母獣列島

櫃間 武士

文字の大きさ
上 下
23 / 42

鎮守の杜

しおりを挟む
〇森山 静雄の回想。山奥の神社。早朝。
森山(娘の瑶子は神職になるために町の大学に通っとる時に藤原太志と知り合った。太志のやつは瑤子に一目ぼれで半ば強引に結婚することになった。二人して神社を継ぎたいというので、わしも仕方なく許してやったんじゃ)
 境内を掃除している巫女姿の 森山 瑶子(24)と神主姿の藤原 太志(27)。
 赤ん坊の泣く声が森の中から聞こえてくる。
瑶子「鎮守の杜で泣き声がするわ!?」
 驚いて顔を見合わせる瑶子と太志。


〇鎮守の杜。
 茂みの間に生まれたばかりの赤ん坊が泣いている。
瑶子「大変よ!捨て子だわ!」
 濡れ鼠の赤ん坊を抱き上げる太志。
 へその緒の切り口を見て驚く太志。
太志「へその緒が…まるで噛み切られたみたいだ!」
瑶子「貸して!」
 赤ん坊を受け取る瑶子。
 と、瑶子の全身に衝撃が走る。。
太志「どうした、瑶子?」
瑶子「いえ…なんでもないわ…」


〇森山家。居間。
森山「捨て子を育てたいだと!?」
瑶子「この子の顔を見てたら可愛くて、どうしようもなくなったのよ!お願いします、お父さん!」
瑶子の母「でも、あんたらも結婚したばかりで、自分の子供もこれからなのに…」
太志「お義母さんの言うとおりだ、瑶子。赤ん坊は施設に預けるんだ」
瑶子「お願いよ!お母さんもこの子を抱いてみたらわかるわ」
 瑶子の母、瑶子から赤ん坊を手渡される。
 瑶子の母の全身に衝撃が走る。。
瑶子の母「……可愛い顔しとる。この顔見てしもうたら、どないもしょうがあらへんなあ」
森山「お、おい!お前までそんなこと言うのか?」
 当惑する森山と太志。
 瑶子と瑶子の母はほほ笑みながら赤ん坊をあやしている。
森山(瑶子と瑶子の母親に押し切られる形で、その赤子は瑶子の養子になり、育人と名付けられた)


〇神社の境内。
森山(育人はたちまち村のおなご達を魅了し、崇拝の対象になった)
 よちよち歩きをしている育人。
 瑶子と瑶子の母、そして村の女たち十数名がその様子を恍惚の表情で見守っている。
 年長の男の子たちが自分の母親の服を引っ張り、空腹を訴える。
男の子A「なあ、かーちゃん!ハラ減ったよう!」
男の子B「もう家に帰ろうよう!」
 母親、邪険に男の子の手を払いのける。
母親「うるさいわね!帰りたければ一人で帰れ!」
 男の子、不貞腐れる。
 憎悪の眼で育人を見る。
男の子「なんでぇ!馬鹿野郎!」
 男の子、石を拾って育人に向かって投げつける。
 石が育人の額に当たる。
 額から血を流しながら、あお向けに地面に倒れる育人。
女たち「ああああっ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

処理中です...