隣人はクールな同期でした。

氷萌

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*それぞれの変化。

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そう思ったら
ふと、煌月が言ってた言葉が頭を過る。

『俺もアイツには話さなきゃいけない事がある』と――


まさかこのコにまで…
あの話をしたんじゃ…


「ねぇ七星さん…」

「は、はいッ!」


急に振られて
ビックリしたのなんのって。
飲んでたコーヒーを落とすかと思った。


「私…
 ジンくんが、好き」

「え…」


なんの前触れもない
突然アイツへの告白―――


「離れたくなんか…ないのに…」

「早乙女…さん?」


俯いているせいで
髪で顔が隠れて見えないけれど
コーヒーを持つ手は
微かに揺れている。

もしかして…泣いてる?


「だけどね、ジンくん…
 マンションに帰るって」


そう言ったあと
ようやく顔を上げ
アタシに振り返り…


「振られちゃったんだ、私」


たくさんの涙を流しながら
だけど感情的になるワケでもなく
静かに彼女はそう言った―――


「…ッ」


どうしてか…
アタシが…胸を締め付けられる思いだ。

アイツの意思だし決定だし
こっちが何か言える立場ではないけれど…

陽向さんに突き付けられた
“別れ”の言葉を思い出す――
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