今世は好きにできるんだ

その日の夕方

歩いて家に戻りながら、アリスは宙に浮いてる方が楽ねと思いながら、律儀に足を動かしていると、あの魔石屋に、あの街角の子供が、二三人、入るのを見た。

気になったので、出てくるのを待った。

「こんにちは、あのあ店から出てきたけど」と話しかけると

「あぁ、貧乏なのにご馳走してくれた姉ちゃん」と返事が返って来た。

「そう、覚えていてくれたの」と答えると

「ゴミ捨て場に捨ててある魔道具に魔石が入っている事があるんだ。それを集めて売っているんだ」

「なるほど・・・・・」

「小さい子が増えてきたんで、いろいろとな」と聞いて

ポケットを探って、残っていた小銭を渡した。

「姉ちゃん、騙されてるかも知れないよ。相変わらず田舎者だね」とにっこり笑うと、子供たちは去って行った。


「お腹がすくのは辛いって知ってるのよ。多分それで死んだのよ」とわたしが思っている事などあの子たちは想像も出来ないでしょうね。


わたしは、どうすればこの問題を解決できるか、考えながら家に戻った。



「あら、この人だけ戻って来たわ。皆様は競技会の祝いの件でまだ戻って来ないんですよ」とジューンがこう言った。

そばでラズがうなづいている。喉が痛いようだ。



面倒だから、無視して部屋に戻った。

アリスの記憶になかったので、調べたら、伯爵は次男でほとんど伯爵としての教育を受けていず、義母も男爵家の三女で伯爵家の家政について、教育されずに結婚したようだ。

アリスがどう思うかはわからない。だけどわたしはつぶしてやりたい。

こんな家に雇われた使用人も、どうでもいい。



しばらくしたら、三人が戻ったようだ。早いほうがいい。わたしは伯爵に会いに行った。

三人は居間に揃っていた。

「伯爵お話があります。わたしくの籍を抜くことですが、早いほうがお互いにいいと思いますので、明日にでも手続きをしましょう」

「あんたなんか・・・・大嫌いよ」とパールが怒鳴ったので

「知ってるわよ」と答えた。

「あんたなんか・・・・・あんたなんか・・・・」と言いながら泣き出した。面倒なので無視して

「それでは、伯爵、明日一緒に役所に行きましょう。それが一番早く手続きできます」と言うと

「おまえは・・・・おまえは・・・そんなにこの家がいやか・・・」

「当たり前ですね。最近でこそ、食事を持って来てくれるようになりましたが、ほとんど食事も食べられず。擦り切れた制服と寝巻きだけしか着るものもなく・・・・・最近侍女のお仕着せを貰いましたが、靴もぱっくり口を開けていて・・・・これは頂いたものです。・・・・・そんな待遇を平気でやる親を好きになると思いますか？」


「そんな事は・・・・」と伯爵が言葉に詰まると

「知らなかったですか？」と足りない言葉を補ってあげた。

「伯爵夫妻が知ってるとか、知らないとか関係ないですね」と続けると

「嫌いなわたしが正式にいなくなる事を喜べばいいんですよ」と笑いかけると

「では、明日よろしく」と話を終わらせた。