがうなづくと侍女二人は出て行った。
「アレクサンダー・ニックだ。いろいろ聞いていると思うが、直接話したいと思って・・・・婚約も断ってくれてかまわない。それから、堅苦しいのは面倒だ。アレクと呼んでくれ」
「アーデリア・デステ。いえ、アーデリア・ヴェールです。侯爵です。わたくしもお話したいと思っておりました」
「では、あなたから・・・・・」
「お言葉に甘えまして、お先に」
「先ず、この婚約は歓迎です。利用させていただいてヴェール侯爵となりました。この話が来たとき、リリベルは喜びました。魔王を封印した勇者の出発をみて皆さんが素敵でしたので。
ですが相手がアレク様と聞いた途端に泣きだして嫌がりまして、そうなったら・・・・・わたくしと、交代と言い出すなと思いました。王子殿下もわたくしよりリリベルと親しくしてらっしゃいましたし・・・両親もリリベルを優先しますので、問題はなにも・・・・」
アレクは黙って、うなづいた。
「わたくしはうれしいと思いました。公爵夫人になるのは悪くありません。領地ではなく年金・・・それもかなりの額ですね・・・領地がないってことは執務はありません。好きな事をする時間が出来ます。なによりわたくしは家族が嫌いです!離れたい。」
「いや、驚きだ・・・順番で確認させてくれ。その執務をしていた・・・いや、わたしを見てこわくないのか?」
アーデリアは笑って答えた。
「仮面はこわくないです。醜いそうですね。その目は見えてますか?」
「見える、問題ない」
「匂いは?」
「問題ない」
「声もでますね、声は前と同じ声ですか?」
「自分ではわからないが多分同じだ」と答える声に笑いが混じる。
「仮面をはずすと醜いと言うか、見にくいだな」とアレクが言うと
「見にくい?見にくいって・・・・それ位平気です。怖い顔は怖いと感じるでしょうが・・・慣れるでしょうし・・・最初は驚くかもですが・・・それよりお金や条件目当てのわたくしに失望しませんか?」
「いや、失望はしないな・・・どういえばいいのだ?その、思ったのと違う話し合いになったと、驚いている」
とアレクは、一度口をつぐんだ。それからこう続けた。
「悲壮な顔の令嬢が待っていると、泣く泣く家の犠牲となって婚約するとか、わたしこそが救ってあげますとか、そんなのだと思っていた」
それを聞いたアーデリアは笑って、
「大きな犠牲を払って魔王を封印したのに、婚約者から嫌われて、拗ねて、いじけて暗い人になってたら面倒だなって思ってました」と言った。
「あなたでよかった。これからよろしく。アーデリア」
「あなたでよかった。ドレスをありがとうございます。初めてドレスを貰いました」
「初めて?婚約者がいたのでは?・・・・すまない失礼なことを」とアレクは軽く頭を下げた。
「いえ、婚約者はリリベルが好きでしたので」とアーデリアはさらりと言った。
その時ドアがノックされた。
「時間のようだ。アーデリア行こう」と手を差し出された手を、アーデリアは取った。
二人はいそいそと歩き出した。
「時間までこちらでおくつろぎ下さい」
待機していた侍女がお茶を入れてくれた。香りと湯気にほっとした。
そこに控えめなノックがあった。
「ニック侯爵ご令息がいらしてますが・・・・」
「お通しして下さい」
顔全体を仮面で覆った男性が、静かに入って来た。青みがかった黒髪がきれいだなと思った。
「二人で話したいがかまわないか?」
アーデリアがうなづくと侍女二人は出て行った。
「アレクサンダー・ニックだ。いろいろ聞いていると思うが、直接話したいと思って・・・・婚約も断ってくれてかまわない。それから、堅苦しいのは面倒だ。アレクと呼んでくれ」
「アーデリア・デステ。いえ、アーデリア・ヴェールです。侯爵です。わたくしもお話したいと思っておりました」
「では、あなたから・・・・・」
「お言葉に甘えまして、お先に」
