またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり

文字の大きさ
上 下
39 / 56

35 お迎え

しおりを挟む
その時、執事が

「ブラックレイク家の皆様がお見えです」と告げた。

ロバート様が

「お招きいただきありがとうございます」と入って来た。

小さな花束をわたしに差し出して

「卒業おめでとう」と言った。

「ありがとう」と受け取って、執事に渡した。

「綺麗、お姉さまに合わないわ。わたしの部屋に飾って頂戴」とアナベルが言った。

「アナベルにありがとうございます。どうぞ、お席に」と父が案内して全員が席についた。

ブラックレイク侯爵に

「リリー嬢、卒業おめでとう。魔法士部隊に入るとは、才能があったんだね」と言われて

「ありがとうございます」とだけ答えた。


話が長くなると面倒なので

「帰りが遅くなるので食事にして貰えますか?」と遠慮なく催促した。

「あぁぁ、そうだな」と父が答えた。

「ロバート。もう一度リリーと婚約する話だが」と父が言い出すと

「お断りしてます」
「でも、お姉さまはロバート様がお好きですよ」

「そんなことはありません」とわたしが言うと

「お姉さま、意地を張らないで下さい」とアナベルが言い募っていると

「いい加減にしてもらえますか? あなたがたは少しおかしいです。もう一度リリーと婚約ってなんですか?
これなら、婚約を解消して下さい。もう関わりたくない」とロバート様が言った。

「ロバート。なにを言うんだ。祝いの席だぞ」とブラックレイク侯爵が言うのを聞いて、

わたしは吹き出しそうになった。


冷静な執事が合図してワインとオードブルが運ばれて来た。


わたしは、鮭の燻製を美味しく食べた。わたしの好みの強めの燻製。添えてあるキャベツの酢漬けも美味しい。

「お姉さま。わたしに魔法を教えて下さい。わたしの方が上手に出来ます。

ですから教えて下さい。そしたらロバート様の手もすぐに治せます」

スープはカボチャ。バターが少し強いが美味しい。パンも早く給仕された。


「そうだ。アナベル。ハリソン様はどうするのか?」と父が聞いた。

「あの方はまた別ですわ。ねっロバート様」

ロバート様はアナベルを無視してパンをちぎった。

「お姉さまってやっぱり考えなしですね。せっかく、ロバート様がね」とアナベルが最後の「ね」とロバート様に向けて言ったので

「そうね。無理ね。お断り」と答えておいた。謎理論は謎のままで。

わたしは黙って料理を味わった。後、お肉はなにが出るかな?

おぉローストポークだ。ソースはアップルだ。

美味しい。ソースのお代わりが出来るといいなと思っていたら、お代わりがあると言うのでさっそく貰った。

それにしても、この家もブラックレイク侯爵夫妻もおかしい。

ロバート様とライアン様が夫妻に賛同してない点はほっとするが、伯爵家は全員がおかしい。

本気でこの家から逃げ出した方がいい様な気がする。

今頃、そう思うなんて鈍いような気がするが、魔法士になっていなければ、家出して籍を抜くようなやりかたになっただろう。

デザートはオレンジゼリー。ほんとうにここのコックは美味しいのを作る。

感動していたら、執事があわてて部屋に入って来た。お父様になにか耳打ちするとお父様はわたしを見た。

そして立ち上がると部屋を出て行った。

しばらくするとお父様は二人で戻って来た。もう一人はハリソン様だった。

「先輩、お迎えに上がりました」とハリソン様は真面目に言った。

「まぁ王子殿下、よくいらして下さいました」と言いながらアナベルは立ち上がるとハリソン様に駆け寄った。

「さぁお席について。どうぞ遠慮なく」とハリソン様に向かって言った、それからわたしに向かって

「お姉さま、帰る所ですよね。御遠慮なく」と言った。

「帰る所だったのか。ちょうどいい。それでは先輩行きましょう」とハリソン様はわたしに軽く頭を下げた。

デザートのお代わりを諦めてわたしは暇を告げた。


「どうも、お祝いありがとうございました。ごちそうさま」と言うと

ハリソン様は

「それでは、これで」と言ってわたしの為にドアを開けて

「先輩、どうぞ」と言った。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

加護を疑われ婚約破棄された後、帝国皇子の契約妃になって隣国を豊かに立て直しました

ファンタジー
幼い頃、神獣ヴァレンの加護を期待され、ロザリアは王家に買い取られて王子の婚約者となった。しかし、侍女を取り上げられ、将来の王妃だからと都合よく仕事を押し付けられ、一方で、公爵令嬢があたかも王子の婚約者であるかのように振る舞う。そんな風に冷遇されながらも、ロザリアはヴァレンと共にたくましく生き続けてきた。 そんな中、王子がロザリアに「君との婚約では神獣の加護を感じたことがない。公爵令嬢が加護を持つと判明したし、彼女と結婚する」と婚約破棄をつきつける。 家も職も金も失ったロザリアは、偶然出会った帝国皇子ラウレンツに雇われることになる。元皇妃の暴政で荒廃した帝国を立て直そうとする彼の契約妃となったロザリアは、ヴァレンの力と自身の知恵と経験を駆使し、帝国を豊かに復興させていき、帝国とラウレンツの心に希望を灯す存在となっていく。 *短編に続きをとのお声をたくさんいただき、始めることになりました。引き続きよろしくお願いします。

処理中です...