気がついたら無理!絶対にいや!

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
11 / 68

第11話 王国では

しおりを挟む
さて、アリスが寝込んでいる時、リーブル王国の王宮で騒ぎが始まりだした。
バートとヘドラーが休み明けで執務室にやってきたのはピクニックの三日後だった。
二人は成り行きでアリスの手伝いをしているが、正式な部所は別のところだった。臨時の手伝いに来てそのままだ。

正確に言うと王妃の書類を処理できるのは王妃が代行を正式に依頼したアリスだけだ。
王太子の書類も正式な代行のアリスのみが処理できる。たまに混じる宰相の書類も国王の書類も同じだ。

国王の書類も最初は複雑な資料と情報の整理を手伝って欲しいとこっそり依頼されて手伝ったら段々仕事が増えて宰相にも内緒で正式に代行されて今の状態になった。

まだ幼かったアリスは能力があっても、知恵がなかった。それと誰も守ってくれなかったのも悪かったのだろう。

バートとヘドラーは最初驚いて、宰相に報告したが、業務が流れているのでもう少しの間だけ目を瞑ってくれと頼まれた上にアリスを見捨てて職場に戻れずに・・・それに怒ったり文句を言う暇に仕事を片付けていたら、二人もアリスも麻痺してしまったのかなぁと積み上がった書類を見ながら人ごとのような感想を漏らしていた。

「今日はアリス様がいないのでこの書類を代行で処理できません」と書類を返しに行くのが今日の二人の仕事だった。
書類を返して部屋に戻ると書類がまた戻って来ていたと言うことがあり、二人は部屋に鍵をかけて書類を返しに行った。
その翌日はマスターキーで部屋を開けられ書類が置かれていた。二人は腹を立て書類を放置した。書類は際限なく積み上がって行った。そしてその状態の部屋にアリスの父親のメイナード侯爵が訪ねて来た。そして騒動が始まった。

「アリス、いるかい?」とメイナード侯爵がドアを開けると部屋は無人で、机三つに書類が積み上がっていた。
その書類を見てメイナード侯爵は驚いた。最高機密とは思えないが、王妃の書類だ。

「姉上、なにをしているんだ」とメイナード侯爵は呟いた。彼の目は他の二つの机の書類をふわふわと見た。見てはいけないと思いつつ隣りの机の書類を手に取ると、薄目で見た。次の瞬間しっかりと見た。王の書類だ。資料を精査した後結論を出す必要がある面倒な書類だ。はっと次の書類をみると王太子と妹のバーバラが孤児院を慰問して寝具を買いなおす約束をした報告書だ。予算の計上をアリスに任せると明記して王太子が署名していた。

「あの野郎・・・勝手なことを。アリスは婚約してるだけだぞ」と思ったが、ふと思い出した。いつものように王宮で夕食を済ませたアリスが食後のお茶が終わった頃帰宅してすぐにバーバラに向かって
「いい加減にして、慰問先で約束はやめてって言ったでしょ」
「だって、お姉様。孤児の服はどれも色あせているのよ。髪に結ぶリボンもないのよ。それくらい良いじゃない。なにも高いリボンを買えって言ってるわけじゃないのよ」とバーバラが答え
「わたしは予算を問題にしているの」とアリスが言うのを聞いて・・・自分は
「アリス、固いことを言うんじゃないよ。物事は柔軟にやらないといけないよ。要望を出せばいいんだよ。バーバラの優しい気持ちを大切にしてやりなさい。王妃に慈悲は必要だ。アリスはバーバラを見習ったほうがいいね」と言ったんだった。
そして要望書をバーバラにかかせてアリスに署名させてこう言ったのだ。

「ほら、アリス助かるだろう。バーバラに礼を言いなさい」

アリスは黙ってバーバラに頭を下げていた。そして自分は少し険悪になった二人の機嫌をとるように、ことさら明るく
「ほら、これを明日、提出すればいいだろ」とアリスに渡したんだった。
あれはどう処理されたんだ?第一誰に渡すのだ。侯爵は自分の胃から体がどんどん冷えて行くような気がした。

「アリス。アリス・・・」と侯爵は王太子の執務室へ行った。

「アリス?今日も休みですか?侯爵は娘に甘いですからね。ほんとバーバラはよく手伝ってくれるんですがね」と王太子が言うのに
「なにを言っている。アリスはずっと城にいるだろう」とメイナード侯爵は答えた。
「違いますよ。アリスは・・・アリスは・・・どこに」といいながら王太子はアリスの部屋に向かって走り出した。

しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...