上 下
17 / 48

彼女の死後 4

しおりを挟む
一回目です


侍女長は王太子の呼び出しに自分の私用に使っている侍女を二人連れてやって来た。

「なにかと忙しいのに来てもらって悪いな」

「いえ、大丈夫でございます」

「そうか、まぁ俺は急いでいるから、いきなりの質問だが、エリザベートの侍女を他に回していたのは何故だ?」

「必要ないからです」

「お前の判断か?」と王太子が静かに聞くと

「はい、お飾りの妃ですから」

「なるほどお飾りの妃か・・・・お前がつけた呼び名か?」

「いえ・・・・」

「違うと言うのか?」静かな調子に侍女長は返事が出来なかった。自分はとんでもない事をしたのだとわかった。

「・・・・・・」

「わたしの妃をお前はお飾りの妃と呼んで侍女がいらないと判断したのだな」

「・・・・・・」

「答えよ。侍女長」

「殿下がお飾りの妃と・・・・」

「エリザベートは、わたし、この王太子の妃である。それも第一妃より先に、我が元に、迎えた妃だ。わたしの妃をわたしがエリザベートと呼ぼうと、お飾りと呼ぼうとお前に関係あるのか?」

「いえ・・・・・」

「王太子の妃を妃と認識できない侍女長はいらない。お前は侍女長として働いておらぬのに侍女長づらして我が妃を虐げた」

「いえ・・・・そのようなつもりは・・・」

「お前もつもりがあるのか。ゆっくり聞いてやろう。つもりをな」

それから、固まって動けない侍女長を冷たく見据えて

「この女は妃殺しの疑いがある。家族も捉えて牢に入れろ」






フレデリックはずっと会うのを断っていたギルバードを招いた。

「呼び立ててすまない。君にも謝らないといけないな・・・・エリザベートを死なしてしまった。俺が幸せにするとあの時思っていたのに」

「俺こそ、奪い取ればよかったんだ・・・・だが、エリザベートはお前を愛していたからな」

「・・・・・だったのだろうか」とフレデリックは呟き

「婚約破棄すればお前が、娶るとわかっていたから、第二妃として縛り付けた。あげく不幸にして・・・」

涙を拭くと続けて

「わかるとおもうが、俺は復讐の為に王宮をずたずたにした・・・・その上、あの土砂崩れだ。・・・悪いが・・・・あとを任せたい」

「お前なら立て直せる・・・・手伝うよ。救援の手筈は整えた。フレデリック・・・もう一度」とギルバードは言うが

「いや・・・・体が持たない・・・・医者に見せた」

「なんと・・・・」ギルバードが絶句すると

「ギル・・・頼む」

「 国王陛下叔父上は知っているのか?」

「あぁ、話した」

「 わかった・・・・・引き受ける」

「助かる。俺は妻と侯爵夫人と侍女たちを連れて、別荘に引っ込む・・・・俺が死んだら女たちは修道院だ。手配もしておく」

「「三人であそこへ行きたかったな」」同時に同じ事を言った二人は肩を叩きあって別れた。






ギルバードは、さっそく王宮の立て直しを始めた。

だが、皆がすすめる中庭の整備は、首を横に振った。

ここは一番苛烈な処罰が行われた場所なのだ。あのエリザベートつきの侍従と文官の一族をここに集めて焼き殺した。

侍従は薪を横流ししていた。文官もそれを知っていた。

フレデリックは彼らを全員、子供に至るまで中庭に集めるとまわりを薪で囲って火をつけた。

「寒いのはいやなのであろう。存分に温まるがいい」フレデリックが彼らにかけた言葉だ。






ギルバードはその話を聞いて

「なるほど」と呟いた。

その後、たびたび一人で中庭に佇んでいたが、ある日片付けるよう命じた。

「もう、気が済んだのか」

彼は誰に向かって言ったのか。



やがて、フレデリックが亡くなったと知らせがあった。

「抜け駆けして二人であそこに行くつもりだな」

ギルバードの言葉に側近は首を傾げた。

しおりを挟む
感想 176

あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

(本編完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏
恋愛
 私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。  私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・  これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。  ※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。  ※途中タグの追加や削除もありえます。  ※表紙は青空作成AIイラストです。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

処理中です...