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第5章「ジョニー、ブログを立ち上げる」
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その時だった。
「パパをイジメるなあ!!」
純白の天使の翼を広げたセラベラムが、マンテル大尉の後方から弾丸のような勢いで突っ込んで来た。
「セラベラム!?」
セラベラムがマンテル大尉の後頭部に衝突した。
いや、違う!
セラベラムに見えた飛行物体は、俺が飛ばした監視用ドローンだった。
セラベラムがドローンを操縦し、マンテル大尉にぶつけてくれたのだ。
「なにいッ!?」
ガツンと後頭部に加わった衝撃で、マンテル大尉は思わず振り向いた。
今だ!
俺は両手でマンテル大尉の履くコンバットブーツに向かって飛びかかった。
「うわああッ!!」
マンテル大尉はバランスを狂わせ、足を滑らせた。
俺も真っ逆さまになって、今にも落ちそうになったが、間一髪、両足をスキッドに絡ませた。
マンテル大尉は叫び声を上げながら、破損したドローンと一緒になって背中から地表に向かって落下していった。
俺はスキッドに逆さにぶら下がったまま、マンテル大尉の姿が小さくなり、消えてゆくのを見入っていた。
やがて、俺は手を伸ばすと、ゼーゼー息を切らしながら、再びスキッドをしっかりと握りしめた。
「大丈夫ですか、パパ?」
「ああ………。ありがとう。セラベラム」
俺は詫びるように小さく頭を下げた。
セラベラムは少しはにかみながら、片えくぼを寄せて優しい笑顔を作り、俺に微笑みかけた。
「あわわわわわわッ!!」
トレビノが怯えた犬のような素っ頓狂な悲鳴を上げ、慌ててヘリのドアを閉じた。
俺はヘリコプターの胴体に取り付けられている金具を掴み、ふらつきながらスキッドの上に立った。
「ドアを開けやがれ!くそったれ!」
ヘリコプターのドアを俺は叩いたが、当然ドアは岩のように硬く閉っている。
「パパ。これからどうするのですか?もう、私達には何の武器もありません」
「武器ならちゃんとここにあるじゃねぇか!」
俺は自分の右の拳を握りしめ、見得を切った。
「力こぶもできない、その細く貧弱な腕が武器なのですか?」
「悪かったな!」
俺は機体尾部にある小さな回転翼、テールローターを指差した。
「こういったシングルローター式ヘリコプターの事故の大半が、あのテールローターの故障によるものなんだ」
「そうなんですか」
「ヘリコプターってのは、メインローターが回転して揚力を得ているが、同時に逆回転方向の反作用を受けるんだ。それをテールローターが反対方向の回転力を与えることで、機体が安定しているんだぜ」
「なるほど。テールローターが止まると、ヘリコプターは墜落するのですね」
「ああ。昔見た、日本のアニメでそう言ってたから確かだぞ」
「でも、どうやってテールローターを止めるのですか?」
「………………」
俺は視線を宙に這わせ、口を真一文字にして考え込んだ。
「――――また、ろくでもないことを考えていますね?」
セラベラムは探りを入れるような目つきで、無遠慮に俺の顔つきを物色した。
「考えてもしゃーない!行くぞ、セラベラム!」
「えっ!?まさかのノープラン!?」
俺は手を離し、後方に大きくジャンプをして、突風に身を任せた。
俺の身体はヘリコプターの尾部に横向きに取付けられたテールローターに向かって飛来した。
俺はアストロボーイのように拳を握りしめて右手を突出し、高速回転しているテールローターに全身で突っ込んで行った。
轟音をあげていたテールローターは破損し、プロペラがひしゃげた。
機体上部にあるメインローターの回転力が、ヘリコプターをクルクルと回転させ、到底操縦できる状態ではなくなった。
「あわわわわわわわわわわ!!」
俺は振り回されながらも、ヘリコプターの尾翼に必死に捕まった。
ヘリコプターは失速し、派手に機体を旋回しながら、見る見るうちに高度を下げていった。
革張りの座席に金塊と共に座っていたトレビノは、上下左右に転がりまわった。
金の延べ棒がトレビノの額を割り、噴き出した血が窓を染めた。
ヘリコプターは安定を失い、まるで木の葉が舞うように落下していく。
そして、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノを乗せたヘリコプターは、くすんだ色のビルがゴチャゴチャと建ち並ぶ五番街に墜落したのだった。
「パパをイジメるなあ!!」
純白の天使の翼を広げたセラベラムが、マンテル大尉の後方から弾丸のような勢いで突っ込んで来た。
「セラベラム!?」
セラベラムがマンテル大尉の後頭部に衝突した。
いや、違う!
