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第二章 奪ってやる

10 幸せ・・・その名はミリアム カイル目線

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リアを誘って、海辺の町へ行った。目的地に近づくに連れ光が鮮やかになっていって、リアも元気になって来た。

ホテルの部屋からは海が見え時間によって海の色が変わった。明け方の海辺を散歩すれば、いろいろな木が波打ち際にたくさんあった。

これは冬場、暖炉で燃やせるらしい。海を連れて帰れるってことか。リアが喜びそうだから、帰るとき持って帰ろう。

海辺の空気と適度な運動でリアは食欲を取り戻し、血色がよくなってきた。


そんなある日、嵐がやって来た。窓からみえる海は全然別のものになった。荒々しく、気まぐれで魅力的だった。

リアもそう思ったようで

「こういう安全な所で、怖いものを見るって楽しい。見ながら食べるレモンパイも美味しい」といいながらお茶のお代わりをしていた。


嵐は夜になると勢いを増した。稲光りが夜の海に突き刺さり、雷鳴はおもわず耳を塞ぐほどになった。

一際大きく雷鳴が轟いた時、俺はリアのベッドに駆けつけた。

リアは毛布に潜り込み耳を塞ぎ丸まっていた。

俺はベッドに滑り込むと

「大丈夫、大丈夫」と言いながら、髪を撫でたり背中を撫でたりした。

だんだん、リアの体から力が抜けていった。その時、一際大きな雷鳴と稲光りが窓全体を明るくした。

リアは俺に力一杯抱きついた。おれも力一杯抱きしめた。

「カイル、わたくしね、ケティさんが嫌いだったの。殺したいほどに・・・」とリアは静かに話しだした。

「軽蔑する?」と俺の胸のなかで問うた。

「いいえ、僕もそれくらい嫌いでした。油断するとリアに危害を加えそうでいやでした」

「でもわたくしは酷いの。ほんとうに殺そうとしたの」

「リアが・・・殺そうと?」

「えぇ、毒を飲ませようとしたの・・・・いえ、飲ませたの」

「毒って持ってたんですか?」

「えぇ、前に貰ったの」と固い声が返って来た。

「貰えるのですか?」

「うん、施設でね・・・ほらお酒の施設」

「あぁ、なるほど」

「リア、多分騙されたんですよ。そういう所で毒を上げたりはしませんよ。そうですね・・・・騙すって言い方が悪いですね。ほら、持ってると安心しませんか?」

「そうね。そうかも」と言っているけど疑ってる。

時折の稲光りがリアが僕をしっかり見つめていることを教えてくれる。

「お茶に入れたんですか?」

「うん、お腹痛くしちゃった」

「それって偶然でしょう」と軽く答えた。

雷鳴のたびにリアの手に力がはいる。


「偶然?」

「だって彼女、車に乗ってしばらくしたらけろっとなったもの」

「それってほんと?」

「こんな嘘言いません」と半分笑いながら答えた。

「もし、リアが飲んでいてもお腹が痛くなるだけだったのでは?それにほら病院にいるんだし、それくらい平気でしょ」

「そうかもね。そうよね病院で毒飲んで死んだとかまずいわね」

僕は話しながらリアの髪を撫でる手も背中を撫でる手も止めなかった。

「リア、ケティを殺したくなるくらいの気持ちを持ってくれた」

そう言いながら、額にキスをした。それから覆いかぶさった。リアは嫌がらなかった。

唇から首筋にキスを降らせて行った。

ときおりの稲光りに浮かび出るリアは美しかった。

俺の動きに合わせてリアが俺を抱きしめる。雷鳴なんて関係なく・・・・

一際強く俺を抱きしめたリアの、のけぞった首筋を稲光りが浮き上がらせた。

一晩荒れ狂った嵐は夜明けと共に去って行った。



腕のなかで寝息を立てるリアを朝日が、照らした。そっとキスするとほのかに笑った。

このほほえみを守る為に捧げた生贄に俺は礼を言った。








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