無彩色なキミに恋をして。

執事でも、男に変わりはありません。

11

ジュエリーそうびを完璧に車を降りたわたしは
父の後を追うように階段を上がる―――――


「あいかわらず 人多っ…」

重たい扉の向こうに広がる光景は
右を見ても左を見ても
煌びやかなドレスに身を包んだ御夫人やら
タキシード姿の紳士な殿方でいっぱい。

鼻を刺すような強烈な香水の香りは
色んな人のが混ざっていて、長居したらリバースしそう…。

「行ゆくぞ、緋奈星」

「…はい」

溜め息混じりに返答すると
ごみごみとした人集ひとだかりの間をすり抜けていく。

思った通り…
ううん、それ以上の注目で緊張するんだけど。


数段高くなっている壇上へと促されガチガチに固まっていると、父がマイクを持って喋り出した。

「皆みな、今日は集まってくれてありがとう。
　まずは紹介しよう。娘の緋奈星だ」

ワーっと拍手喝采が巻き起こり
一瞬にして会場が沸く。

『ど、どうも…』なんて小声で発しながら
とりあえず頭を下げてみた。

挨拶だけで
そんな盛り上がります？



それから父の演説のような長い挨拶を聞かされ
わたしが身につけている高価なジュエリー達の紹介がまた長々と続き、ようやく食事をしながらの歓談時間になる頃には、もう随分と疲れきっていた―――



す、座りたい…


重たいジュエリーに加えて9㎝のピンヒールは
結構ハード。