隣人はクールな同期でした。

氷萌

文字の大きさ
上 下
213 / 396
*ボロボロなんだと思います。

12

しおりを挟む
早乙女さんも心配そうに
ドアの外からこちらの様子を伺っている。

入るのが
なんとなく怖いんだろうね。
確かに今の煌月からはアタシですら
あんまり近付きたくない。


「体に悪いから
 煙草やめな…」

「ほっとけ」


やっと口を開いたかと思えば拒絶の言葉。

まるで何かに取り憑かれているようなドス黒いオーラと
重苦しく低い声のトーンに
目の前にいるこの男が本当に煌月なのかと
疑ってしまうほど只ならぬ状態に陥っている。


「しっかりしな…
 いつものアンタらしくないよ?」

「…いつもの俺ってなんだよ」

「え…?」

「なんにも知らねぇくせに
 テメェに俺の何がわかんだよッ!」


小さくボソボソっと呟いていたかと思うと
突然大声で怒鳴りだした煌月が
あまりに人が違ったように思えて…
怖くて…
アタシの心拍数は一気に上昇した。

ドクドクと音を立てる心臓に
胸が苦しくなる。

ううん。
この胸の苦しさは心臓じゃない。
“心”だと思う。


自分自身が1番気にしていた事を
直接本人の口から聞いてしまったから…





 
しおりを挟む

処理中です...