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第3話 召喚とか・・・ふざけてる 聖女目線

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躑躅林マリカ。これは芸名みたいな本名だ。つつじばやし・まりかと読む。

わたしは客観的に言うと恵まれた環境に生まれた。お金持ちいや、大富豪の両親のもとに生まれた。二人はわたしが十八の時、旅行先で事故に合い死んだ。

母は美人で父は母を溺愛していた。母は自分に似ずに地味なわたしを寄せ付けなかった。むしろ母の妹の娘の琴子のほうを可愛がっていた。

莫大な財産のおかげで両親は二人で旅行ばかりしていたが、母は琴子におみやげをたくさん買って来た。それを渡すからと琴子を家に呼んでお茶したが、その席で母はため息をつきながら
「はぁどうしてうちの子は地味で面白みがないのかしら・・・琴子さんとマリカを神様が取り違えちゃったのね」と言うのが常だった。

琴子は
「いやだぁ、伯母様ったらマリカちゃんの良さってわかる人にはわかるんですよ。わたしなんて顔だけ・・・ちやほやされるだけ・・・つまんないわ」とちらちらわたしを見ながら答えていた。

年に二回ある一族の会合でも母はわたしをけなし、琴子を褒めた。

「そうでも、ほんと琴子さんに全部譲りたいわ。琴子さんなら地位にふさわしい振る舞いができるでしょ。それに比べてうちの子は・・・・あれ?どこにいるの?」とわざとキョロキョロして
「影が薄いよね」と言ってまわりが笑うとそばにいるわたしを見て

「やだ。そばにいたのね。全然気付かなかった」と言った。

わたしにはなにをしてもいいと思う親戚、知人をそれはたくさん作ってくれた。

意外にもわたしを慰めてくれたのは琴子だった。
「マリカちゃん、いつか必ずマリカちゃんの良さをわかる人が増えるから、わたしはその第一号よ」

会う度に琴子ちゃんはそう言っていた。


そして先程も言った通り、旅先で両親は事故に合い、あっけなく死んだ。わたしが十八の時だ。

二人が持っていた全ての物がわたしの物になった。

わたしは、子供の頃から計画していたことがあった。両親が死んだということは早く実行できるということだ。

二人が死んでもわたしの生活はほとんど変わらなかった。引きこもりの陰気な女だもの。

財産の管理は両親が頼んでいた弁護士さんにこれまでと同じにすべて任せて、わたしは使うだけで良かった。お金を上手に使う。両親がわたしに唯一きちんとしつけたことだ。従姉の琴子がこう言った。

「マリカ、お金持ちに生まれておおらかなのはいいけど、まかせっきりなのは良くないよ」
誤解してる人が多い。親しい琴子でも誤解している。

「まかせっきりじゃないよ。毎年福祉に寄付してるし、いくら寄付するかはわたしが決めてるよ」と反論すると
「はぁ寄付とか・・・どれくらいお嬢様なの。まぁいいわ。来週うちで友達が集まるから、おいでよ。少しは世間を知りなさい」と威張って言われてしまった。

そしてその集まりでわたしは、涼介と出会ったのだ。涼介はわたしが躑躅林と知ってびっくりしていたが、それだけだった。

そしてわたしが、ほとんど引きこもりだと知って驚いた。

「だって、そんだけお金があればキラキラした生活できるでしょ。やらないの?」と不思議そうに言った。

「キラキラは親を見てておなかいっぱいだからね。あんまり興味がなくて、母の服とかバッグとかキラキラしてるし・・・着心地がいいのは部屋着にしてる。イタリアのものはすごくいいよ。ただのジャージがシルクだったり、コードュロイがカシミアだったり、そういうのって意外と丈夫で洗濯機でも洗えたりするしね。いや、逆かな、洗濯機が優秀なのかな?失敗しても家にあるものはタダだから惜しくないし」と言うとはーとため息をついて
「ほんとのお嬢さんってすごい。怖い。ってその靴クロコ?」
「うん。クロコが一番軽いしね。これで作らせると職人も喜ぶし、技術が上がるんだって。そうすると次はもっといいのが出来てくるしね。履きやすいのが一番だから」と言うと
「はーーーどうしよう。デートに誘いたいと思ったけど、世界が違う」
そこに琴子がやって来て
「なに話していたの?楽しそうだったよ」と言った。
「楽しくないよ。僕の自信が粉々にうちくだかれたの。これでも資産家の息子なんだけど」と涼介はふらふらと立ち上がった。
「もう、帰る」と言うと去って行った。

