無彩色なキミに恋をして。

氷萌

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好きになってしまいました。

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申し訳ない気持ちと
気まずさに居た堪れない感情。

無意識のうちにお互い見えない壁を作って距離を空けていた。
キスの事があってからどう接していいかわからなくて、目を合わせられないから…。



「じゃぁ…行ってくるね…」

「はい…」

燈冴くんが怪我で動けず
しばらく秘書も執事も休む事になり
仕事は父と2人。

玄関先で見送る燈冴くんに背を向けドアノブに手を掛けると、彼から『あの…』と控えめに呼び止められた。

「すみません、こんな時に…
 ですが、先日の事を…」

背中越しで聞こえた声に緊張感が伝わってくる。
“先日の事”
それしか言われていないのにキスのことだとすぐにわかり、わたしも控えめに首を振る。

「あれはですね…
 その…」

「熱があったからッ
 それでついあんなこと、しちゃったんだよね…?」

言いづらそうに珍しく言葉を詰まらせるから
わたしの方が先に誘導尋問するみたいに遮ってしまった。

「そう…ですね
 それが原因かしれません…」

否定もされない。
だけど目も合わせず歯切れの悪い答えが返ってくる。

微妙な空気だけが残り
やっぱり居た堪れなくて
『いってきます』と挨拶だけ残し
わたしは家を出てしまった。


本当は
何を言おうとしたんだろうか。

そればかりを考えながらーーー

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