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3.二人っきりの帰り道
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自動改札機を通り抜けると夕方のラッシュアワーが始まりかけていた。
帰路につく無言の人の群れが同じ方向に歩いている。
一輝はカリンと一緒に学園を出ると帰途についていた。
女の子と二人っきりで下校するなんて彼のような冴えないオタクには夢のようなシチュエーションだ。
だが一輝の足取りは重かった。
「来月、新入生歓迎会の日の放課後、俺たちは3Dライブを開きます!」
先ほど理事長の前で大見得を切った自分の言葉を思い出し、彼は頭を掻きむしって叫び声をあげたい衝動に駆られた。
(なんであんなこと言っちまったんだ。俺のバカ!バカ!お調子者!
新入生歓迎会まで後一か月しかないぞ。
何一つ知識も機材もないのにどうやって3Dライブなんか開くんだ!)
一輝は自分のスマホを取り出すと「Vチューバー なり方」という単語で検索してみた。
「加賀宮君。歩きスマホは危険だわ」
隣を歩いているカリンが眉をひそめて注意した。
「誰のおかげでスマホで調べていると思っているんだ!」
「あら…?」
「森山。今調べたのだがどうやらVチューバーになるにはいろいろと機材やソフトが必要らしいな」
「そうなの?」
「そうなの…って君も知らないのか。準備はできているんだろ?」
「スマホは持っています」
「パソコンは?マイクは?Webカメラは?モーションキャプチャーデバイスは!?」
「何、それ?そんなに機械が必要なの?」
一輝は開いた口がふさがらなかった。
「森山は理事長の親戚なんだろ。金持ちのお嬢様なんだよな」
「私はお金なんか持っていないわよ。おばさまにお小遣いはもらっていないもの。学校に行かせてもらってるだけで十分よ」
「なるほど、分かった。俺たちには知識も機材も資金もないということだな」
「でも安心して。私はやる気に満ち溢れているわ。それにこう見えても私は歌と踊りにちょっと自信があるのよ。故郷にいた時には毎年お祭りの舞台で踊っていたわ」
「――それはとても心強いな…。確かに森山の声は涼やかで話し方も落ち着いていて心地よい。きっと歌声も綺麗なんだろうな。でも…」
一輝はずっと引っかかっていた疑問を口にした。
「でも、どうしてVチューバーなんだ!?森山なら顔出しして配信した方がきっと人気が出るぞ」
「自分の姿形をあまり世間に晒したくないの」
「――まあ確かに身バレしてストーカーとかに付きまとわれる危険性はあるな。森山みたいな美人ならなおさらだ。嫉妬で誹謗中傷を受けるかもしれないしな」
二人はしばらく無言で歩いていた。
と、一輝はつい本音を口にしてカリンのことを綺麗だ、美人だと褒めたたえていることに気づいた。
(これじゃ俺が森山を口説いているみたいじゃないか!)
一輝は動揺してカリンの顔色をうかがったが彼女の表情に何の変化もなかった。
(すましたもんだ。森山ぐらいの美少女なら賞賛されることに慣れているんだろうな)
一輝は自分ひとりがあたふたと動揺しているのが馬鹿らしくなった。
(一刻も早くご依頼の『エルフの女子高生』を描いてスマホで配信できるようにするんだ。その後は俺とは金輪際関わらないようにしてもらおう)
一輝は立ち止まると思い切って森山に言った。
「森山。これから俺んちに来ないか?」
「ただいま」
一輝が玄関から家の奥に向かって声をかけた。
ちょうどラフな短パン姿で廊下を歩いていた妹の葵が振り向いた。
「おかえり。今日は遅かったね…」
葵は帰宅した兄の隣に今まで見たことがない美少女が立っていることに気づき思わず息を呑んだ。
「お邪魔します」
カリンが葵に向かってお辞儀をした。
葵は返事もせずにドドドドッと台所に目指して駆けていった。
「ママーッ!!大変だよ!お兄ちゃんがJK連れ込んだよ」
帰路につく無言の人の群れが同じ方向に歩いている。
一輝はカリンと一緒に学園を出ると帰途についていた。
女の子と二人っきりで下校するなんて彼のような冴えないオタクには夢のようなシチュエーションだ。
だが一輝の足取りは重かった。
「来月、新入生歓迎会の日の放課後、俺たちは3Dライブを開きます!」
先ほど理事長の前で大見得を切った自分の言葉を思い出し、彼は頭を掻きむしって叫び声をあげたい衝動に駆られた。
(なんであんなこと言っちまったんだ。俺のバカ!バカ!お調子者!
