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第2章「ジョニー、クリスピータコスを食す」
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その夜、俺はいつものように近所のメキシカン料理のファストフード店に入り、カウンター席に座った。
「クリスピータコスとブリトーのセット!」
俺は、ウェイトレスのマリアナにそう告げた。
いつも愛想のないマリアナは、無言で注文をメモると、厨房に消えて行った。
しばらくして気風の良い女主人、クラウディアが奥の厨房から顔を出し、注文の品を俺の前に差し出した。
クラウディアは母性的な顔立ちの女性で、はち切れんばかりの肢体だった。
「どうしたのさ、ジャニー?いつにも増して陰気な顔をしているよ」
「別に何もないさ。ただ、彼女と別れて、無職になったぐらいだ」
「あらあら!お気の毒さま!」
俺は手を伸ばし、真正面に立つクラウディアから皿を受け取った。
と、俺の指がクラウディアの指に触れた。
その瞬間、クラウディアがビクッと全身を震わせた。
「――どうかしたか?」
「い、いえ………。なんでもないわ……」
クラウディアが狼狽し、逃げるように厨房に消えていった。
俺は気にせず、クリスピータコスをほおばった。
すると、クラウディアが再び現れて、チップス&ワカモレを黙って差し出した。
「――注文していないが?」
「サービスよ!あんた、痩せてるからもっと栄養つけないとダメよ」
クラウディアがウインクをしながら俺に微笑みかけた。
「あのさあ、仕事がないならうちの店で働きなよ。厨房にアキがあるからさあ……」
「クラウディア……?」
「クラウって呼んで。それとさあ、彼女がいないんだったら、あたしと付き合わない?あたしも今、空いてるんだ!」
「お、おう……!考えとくよ……」
クラウディア、いや、クラウは俺の前から離れようとせずに、俺がチップスにワカモレを付けて食べているところを嬉しそうに見つめている。
(おい、おい!遂に俺にもモテ期到来か!?)
俺は内心まんざらでもなかった。
だが、余命半年と宣告された身でいまさらモテてもなあ………。
「ジョニー………!?」
突然、クラウが叫び声をあげた。
背後に気配を感じて、俺は振り返った。
「くたばりやがれッ!!」
ポケットモンキーみたいな顔をした小男、リックの手下のカートが、ハンティングナイフを俺の心臓めがけて振り下ろした。
もちろん、カートが振り下ろしたハンティングナイフは、1ミリも俺の身体に触れもしなかった。
俺の全身を覆うバリアは、ハンティングナイフを飛ばし、うまい具合に店の天井に突き刺さった。
何が起きたのかわからず、カートは唖然として天井を見上げた。
俺はトルティーヤ・チップス にワカモレをたっぷりとつけ、悠然と食いながらカートに尋ねた。
「お前、一人か?リックとスティーブはどうした?」
「――リックさんとスティーブは病院で治療中だ!」
「ン………?スティーブはケガなんかしてねぇだろ?」
「て、てめぇがスティーブに手錠の鍵を飲ませただろうが!」
「はあーん…………?」
「リックさんが今すぐ、手錠を外せ!って怒り狂ってな………。俺の腕を切り落として手錠を外すか、スティーブの腹から鍵を取り出すかどっちか選べってな………」
俺は腹を抱えて笑いこけた。
「ハハハハハッ!そんでスティーブの腹を切って、鍵を取り出したのか!身体張って笑わせてくれるぜ!」
「クリスピータコスとブリトーのセット!」
俺は、ウェイトレスのマリアナにそう告げた。
いつも愛想のないマリアナは、無言で注文をメモると、厨房に消えて行った。
しばらくして気風の良い女主人、クラウディアが奥の厨房から顔を出し、注文の品を俺の前に差し出した。
クラウディアは母性的な顔立ちの女性で、はち切れんばかりの肢体だった。
「どうしたのさ、ジャニー?いつにも増して陰気な顔をしているよ」
「別に何もないさ。ただ、彼女と別れて、無職になったぐらいだ」
「あらあら!お気の毒さま!」
俺は手を伸ばし、真正面に立つクラウディアから皿を受け取った。
と、俺の指がクラウディアの指に触れた。
その瞬間、クラウディアがビクッと全身を震わせた。
「――どうかしたか?」
「い、いえ………。なんでもないわ……」
クラウディアが狼狽し、逃げるように厨房に消えていった。
俺は気にせず、クリスピータコスをほおばった。
すると、クラウディアが再び現れて、チップス&ワカモレを黙って差し出した。
「――注文していないが?」
「サービスよ!あんた、痩せてるからもっと栄養つけないとダメよ」
クラウディアがウインクをしながら俺に微笑みかけた。
「あのさあ、仕事がないならうちの店で働きなよ。厨房にアキがあるからさあ……」
「クラウディア……?」
「クラウって呼んで。それとさあ、彼女がいないんだったら、あたしと付き合わない?あたしも今、空いてるんだ!」
「お、おう……!考えとくよ……」
クラウディア、いや、クラウは俺の前から離れようとせずに、俺がチップスにワカモレを付けて食べているところを嬉しそうに見つめている。
(おい、おい!遂に俺にもモテ期到来か!?)
俺は内心まんざらでもなかった。
だが、余命半年と宣告された身でいまさらモテてもなあ………。
「ジョニー………!?」
突然、クラウが叫び声をあげた。
背後に気配を感じて、俺は振り返った。
「くたばりやがれッ!!」
ポケットモンキーみたいな顔をした小男、リックの手下のカートが、ハンティングナイフを俺の心臓めがけて振り下ろした。
もちろん、カートが振り下ろしたハンティングナイフは、1ミリも俺の身体に触れもしなかった。
俺の全身を覆うバリアは、ハンティングナイフを飛ばし、うまい具合に店の天井に突き刺さった。
何が起きたのかわからず、カートは唖然として天井を見上げた。
俺はトルティーヤ・チップス にワカモレをたっぷりとつけ、悠然と食いながらカートに尋ねた。
「お前、一人か?リックとスティーブはどうした?」
「――リックさんとスティーブは病院で治療中だ!」
「ン………?スティーブはケガなんかしてねぇだろ?」
「て、てめぇがスティーブに手錠の鍵を飲ませただろうが!」
「はあーん…………?」
「リックさんが今すぐ、手錠を外せ!って怒り狂ってな………。俺の腕を切り落として手錠を外すか、スティーブの腹から鍵を取り出すかどっちか選べってな………」
俺は腹を抱えて笑いこけた。
「ハハハハハッ!そんでスティーブの腹を切って、鍵を取り出したのか!身体張って笑わせてくれるぜ!」
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