20 / 48
15 侍女長は去る
しおりを挟む
侍女長は宣言通り、ロザモンドに話をしたが、ロザモンドは侍女長の言い分を理解できなかった。姉が令嬢を、どうたらこうたら会いに行ったのに待たせたという割に会ったと。会えたのになんで不満が?立たせた?座りたかったの?息子の婚約者?どこから息子が出て来た?理解できない面倒な事を言い立てる侍女長にロザモンドは心からうんざりしてこう言った。
「明日、お姉様を呼びつけるから、あなたわからせてやって」
連絡を受けたエリザベートは翌日、わざと、朝早くキャリーと一緒に、ロザモンドを訪ねた。
「あら、侍女長はまだ来てないの?」とエリザベートはことさら、不愉快そうに言った。
「まぁ待たせるって侍女長は妃殿下二人を舐めているのかしら・・・・そうだロザモンド。リリー・バーデンの後釜に一人侍女がいるんじゃない?あの子よりましな子なんてたくさんいるわよ」とエリザベートは皮肉な笑みを浮かべて壁際に立っている侍女三人をちらちら見た。
彼女たちは王宮から、侍女長が選んで派遣されているが、正式にロザモンドつきとされているのではない。
だが、エリザベートの言葉と視線で、彼女のメガネにかなえばロザモンドつきとなれると思った。
「リリーにはすっかり騙されていた。とんでもない女だったわ」とロザモンドが言うと
「ほんと、あの日、受け取り証がなくておかしいなって思っていたら・・・・盗って行ってたなんてね」とエリザベートが答えた。
「お母様が、あんな女を侍女につけるから、所詮は田舎子爵の娘よね。違った娘でもなかったわ」とロザモンドが言うのを受けて
「やっぱり、育ちは大事よね」と壁際にちらっと目を向けてエリザベートが答えた。それからロザモンドに目を向けて
「スピーチの定形くらい覚えて頂戴。なにから始める?」
「・・・・」
「挨拶の決まり文句でしょ。それからは・・・・・社交辞令」
「そうそう、社交辞令だった・・・・」
「具体的には?」
「・・・・・」
「覚えてね」とエリザベートが言うと
「リリー・バーデンが頭から離れない」とロザモンドが拳を握って言うと
「忌々しい名前ね・・・・だけど・・・皆さんは素敵な冗談と思ってる風だったわよ」
「だといいけど・・・・」
「彼女には思い知らせてやったじゃない」とエリザベートが言うと
「ほんとうはわたしへの侮辱罪で行きたかったのに・・・・」
「わたくしは侍女長が絡んでるんじゃないかと思ってるの。だって今日も遅れてるじゃない」と全然関係ない、侍女長の名前を出してエリザベートは答えた。
そこに侍女長がやって来た。二人が揃っているのをみたがロザモンドだけに挨拶をした。
「ロザモンド妃殿下、参上いたしました」常に付き従っている侍女二人もロザモンドに挨拶をした。
三人をそのままにしたまま、
「ねぇ侍女長、あなたの仕事ってなに?」とロザモンドが言い出した。
これにはエリザベートも驚いたがロザモンドの理屈があるのだろう・・・・
「ちょっとロザモンド落ち着いてこのままじゃ答えられないわ」とエリザベートが言うと
「楽に」とロザモンドが声をかけた。
「仕事?・・・・」と侍女長が戸惑うのを見てエリザベートはロザモンドに向かって
「ほんとにやってないみたい」と囁いた。
「この間の事を話に来たのでしょ。わたくしは仕事を持って来たのでやりながら耳はそちらに向けておきますね。あとはロザモンドお願いね」とティーテーブルに書類を広げるとペンを走らせだした。
ロザモンドはエリザベートの向かいに腰をおろすと
「早く話しなさい」と侍女長をうながした。
侍女長はなにを話せばいいのかわからなくなった。エリザベートの所に行ったときは叱りつけてやろうと思って行ったが、ずっと立たされて下がれと言われて・・・・ロザモンドに会いに来たのは・・・マナーを教えるって・・・一緒に来た侍女をみても目をそらされるし、自分が送り込んだ壁際に並んだ侍女は、あきらかに敵だ。馬鹿にされてるのを感じて口を開こうとして、はっとした。ここにいるのは二人とも妃殿下・・・・・なんだか仲がいい・・・妃殿下に何が言える?背中が冷たいのに気がついた。冷や汗をずっとかいていたのだ・・・・・・
気が付くとロザモンドがじっと自分を見ていた。
「無能ね。なにも言えないのね・・・・あなた首ね。役立たずを置いておけないわ。ねぇお姉様この人がいないと困る?」
「この人って侍女長の事?」とエリザベートが手を止めず、書類から目もはなさずこう言った。
「そう侍女長の事」
「いても執務の役には立たないわね。そういうことよりお勉強は?」とエリザベートが答えると
「お姉様ったら」とロザモンドは軽くエリザベートの背中をぶつ真似をすると
「侍女長と一緒にいる二人とも首」と言った。
ロザモンド的に面倒なものは排除だ。
「そんなロザモンド様」「どうしてですか」「なにもしてません」と三人が騒ぐとエリザベートが顔を上げて
「ロザモンド、うるさくて仕事にならないから、部屋に戻る。お勉強はちゃんとやってね」と言うとさっと書類をまとめて立ち上がった。
「お姉様の迷惑になったじゃない。すぐに出て行って」ロザモンドの声に、護衛が入ってくると三人はつまみ出された。
こうしてわけがわからないうちに仕事を辞めさせられた侍女長たち三人はロザモンドの事を恨んだ。
「明日、お姉様を呼びつけるから、あなたわからせてやって」
連絡を受けたエリザベートは翌日、わざと、朝早くキャリーと一緒に、ロザモンドを訪ねた。
「あら、侍女長はまだ来てないの?」とエリザベートはことさら、不愉快そうに言った。
「まぁ待たせるって侍女長は妃殿下二人を舐めているのかしら・・・・そうだロザモンド。リリー・バーデンの後釜に一人侍女がいるんじゃない?あの子よりましな子なんてたくさんいるわよ」とエリザベートは皮肉な笑みを浮かべて壁際に立っている侍女三人をちらちら見た。
