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*芽生えた気持ちの変化

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母の話によると
当時の氷彗も今と同様に人見知りがあったよう。

本を読む事が大好きな彼は勉強も得意で
父と同じ道に進む事は自ら決めた夢だった。

そして彼が高校2年生になった頃の父は
医師として腕を上げ
名声を手に入れ始めていた。

そこから歯車が噛み合わなくなっていった―――

「どうしても医者にさせたいお父さんの思いが強すぎて
 厳しさも増して、それがとても大きなプレッシャーになっていたみたいで…
 毎日、喧嘩が絶えなかったわ」

「そう…なんですか」

「お父さんも、人が変わったみたいになってしまってね。
 昔はもっと愛情ある人だったのに…」

昨日、壱琉がボソッと呟いた言葉の意味は
こういう事だったんだ。

「全てを捨てる覚悟で出て行ってしまった氷彗を
 私も、止められなかった…
 止めなきゃいけなかったのに…」

母は後悔からか表情に暗い影を落とし
内庭の大きな池を寂しそうに見つめている。

「お父さんが氷彗を迎えに行ったのは聞いたわ。
 話は平行線のままだったみたいだけど
 あの子が自らの意思でここに戻ってきたのには驚いたわ。
 高校を卒業してから1度も顔を見せなくなったのに…」

「高校卒業してから1度も…ですか」

すごい長い反抗期だな、氷彗。
捻くれ度が酷かったのか
さすがに大人になって考え方を改めるよね、今は。



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