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*芽生えた気持ちの変化
3
しおりを挟む母の話によると
当時の氷彗も今と同様に人見知りがあったよう。
本を読む事が大好きな彼は勉強も得意で
父と同じ道に進む事は自ら決めた夢だった。
そして彼が高校2年生になった頃の父は
医師として腕を上げ
名声を手に入れ始めていた。
そこから歯車が噛み合わなくなっていった―――
「どうしても医者にさせたいお父さんの思いが強すぎて
厳しさも増して、それがとても大きなプレッシャーになっていたみたいで…
毎日、喧嘩が絶えなかったわ」
「そう…なんですか」
「お父さんも、人が変わったみたいになってしまってね。
昔はもっと愛情ある人だったのに…」
昨日、壱琉がボソッと呟いた言葉の意味は
こういう事だったんだ。
「全てを捨てる覚悟で出て行ってしまった氷彗を
私も、止められなかった…
止めなきゃいけなかったのに…」
母は後悔からか表情に暗い影を落とし
内庭の大きな池を寂しそうに見つめている。
「お父さんが氷彗を迎えに行ったのは聞いたわ。
話は平行線のままだったみたいだけど
あの子が自らの意思でここに戻ってきたのには驚いたわ。
高校を卒業してから1度も顔を見せなくなったのに…」
「高校卒業してから1度も…ですか」
すごい長い反抗期だな、氷彗。
捻くれ度が酷かったのか
さすがに大人になって考え方を改めるよね、今は。
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