セラベラムに見えた飛行物体は、俺が飛ばした監視用ドローンだった。
セラベラムがドローンを操縦し、マンテル大尉にぶつけてくれたのだ。
「なにいッ!?」
ガツンと後頭部に加わった衝撃で、マンテル大尉は思わず振り向いた。
今だ!
俺は両手でマンテル大尉の履くコンバットブーツに向かって飛びかかった。
「うわああッ!!」
マンテル大尉はバランスを狂わせ、足を滑らせた。
俺も真っ逆さまになって、今にも落ちそうになったが、間一髪、両足をスキッドに絡ませた。
マンテル大尉は叫び声を上げながら、破損したドローンと一緒になって背中から地表に向かって落下していった。
俺はスキッドに逆さにぶら下がったまま、マンテル大尉の姿が小さくなり、消えてゆくのを見入っていた。
やがて、俺は手を伸ばすと、ゼーゼー息を切らしながら、再びスキッドをしっかりと握りしめた。
「大丈夫ですか、パパ?」
「ああ………。ありがとう。セラベラム」
俺は詫びるように小さく頭を下げた。
セラベラムは少しはにかみながら、片えくぼを寄せて優しい笑顔を作り、俺に微笑みかけた。
「あわわわわわわッ!!」
トレビノが怯えた犬のような素っ頓狂な悲鳴を上げ、慌ててヘリのドアを閉じた。
俺はヘリコプターの胴体に取り付けられている金具を掴み、ふらつきながらスキッドの上に立った。
「ドアを開けやがれ!くそったれ!」
ヘリコプターのドアを俺は叩いたが、当然ドアは岩のように硬く閉っている。
「パパ。これからどうするのですか?もう、私達には何の武器もありません」
「武器ならちゃんとここにあるじゃねぇか!」
俺は自分の右の拳を握りしめ、見得を切った。
「力こぶもできない、その細く貧弱な腕が武器なのですか?」
「悪かったな!」
俺は機体尾部にある小さな回転翼、テールローターを指差した。
「こういったシングルローター式ヘリコプターの事故の大半が、あのテールローターの故障によるものなんだ」
「そうなんですか」
「ヘリコプターってのは、メインローターが回転して揚力を得ているが、同時に逆回転方向の反作用を受けるんだ。それをテールローターが反対方向の回転力を与えることで、機体が安定しているんだぜ」
「なるほど。テールローターが止まると、ヘリコプターは墜落するのですね」
「ああ。昔見た、日本のアニメでそう言ってたから確かだぞ」
「でも、どうやってテールローターを止めるのですか?」
「………………」
俺は視線を宙に這わせ、口を真一文字にして考え込んだ。
「――――また、ろくでもないことを考えていますね?」
セラベラムは探りを入れるような目つきで、無遠慮に俺の顔つきを物色した。
「考えてもしゃーない!行くぞ、セラベラム!」
「えっ!?まさかのノープラン!?」
俺は手を離し、後方に大きくジャンプをして、突風に身を任せた。
俺の身体はヘリコプターの尾部に横向きに取付けられたテールローターに向かって飛来した。
俺はアストロボーイのように拳を握りしめて右手を突出し、高速回転しているテールローターに全身で突っ込んで行った。
轟音をあげていたテールローターは破損し、プロペラがひしゃげた。
機体上部にあるメインローターの回転力が、ヘリコプターをクルクルと回転させ、到底操縦できる状態ではなくなった。
「あわわわわわわわわわわ!!」
俺は振り回されながらも、ヘリコプターの尾翼に必死に捕まった。
ヘリコプターは失速し、派手に機体を旋回しながら、見る見るうちに高度を下げていった。
革張りの座席に金塊と共に座っていたトレビノは、上下左右に転がりまわった。
金の延べ棒がトレビノの額を割り、噴き出した血が窓を染めた。
ヘリコプターは安定を失い、まるで木の葉が舞うように落下していく。
そして、フィフス・ストリートのボス、ミゲル・トレビノを乗せたヘリコプターは、くすんだ色のビルがゴチャゴチャと建ち並ぶ五番街に墜落したのだった。
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