「なにがあったの?」と琴子が言うので
「わからない」と答えた。

それから車を呼んで貰って家に戻った。

翌日、わたしは前から考えていたことを弁護士さんに相談した。
「法律的には問題ないですよ。ですが、ご両親から頼まれております立場上反対です」
「そうだと思うけど、わたし個人でこんなにお金はいらないし・・・社会のために使いたいの」と言うと
「弁護士として依頼されたことはやりますが」としぶしぶ返事を貰った。


そんなある日琴子が遊びに来た。
「マリカ、聞いて、涼介くんが悩んでいてね」

「悩むって?」

「マリカと付き合いたいけど自信がなくなったって。いいやつなんだよ」

琴子の言葉が本当だった。

琴子が彼を連れて来る形で彼とデートをして、親しくなった。わたしは彼を信頼して愛した。
わたしの計画を打ち明けると、彼は賛成した。

「よかった。これで財産目当てじゃないって言える」そう言った涼介に抱きついた。そしてわたしからキスをした。

「結婚しよう」の言葉にわたしは即座にうなずいた。



結婚する涼介の為にともだちがホテルでパーティをすると言うのでその部屋で結婚届に署名した。証人の一人は涼介のお父様。もう一人はもちろん琴子。

そして、財産を寄付する書類に署名した。涼介はその書類にキスをして、満面の笑みでわたしを見た。
明日、二人で提出しに行く。今夜はこのままこのホテルの部屋で、涼介はパーティをするのでわたしは自宅に戻る。

タクシーが走り出して、バスルームにメイク道具のポーチを置いたままだったのに気づいた。独身男性が集まる部屋にその種の私物を置いたままなんてありえない。わたしは引き返した。

まだ、時間はある部屋に戻ってなかに入ると違和感があった。この香り!これ?琴子?
心臓の音が聞こえないように静かに呼吸をした。絨毯が音を吸収するけど、靴を脱いだ。そっとリビングを見た。
誰もいない・・・最初からそこを行くつもりだったように寝室に向かった。

ベッドに横になった二つのふくらみが話していた。

「悪い人ね」
「同じだよ」
「それにしてもあの財産を投げ捨てるとか・・・」
「捨てるんじゃないわよ。寄付よ」と琴子が言うと
「確かに・・・だけど。俺ならもっと楽しく使える。有効に使える」
「書類は大丈夫なのよね」と琴子が言うと
「もちろん、あの弁護士も仲間だよ」と涼介が言った。
「あの女、大嫌い」と琴子が吐き捨てると
「困ったな、おれの奥さんだよ」
「奥さんにしないといけないのよね」
「結婚して財産を共有する必要があるからね」

見つめ合ったふくらみは、キスをした。何度も。それからお互いの服を脱がせるとことを始めた。
わたしはそれを録画した。ちゃんと画面を見ながら、顔を重点的に写した。意味深な足の交差映像なんかどうでもいい。大事なのは個人が特定できることだ。

わたしの仕業とばれる? ふん平気よ。お金が守ってくれるから・・・

寄付するのは公の部分。会社関係よ。いけすかない親族が働いているところよ・・・

部屋を出るとすぐにSNSに上げた。
普通なら親にちくって叱って貰うんだろうが、あいにくとわたしは孤児だ。だから社会に訴えた。

結婚届をとりだすと二つに裂いた。その半分をそのままくずかごに捨てた。署名欄はばっちり読める。誰かの気晴らしになるといいけど・・・

それから役所に行くと寄付の書類を提出した。
ついでに結婚届の半分をシュレッダーにかけて貰った。

騙されるなんてわたしも馬鹿だけど、ばれるなんて間抜けだ。だけど悲しい・・・好きだったのに・・・利用された・・・世界なんて嫌いだ・・・崩れろ・・・

そこで白い光が出て・・・新しい世界もきっとわたしを利用するんだ・・・崩れろ・・・







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