隣人はクールな同期でした。

氷萌

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*隣人は優しい男でした。

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軽くパニックになっていたからか
ノックの音も扉が開いた事も気付かなかった。


もしかして
全部見られてた…?


「泣いてんのか…?」

「ち、違うッ」


誤魔化さないとダメなのに
どんなにアタシが拒否しても
アタシ自身の心は言う事なんて聞いてくれない。

溢れる涙は一向に止まらない…


「どうしたんだ!?
 苦しいのか!?」


そんな様子を目の当たりにした煌月も
焦った様子でオドオドしている。


本当…心配ばっか…


「あー…
 本当なんでいつもアンタってヤツは…」

「七星…?」


なんでアンタの傍にいるのが
こんなに落ち着くんだろ…
1番、安心出来るんだろ…


「会いたかった…バカ」


普段じゃ絶対言わないのに
こんなときだからなのか
言いたくなって…
言葉にして更に涙が溢れる。


「俺もだ…」


そう言って煌月に
抱きしめられた。

今までだって
何度かこうして抱きしめてくれた事はあったのに
今日はいつもと違って
“幸せ”を感じたんだ。


きっとそれは


「好き…」


自分の気持ちに
ようやく気付けたから―――


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