隣人はクールな同期でした。

氷萌

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*傍にいたいと思いました。

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ちょうどエレベーターは1階へと到着。


「そうだ
 見舞いに来てやって。
 母親のところに」

「え…」


エントランスを2人で歩きながら
煌月の口から思わぬ言葉に
アタシはその場に立ち止まってしまった。


「心配してくれてたみたいだし
 お前が良ければ…だけどな」


『また普通に話せる事があれば
 きっとそのときが
“元通り”なのかもしれない…』


「うん。
 アンタが良ければ
 アタシは喜んで行くよ」


ありがとうね、煌月。

アンタが元気になってくれれば
それで充分――


「煌月ッ!」


前を歩くアイツの後ろ姿に呼び掛けると
『何事だ?』って顔しながら
こちらを振り返った。


「また飲みに行くよッ!」


って、意味もなく叫んでみた。

うん。
別に深い意味なんてない。
ただ…なんとなく、ね。


「はぁ?何言ってんだか。
 当たり前だろ?バーカ」


バカとはなんだ、バカとは。

けど。
アイツらしい。
アタシの知ってる煌月ジンは
こういう男だから

何も変わらず
アタシ達は自然と
今まで通りの関係に戻れたんだと思う――




 
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