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5章:疑惑の目、不穏な空気。
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しおりを挟む『少し待っていろ』と店の入り口付近で歩くのを止められ、鞄を返してくれたあと彼は道路の方へと速足に消えていく。
私は借りたジャケットで寒さを凌ぎながら言われた通りに待っていると、ものの数分で彼が戻ってきた。
「タクシーに乗れ」
単発に発して、背中に軽く手を添え歩くのを手助けてしてもらいながら、路肩に停まる1台のタクシーの後ろへと乗り込んだ。
そしてなぜか桐葉さんも運転席の後ろ、つまり私の隣に一緒に乗り込んできた。
「ん? 支配人の家って同じ方向でしたっけ?」
どうして? と、思わず瞬きを数回。
桐葉さんの家は職場から僅か5分の距離で、この居酒屋からも歩いて帰宅しても遠くはない。そして私の家とは逆方向のはず。
なのになぜ一緒に乗っていくの……?
「言っただろ。送っていくって」
「そう……でしたけど……」
確かにさっき茉莉愛ちゃん達の前でそう言ったのは聞いていたけれど、それはあくまで帰る口実でタクシーを拾うまでの事かと思っていた。
まさか本当に送っていくつもりだったなんて―――
運転手に自宅の場所を告げ、タクシーは発進。
後部座席に桐葉さんと乗っているけれど……妙な緊張感で変な感じだ。
「まだ気分は悪いか?」
「え……いや……」
「着いたら起こすから少し眠れ」
そう言いながら窓を少し開け、車内の換気まで気を使ってくれる。
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