彼女たちは王宮から、侍女長が選んで派遣されているが、正式にロザモンドつきとされているのではない。
だが、エリザベートの言葉と視線で、彼女のメガネにかなえばロザモンドつきとなれると思った。
「リリーにはすっかり騙されていた。とんでもない女だったわ」とロザモンドが言うと
「ほんと、あの日、受け取り証がなくておかしいなって思っていたら・・・・盗って行ってたなんてね」とエリザベートが答えた。
「お母様が、あんな女を侍女につけるから、所詮は田舎子爵の娘よね。違った娘でもなかったわ」とロザモンドが言うのを受けて
「やっぱり、育ちは大事よね」と壁際にちらっと目を向けてエリザベートが答えた。それからロザモンドに目を向けて
「スピーチの定形くらい覚えて頂戴。なにから始める?」
「・・・・」
「挨拶の決まり文句でしょ。それからは・・・・・社交辞令」
「そうそう、社交辞令だった・・・・」
「具体的には?」
「・・・・・」
「覚えてね」とエリザベートが言うと
「リリー・バーデンが頭から離れない」とロザモンドが拳を握って言うと
「忌々しい名前ね・・・・だけど・・・皆さんは素敵な冗談と思ってる風だったわよ」
「だといいけど・・・・」
「彼女には思い知らせてやったじゃない」とエリザベートが言うと
「ほんとうはわたしへの侮辱罪で行きたかったのに・・・・」
「わたくしは侍女長が絡んでるんじゃないかと思ってるの。だって今日も遅れてるじゃない」と全然関係ない、侍女長の名前を出してエリザベートは答えた。
そこに侍女長がやって来た。二人が揃っているのをみたがロザモンドだけに挨拶をした。
「ロザモンド妃殿下、参上いたしました」常に付き従っている侍女二人もロザモンドに挨拶をした。
三人をそのままにしたまま、
「ねぇ侍女長、あなたの仕事ってなに?」とロザモンドが言い出した。
これにはエリザベートも驚いたがロザモンドの理屈があるのだろう・・・・
「ちょっとロザモンド落ち着いてこのままじゃ答えられないわ」とエリザベートが言うと
「楽に」とロザモンドが声をかけた。
「仕事?・・・・」と侍女長が戸惑うのを見てエリザベートはロザモンドに向かって
「ほんとにやってないみたい」と囁いた。
「この間の事を話に来たのでしょ。わたくしは仕事を持って来たのでやりながら耳はそちらに向けておきますね。あとはロザモンドお願いね」とティーテーブルに書類を広げるとペンを走らせだした。
ロザモンドはエリザベートの向かいに腰をおろすと
「早く話しなさい」と侍女長をうながした。
侍女長はなにを話せばいいのかわからなくなった。エリザベートの所に行ったときは叱りつけてやろうと思って行ったが、ずっと立たされて下がれと言われて・・・・ロザモンドに会いに来たのは・・・マナーを教えるって・・・一緒に来た侍女をみても目をそらされるし、自分が送り込んだ壁際に並んだ侍女は、あきらかに敵だ。馬鹿にされてるのを感じて口を開こうとして、はっとした。ここにいるのは二人とも妃殿下・・・・・なんだか仲がいい・・・妃殿下に何が言える?背中が冷たいのに気がついた。冷や汗をずっとかいていたのだ・・・・・・
気が付くとロザモンドがじっと自分を見ていた。
「無能ね。なにも言えないのね・・・・あなた首ね。役立たずを置いておけないわ。ねぇお姉様この人がいないと困る?」
「この人って侍女長の事?」とエリザベートが手を止めず、書類から目もはなさずこう言った。
「そう侍女長の事」
「いても執務の役には立たないわね。そういうことよりお勉強は?」とエリザベートが答えると
「お姉様ったら」とロザモンドは軽くエリザベートの背中をぶつ真似をすると
「侍女長と一緒にいる二人とも首」と言った。
ロザモンド的に面倒なものは排除だ。
「そんなロザモンド様」「どうしてですか」「なにもしてません」と三人が騒ぐとエリザベートが顔を上げて
「ロザモンド、うるさくて仕事にならないから、部屋に戻る。お勉強はちゃんとやってね」と言うとさっと書類をまとめて立ち上がった。
「お姉様の迷惑になったじゃない。すぐに出て行って」ロザモンドの声に、護衛が入ってくると三人はつまみ出された。
こうしてわけがわからないうちに仕事を辞めさせられた侍女長たち三人はロザモンドの事を恨んだ。
277
お気に入りに追加
4,713
あなたにおすすめの小説
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!
as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。
しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
(本編完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?
青空一夏
恋愛
私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。
私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・
これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。
※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。
※途中タグの追加や削除もありえます。
※表紙は青空作成AIイラストです。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる