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御一行からの頼み

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翌朝、学校用のカバンに寝巻きと下着と文房具を入れると、この家を出る準備は終わった。

制服を着てカバンを持つと、パールと伯爵とわたしの三人で馬車に乗った。


学院でパールを降ろすと伯爵とわたしは王宮内の役所に行った。

少し早く到着したが、開けてくれたので手続きを始めた。

「縁を切る・・・・・・勘当ですか?」と係員が確認して来たので、

「はい」とわたしが答えた。

「理由をうかがっても?」と遠慮がちに聞いて来たので

「必要ですか?」と返した。

「いえ・・・・・・」と小さく返って来た。



「こちらにそれぞれが署名をして、持って来て下さい」と二枚渡された書類を、署名用のテーブルに行ってじっくり読んで確認すると二枚に署名をした。

「伯爵閣下、こちらに署名をお願いします」と渡すと

「うーーー」と返事があった。伯爵はろくに目も通さずに署名した。

わたしはそれをもう一度窓口に持って行った。

しばらく待つと、係員が書類を持ってやって来た。

「こちらで終了しました」と書類を二枚テーブルに置いた。

わたしは一枚取るとさっと確認して、立ち上がった。

「伯爵閣下。それでは失礼いたします」と声をかけたが、返事もなかったし彼は目もあげなかった。



わたしは歩いて学院に向かった。鳥が律儀に朝の様子を教えに来てくれた。

今日は図書室に行かずに、院長室に行った。なぜか御一行様がいたので、話がすむのを外で待っていたら、

「なに、やってるんだ。早く入れ」とローリーがドアから顔をのぞかせて言ったので、わたしも中に入った。

平民はどんな挨拶をするのだろう・・・・


無言で頭を下げて、声がかかるのを待ったが・・・・・適当な所で頭を上げた。


それから院長に話しかけた。

「掛金をいただきに来ました」院長は無言で引き出しから、革の袋を出すと机の前に置いた。

わたしはそれをカバンに入れると、

「はい・・・・それでは失礼します。退学致しますので手続きをします」と軽く頭を下げるとドアに向かった。



「アリス嬢、待ってくれ。頼みがある」とハリーの声がした。

「近いうちに隣国の王族が留学して来る。夜会があるのだがアレクと一緒にいてもらえないか?」

「殿下とですか?」声に迷惑だって思いが乗ったが気にしない。

「そうだ。もちろん今回だけだって言い方は失礼だが・・・・・上位の貴族を誘うのは・・・面倒の元だ。その点君は伯爵家だし・・・」

「平民になりました」

「それはしばらく延期だ。秘密にする。王家の権力で・・・・」とローリーが言った。

なるほど、平民の小娘だ。どこの権力にも取り入れられていないし、夜会が終われば平民になって国を出る。お誂え向きだ。

「もちろん、これからの生活があるだろうから、報酬ははずむ」とローリーが笑うので

「ありがとうございます。それにつきましてお願いがあるのですが・・・・」

「なんだ?」

「ひとつだけ、願い事があります。報酬もそちらに回して頂いて・・・・・王室のお力を・・・・」

「いいぞ」とアレク殿下が即答した。

「殿下、そのよろしいのですか?」とわたしのほうがあわててしまった。

「もちろんだ。どんな事を願うのかかえって、楽しみだ」

「そうですね、アレク」とハリーが言うと、彼らは声を揃えて笑った。


「それでは、一番家が広いアレクの家に泊まってくれ」とローリーが言うと、

「すぐに行こうか。退学の手続きは、やって置く」とローリーはアリスに手を差し出した。


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