「先ず、この婚約は歓迎です。利用させていただいてヴェール侯爵となりました。この話が来たとき、リリベルは喜びました。魔王を封印した勇者の出発をみて皆さんが素敵でしたので。
ですが相手がアレク様と聞いた途端に泣きだして嫌がりまして、そうなったら・・・・・わたくしと、交代と言い出すなと思いました。王子殿下もわたくしよりリリベルと親しくしてらっしゃいましたし・・・両親もリリベルを優先しますので、問題はなにも・・・・」
アレクは黙って、うなづいた。
「わたくしはうれしいと思いました。公爵夫人になるのは悪くありません。領地ではなく年金・・・それもかなりの額ですね・・・領地がないってことは執務はありません。好きな事をする時間が出来ます。なによりわたくしは家族が嫌いです!離れたい。」
「いや、驚きだ・・・順番で確認させてくれ。その執務をしていた・・・いや、わたしを見てこわくないのか?」
アーデリアは笑って答えた。
「仮面はこわくないです。醜いそうですね。その目は見えてますか?」
「見える、問題ない」
「匂いは?」
「問題ない」
「声もでますね、声は前と同じ声ですか?」
「自分ではわからないが多分同じだ」と答える声に笑いが混じる。
「仮面をはずすと醜いと言うか、見にくいだな」とアレクが言うと
「見にくい?見にくいって・・・・それ位平気です。怖い顔は怖いと感じるでしょうが・・・慣れるでしょうし・・・最初は驚くかもですが・・・それよりお金や条件目当てのわたくしに失望しませんか?」
「いや、失望はしないな・・・どういえばいいのだ?その、思ったのと違う話し合いになったと、驚いている」
とアレクは、一度口をつぐんだ。それからこう続けた。
「悲壮な顔の令嬢が待っていると、泣く泣く家の犠牲となって婚約するとか、わたしこそが救ってあげますとか、そんなのだと思っていた」
それを聞いたアーデリアは笑って、
「大きな犠牲を払って魔王を封印したのに、婚約者から嫌われて、拗ねて、いじけて暗い人になってたら面倒だなって思ってました」と言った。
「あなたでよかった。これからよろしく。アーデリア」
「あなたでよかった。ドレスをありがとうございます。初めてドレスを貰いました」
「初めて?婚約者がいたのでは?・・・・すまない失礼なことを」とアレクは軽く頭を下げた。
「いえ、婚約者はリリベルが好きでしたので」とアーデリアはさらりと言った。
その時ドアがノックされた。
「時間のようだ。アーデリア行こう」と手を差し出された手を、アーデリアは取った。
二人はいそいそと歩き出した。
205
お気に入りに追加
5,222
あなたにおすすめの小説
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
婚約者の幼馴染に階段から突き落とされたら夢から覚めました。今度は私が落とす番です
桃瀬さら
恋愛
マリベルは婚約者の幼馴染に階段から突き落とされた。
マリベルのことを守ると言った婚約者はもういない。
今は幼馴染を守るのに忙しいらしい。
突き落とされた衝撃で意識を失って目が覚めたマリベルは、婚約者を突き落とすことにした。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
本作の感想欄を開けました。
お返事等は書ける時間が取れそうにありませんが、感想頂けたら嬉しいです。
賞を頂いた記念に、何かお礼の小話でもアップできたらいいなと思っています。
リクエストありましたらそちらも書いて頂けたら、先着三名様まで受け付けますのでご希望ありましたら是非書いて頂けたら嬉しいです。
妹しか守りたくないと言う婚約者ですが…そんなに私が嫌いなら、もう婚約破棄しましょう。
coco
恋愛
妹しか守らないと宣言した婚約者。
理由は、私が妹を虐める悪女だからだそうだ。
そんなに私が嫌いなら…もう、婚約破棄しましょう─。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる