【R18】「お前を必ず迎えに行く」と言って旅立った幼馴染が騎士団長になって王女の婚約者になっていた件

望月 或

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小話 “幸せ”の味 2*

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「ホークレイ? 入ってもいい?」
「ルカ? あぁ、いいぜ。別にノックしなくても普通に入って来てもいいぞ?」
「ふふ、ありがとう。失礼します」

 リュシルカがホークレイの部屋に入ると、彼はシャワーを浴びたばかりだったようで、上半身裸のスラックス姿で頭をタオルで拭いていた。

 久し振りに見る彼の身体は、相変わらず細身だけど、しっかりと筋肉がつき引き締まっていて、腹筋も綺麗に割れていて……。

「……っ」

 リュシルカの頬が瞬時に紅潮する。
 そんな彼女に、ホークレイは可笑しそうにクッと笑った。

「ルーカ? もういい加減慣れろよな? ここで暮らし始めてから、毎日といっていいほど俺の裸見てただろ? 裸を見られるよりもっと恥ずかしいコトしてたし……」
「そっ、そんなこと言わなくていいから!」

 リュシルカは慌ててホークレイの言葉を遮る。
 彼はくつくつと笑うと、持っていたタオルを枕元に放り投げ、自分の妻を引き寄せ抱きしめた。

「ラトは寝たのか?」
「うん。最近、夜は起きずに朝までぐっすりと寝てくれるようになったんだ。だから、あの……。久し振りに、レイと一緒に寝たいな、って思って……。私の部屋、ここの隣だし、もしラトが起きて泣いちゃったらすぐに駆けつけられるし……。だから……その……い、いいかな……?」

 恥ずかしさの余り、真っ赤になってしどろもどろになりながら言葉を紡ぐリュシルカに、ホークレイの心が愛しさで一杯になり、彼女を強く腕の中に閉じ込めた。

「そんなの、聞かなくったっていいに決まってんだろ? お前からそう言ってくれるなんて、すっげー嬉しい」

 ホークレイは笑うと、リュシルカの顎に指を掛け、上を向かせて唇を重ねた。
 それはすぐに深い口付けに変わり、湿った音を響かせながら、ホークレイはリュシルカをベッドの上に寝かせる。そして、彼女の上に覆い被さった。

「……あ、ホークレイ……」
「分かってるよ、お前がもう少し落ち着くまでしないさ。その代わり、明日からラトが寝たらこっちに来てくれ。またさ、一緒に寝ようぜ?」
「……うん」

 ホークレイは嬉しそうに再び笑うと、リュシルカの首筋に唇を這わせていく。
 まだ半分程濡れた髪がリュシルカの頬に当たって、ヒンヤリと冷たい。

「……髪、伸びたね……。今はお尻辺りまである?」
「あぁ。切る時間が勿体無いから、そのまま伸ばしてたけど。お前が昔みたいに短い方がいいってんならバッサリ切るぜ?」
「うーん……。どっちも格好良いから決められないよ……」
「ははっ! 嬉しい言葉ありがとな」

 リュシルカの鎖骨に痕を付けながら、ホークレイは彼女のネグリジェの胸元をはだけさせ、胸を露わにさせた。

「やっと触れる……。ココ、夜はオレだけのモンな? 仕方ねーから日中はラトに譲ってやるよ」
「仕方ないって……」

 ホークレイの大人気無い言い方に、思わずリュシルカは苦笑してしまう。

「……ラトに授乳させている時から思ってたけど、一回り以上大きくなってるよな……。張りもすげーし……」
「うん……。授乳が終わるまでこのままの大きさみたい」
「俺の手に余るなんてすげーな……」

 ホークレイが感嘆したように呟きながら、リュシルカの胸をゆっくりと揉み上げる。
 ビクリ、と彼女の身体が震えた。

「あ……。れ、レイ、あまり刺激しないで。母乳が――」

 言い終わる前に、ホークレイは胸を揉みながらピンと立っている先端を口に含み、舌で転がし強く吸ってしまった。
 彼にとっては、いつもやっていた至極当たり前の行為だったが、それをやられると――

「――っ!」

 キーンと、胸の神経が張り詰めたような感覚に襲われる。
 母乳が出る時の前兆だ。


(いけない……っ!)


「レイッ、暫く離さないで……!」
「っ!?」

 リュシルカはホークレイの頭を片手でギュッと抱きしめると、もう片方の手で枕元にあったタオルを引っ掴み、急いで空いている方の胸に押し当てた。

 ……両方の胸から母乳が出ている感覚がする。

(危なかった……。一度出たらなかなか止まってくれないんだよね……。私の場合、出がいいのか噴き出しちゃうし……。ベッドが汚れなくて良かった)

 シェラトに授乳する時、必ず空いている胸にタオルや布を当ててしている。そうしないと、周囲や服が飛び出した母乳で汚れてしまうのだ。
 近くにホークレイの使っていたタオルがあって良かった……。

(……ん? ホークレイ……?)

 そこで、リュシルカはハッと気が付いた。


 ホークレイに、無理矢理母乳を飲ませてしまったことに。


 喉を鳴らす音が聞こえたし、溢れていないから、全部飲んでくれたのだろう。
 リュシルカの顔が、サーッと青くなる。


(ど、どどうしよう……! ベッドを汚しちゃいけないってことしか頭になくて……! 立派な大人のホークレイに母乳を飲ませちゃっただなんて、彼のプライドが許さないよね? 絶対に怒ってるよね!? あぁっ、私のバカ!! 本当になんてことを――!)


 リュシルカは、ホークレイの頭をそろそろと離す。
 ……彼からは、何の反応も無い。乳首から口を離そうともしない。

「れ、レイ……。ごっ、ごめんなさい!! 一度出始めたら、自分じゃ止められなくて……。ベッドを汚しちゃいけないって気持ちで一杯で……。本当にごめんなさい――」
「いや、全然怒ってないぜ? 寧ろ……。――もう完全に離しても大丈夫そうか?」
「え? あ……う、うん……」

 ホークレイはゆっくりと乳首から口を離すと、リュシルカの胸の間に顔を埋めた。

「え、レイ……?」
「……俺さ、赤ん坊の頃、人工乳を飲んでたんだよ。母上がさ、母乳が出なくて、仕方なく……。コップで上手に飲んでたらしい」
「コップで!? 赤ちゃんの頃から器用だったんだね……」
「ん……。でさ、少し大きくなって、城下町に遊びに行くようになって。公園とかでさ、母親が赤ん坊に授乳してんの見掛けるんだよ。父上の国は、国民全員がご近所同士みたいなモンでさ。そういうの、外で平気でしてて。あ、勿論胸元はちゃんと隠してたぜ? その、飲んでる時の赤ん坊がさ、何だか幸せそうでさ。他の赤ん坊も、幸せそうに飲んでてさ……。どんな味がするんだろうって、ずっと気になってて――」

 話しながら、時折胸に頬を擦り付けてくるホークレイは、甘えている子供みたいで。
 リュシルカは無性に愛しくなって、思わず彼を抱きしめ、

「……どうだった?」

 と、訊いてしまった。


「……あったかくて、少し甘くて。……“幸せ”の味がした。赤ん坊の気持ちが分かった気がする」
「……そっか」


 ふふ、とリュシルカは笑う。


「勿論、人工乳を否定してるわけじゃないぜ? 美味かったみたいで、ゴクゴク飲んでた、って母上言ってたし」
「うん、分かってるよ」
「ただ……やっぱり、母乳じゃ無かった分、母上に抱き上げられる回数が、他の母親より少なかったと思う。……それが無性に寂しかった記憶がある……」
「……うん、そっか……」



 ……ホークレイが、胸に執着している理由は。
 彼が幼き頃に感じた、強い寂しさからきているのかもしれない――



「……胸、また触っても大丈夫か?」
「うん。一回出したから、暫くは大丈夫だと思うよ」
「ん」

 ホークレイはフッと笑って頷くと、胸の愛撫を再開した。

「……っ」
「……なぁ、ルカ?」

 ホークレイが胸を揉み、先端を弄りながら呼び掛けてくる。
 リュシルカはそれに、不穏な気配を察した。


「また出そうになったら、飲ま――」


 ホークレイが言い終わる前に、リュシルカは慌てて彼の口を両手で抑えたのだった――




**********




「今日も今日とて、おっぱいを離そうとしませんね、このおぱジュニ君は」
「変な呼び名を略して定着しようとしないで!?」


 また遊びに来てくれたコハクの目の前で、シェラトが幸せそうにリュシルカの母乳を飲んでいる。
 そこにノックの音が聞こえ、ホークレイが入って来た。

(また、父子が母のおっぱいを巡って苛烈な戦いが繰り広げられるんでしょうか?)

 コハクの期待とは裏腹に、ホークレイは歩きながら余裕な笑みを浮かばせシェラトの前にしゃがむと、彼の頭を優しく撫でた。


「母さんのおっぱい、ラトと父さんモンな? 他の野郎どもに触らせないように、お前と父さんが全力で守っていこうぜ」


 シェラトはホークレイの方を見ると、「分かったよ」という風に、目を細めてニコッと笑った。

「おぉ……流石俺とルカの息子、まだ赤ん坊なのに理解力がものすげーな」
「私は貴方の成長にビックリですよ。貴方がリュシルカのおっぱいを息子であろうと共有するなんて……。この短期間で一体何が……? 空から槍や剣や斧が大量に降ってこないことを祈るばかりです」
「……お前のその失礼な言い草を治す成長が出来るように祈るばかりだよ」
「……ふふっ」



 ――ホークレイ王の治めるアグウェル王国は、今日も平和に一日が過ぎていく――








Fin.











※あとがき※

ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました!
リクエスト戴きました、『ママ乳ロワイヤル話(息子が好敵手)』をお送り致しました。
ホークレイとリュシルカが結婚してから、二年後位のお話でしょうか。
短くすぐに終わるお話になると思い、こちらを先に書かせて頂きました。
けれど書くのが楽しくて、気付けば二話に分ける長さに……。
相変わらずホークレイが変態ですみません!
ブレない変態おっぱい野郎です。こんなんでもヒーローです(白目)
ちなみに毎回乳首は消毒していますよ!


モルガナ様、改めましてリクエストありがとうございました!書いていてとても楽しかったです!
ご期待に添えられなかったら本当に申し訳ございません。。少しでも楽しめて頂けたなら至福の気持ちです!



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感想 79

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みんなの感想(79件)

hiyo
2024.05.23 hiyo

少し笑いも入っていて、読み易かったです。
とても素敵な物語を有難うございました。


2024.05.23 望月 或

hiyo様、こんにちは(*^^*)
わぁ!こちらこそ、とてもとても嬉しい感想をありがとうございます(#^^#)♡
hiyo様のお蔭で、作者のやる気がグンと上昇です(๑•̀ㅂ•́)و✧
天にも昇るお言葉、本当にありがとうございました!

解除
しま猫
2024.03.28 しま猫
ネタバレ含む
2024.03.28 望月 或

しま猫様、こんにちは(*^^*)
またお会い出来てすごく嬉しいです♪

番外編、読んで下さりありがとうございました♡
ホークレイの威圧に、息子も負けちゃいませんよ!(笑)
おっぱいではバトルする二人だけど、普段は仲良しで、レイも時間を作って一緒に遊んでます(*´▽`*)

こちらこそ、嬉しいお言葉をありがとうございます(#^^#)♡

次はゼノの【救済エンド】に取り掛かりますね!
どうやら考えてる以上に長くなりそうなので、どうぞ気長にお待ち下さいませΣ(´∀`;)
もう一度ゼノを書きたいと思っていたので、無駄に意気込んでます!(笑)

解除
東堂明美
2024.03.28 東堂明美
ネタバレ含む
2024.03.28 望月 或

東堂様、こんにちは(*^^*)
わぁ、ありがとうございます♪
よろしければどうぞ!・゚・(ノ。>o<)ノ🍰🍡🍵☕🍦

無事に皆(王達以外)ハッピーエンドを迎えられました!
最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました(#^^#)♡
番外編も読んで下さりとても嬉しいです♪
応援ありがとうございます!東堂様も、お身体に気を付けてお過ごし下さいね(*´▽`*)

解除

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