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トキワ荘物語 その7
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「それでは横山さんは『鉄人28号』を描いて下さい。次は金子さん!藤子不二雄の最初のアニメ化作品はなんですか?」
「昭和38年の『シスコン王子』という人形アニメです」
「シスコン?妹を溺愛してる王子の話ですか?」
「そのシスコンじゃありません。コーンフレークの商品名であるシスコーンとタイアップした作品です。インディアンみたいな恰好をしたシスコン王子が、シスコーンを食べてピンチを切り抜けるってお話です。手塚先生、ご存じないですか?」
治美は無言で首を横に振った。
レトロ漫画に強い治美だったが、さすがに平成生まれなので昭和生まれの金子にはかなわなかった。
「もっとも『シスコン王子』は人気がなくてすぐに打ち切りになりましたがね」
「その次のアニメ化作品は何ですか?」
「そりゃあ、あれですよ、『オバケのQ太郎』!」
「ああ!オバQですか!それなら知ってます!」
「昭和40年8月29日から昭和42年6月28日まで放映されました。その後『パーマン』『怪物くん』『ウメ星デンカ』と続けざまに大ヒットしてゆきます」
「なるほど。それでは金子さん、いえ藤子不二雄さん!これから『オバケのQ太郎』を描いて下さい」
「でもオバQは昭和39年から『週刊少年サンデー』誌上連載開始ですよ。今の世の中、月刊誌ばかりでまだ週刊誌が現れていませんよ」
金子がそう言うと、横山も手を挙げて発言した。
「そうですよ。週刊誌が生まれて世間のリズムが月刊から週刊に変わったからこそ、テレビアニメが毎週放映されるようになったのですよ。今の世の中、まだまだテレビも普及していないし、時期尚早ではないですか?」
「いーえ!わたしたちのマンガの力で世の中を動かすのです!」
治美がそう力強く言うと、横山も金子もそれ以上は何も言わなかった。
早くアニメを作ったらそれだけ早く元の世界に戻れるかもしれない。
全員がそう思い込んでいたからだった。
「それで玲奈ちゃんだけど、石森章太郎で最初のアニメになったのは何って漫画なの?」
「『レインボー戦隊ロビン』」
玲奈がそうポツリとつぶやくと、みんな首を傾げた。
「知ってます、金子さん?」
「うーん、名前だけは聞いたことがあるような…」
「これが主人公のロビン」
玲奈はコミックグラスを使って、白いヘルメットを被ってスカーフを巻いたロビンの絵を模写してみせた。
「ガンマンロボットのウルフ、看護ロボットのリリ、力持ちのベンケイ、ロケットになるペガサス、老人型ロボットの教授…」
続けてサングラス姿のガンマンやナース帽をかぶったスカートの女性の絵を玲奈は描いていった。
「ロビン、リリ、教授のキャラクターデザインは石森章太郎。ペガサスのキャラクターデザインは藤子・F・不二雄、ウルフとベンケイは藤子不二雄Aって書いてる」
「えっ?どうして石森章太郎の漫画のキャラデザに藤子不二雄がいるのかしら?」
治美が尋ねたが玲奈は首を横に振るだけだった。
「そうか!『レインボー戦隊ロビン』はスタジオゼロの制作なんですよ」
金子がポンと手を打った。
「スタジオゼロ?」
「はい。手塚先生がアニメ会社の虫プロダクションを設立した後に、トキワ荘のメンバーでアニメを作る会社スタジオゼロを結成したのです。藤子不二雄の二人、石森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろう、鈴木伸一、つのだじろうが参加しました」
「へぇ。要はみんなで手塚先生のマネをしたのね。やっぱり手塚先生は偉大だわ!」
治美は両手を握りしめて天を仰いだ。
「昭和38年の『シスコン王子』という人形アニメです」
「シスコン?妹を溺愛してる王子の話ですか?」
「そのシスコンじゃありません。コーンフレークの商品名であるシスコーンとタイアップした作品です。インディアンみたいな恰好をしたシスコン王子が、シスコーンを食べてピンチを切り抜けるってお話です。手塚先生、ご存じないですか?」
治美は無言で首を横に振った。
レトロ漫画に強い治美だったが、さすがに平成生まれなので昭和生まれの金子にはかなわなかった。
「もっとも『シスコン王子』は人気がなくてすぐに打ち切りになりましたがね」
「その次のアニメ化作品は何ですか?」
「そりゃあ、あれですよ、『オバケのQ太郎』!」
「ああ!オバQですか!それなら知ってます!」
「昭和40年8月29日から昭和42年6月28日まで放映されました。その後『パーマン』『怪物くん』『ウメ星デンカ』と続けざまに大ヒットしてゆきます」
「なるほど。それでは金子さん、いえ藤子不二雄さん!これから『オバケのQ太郎』を描いて下さい」
「でもオバQは昭和39年から『週刊少年サンデー』誌上連載開始ですよ。今の世の中、月刊誌ばかりでまだ週刊誌が現れていませんよ」
金子がそう言うと、横山も手を挙げて発言した。
「そうですよ。週刊誌が生まれて世間のリズムが月刊から週刊に変わったからこそ、テレビアニメが毎週放映されるようになったのですよ。今の世の中、まだまだテレビも普及していないし、時期尚早ではないですか?」
「いーえ!わたしたちのマンガの力で世の中を動かすのです!」
治美がそう力強く言うと、横山も金子もそれ以上は何も言わなかった。
早くアニメを作ったらそれだけ早く元の世界に戻れるかもしれない。
全員がそう思い込んでいたからだった。
「それで玲奈ちゃんだけど、石森章太郎で最初のアニメになったのは何って漫画なの?」
「『レインボー戦隊ロビン』」
玲奈がそうポツリとつぶやくと、みんな首を傾げた。
「知ってます、金子さん?」
「うーん、名前だけは聞いたことがあるような…」
「これが主人公のロビン」
玲奈はコミックグラスを使って、白いヘルメットを被ってスカーフを巻いたロビンの絵を模写してみせた。
「ガンマンロボットのウルフ、看護ロボットのリリ、力持ちのベンケイ、ロケットになるペガサス、老人型ロボットの教授…」
続けてサングラス姿のガンマンやナース帽をかぶったスカートの女性の絵を玲奈は描いていった。
「ロビン、リリ、教授のキャラクターデザインは石森章太郎。ペガサスのキャラクターデザインは藤子・F・不二雄、ウルフとベンケイは藤子不二雄Aって書いてる」
「えっ?どうして石森章太郎の漫画のキャラデザに藤子不二雄がいるのかしら?」
治美が尋ねたが玲奈は首を横に振るだけだった。
「そうか!『レインボー戦隊ロビン』はスタジオゼロの制作なんですよ」
金子がポンと手を打った。
「スタジオゼロ?」
「はい。手塚先生がアニメ会社の虫プロダクションを設立した後に、トキワ荘のメンバーでアニメを作る会社スタジオゼロを結成したのです。藤子不二雄の二人、石森章太郎、赤塚不二夫、つのだじろう、鈴木伸一、つのだじろうが参加しました」
「へぇ。要はみんなで手塚先生のマネをしたのね。やっぱり手塚先生は偉大だわ!」
治美は両手を握りしめて天を仰いだ。
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