新入生歓迎会まで後一か月しかないぞ。
何一つ知識も機材もないのにどうやって3Dライブなんか開くんだ!)
一輝は自分のスマホを取り出すと「Vチューバー なり方」という単語で検索してみた。
「加賀宮君。歩きスマホは危険だわ」
隣を歩いているカリンが眉をひそめて注意した。
「誰のおかげでスマホで調べていると思っているんだ!」
「あら…?」
「森山。今調べたのだがどうやらVチューバーになるにはいろいろと機材やソフトが必要らしいな」
「そうなの?」
「そうなの…って君も知らないのか。準備はできているんだろ?」
「スマホは持っています」
「パソコンは?マイクは?Webカメラは?モーションキャプチャーデバイスは!?」
「何、それ?そんなに機械が必要なの?」
一輝は開いた口がふさがらなかった。
「森山は理事長の親戚なんだろ。金持ちのお嬢様なんだよな」
「私はお金なんか持っていないわよ。おばさまにお小遣いはもらっていないもの。学校に行かせてもらってるだけで十分よ」
「なるほど、分かった。俺たちには知識も機材も資金もないということだな」
「でも安心して。私はやる気に満ち溢れているわ。それにこう見えても私は歌と踊りにちょっと自信があるのよ。故郷にいた時には毎年お祭りの舞台で踊っていたわ」
「――それはとても心強いな…。確かに森山の声は涼やかで話し方も落ち着いていて心地よい。きっと歌声も綺麗なんだろうな。でも…」
一輝はずっと引っかかっていた疑問を口にした。
「でも、どうしてVチューバーなんだ!?森山なら顔出しして配信した方がきっと人気が出るぞ」
「自分の姿形をあまり世間に晒したくないの」
「――まあ確かに身バレしてストーカーとかに付きまとわれる危険性はあるな。森山みたいな美人ならなおさらだ。嫉妬で誹謗中傷を受けるかもしれないしな」
二人はしばらく無言で歩いていた。
と、一輝はつい本音を口にしてカリンのことを綺麗だ、美人だと褒めたたえていることに気づいた。
(これじゃ俺が森山を口説いているみたいじゃないか!)
一輝は動揺してカリンの顔色をうかがったが彼女の表情に何の変化もなかった。
(すましたもんだ。森山ぐらいの美少女なら賞賛されることに慣れているんだろうな)
一輝は自分ひとりがあたふたと動揺しているのが馬鹿らしくなった。
(一刻も早くご依頼の『エルフの女子高生』を描いてスマホで配信できるようにするんだ。その後は俺とは金輪際関わらないようにしてもらおう)
一輝は立ち止まると思い切って森山に言った。
「森山。これから俺んちに来ないか?」
「ただいま」
一輝が玄関から家の奥に向かって声をかけた。
ちょうどラフな短パン姿で廊下を歩いていた妹の葵が振り向いた。
「おかえり。今日は遅かったね…」
葵は帰宅した兄の隣に今まで見たことがない美少女が立っていることに気づき思わず息を呑んだ。
「お邪魔します」
カリンが葵に向かってお辞儀をした。
葵は返事もせずにドドドドッと台所に目指して駆けていった。
「ママーッ!!大変だよ!お兄ちゃんがJK連れ込んだよ」
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