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5章:疑惑の目、不穏な空気。
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しおりを挟む奥の部屋を出ると近くの従業員にトイレの場所を聞き、店の出入り口付近へと向かう。
今日はほぼ満席状態みたい。右を見ても左を見ても飲み会が行われていて楽しそうな声が飛び交っている。
階段を数段降りた先の人気のない比較的静かな場所に位置しているトイレは、男女に別れていて各1つずつしかない。たまたま誰も入っていなかったからすぐに済み、ドアを開け次に待つ人と鉢合わせて……驚いた。
「あ、棗さん」
私の次を待っていたのが、茉莉愛ちゃんだったから。
「お先……でした……」
偶然同じタイミングなんてよくある事。嫌な予感が一瞬頭を過り、変に深読みしてしまったけどそれは良くない。
そう自分に言い聞かせながら軽く会釈しながら彼女の横を通り過ぎようとした。けれど―――
「忘れ物は返して頂けましたか?」
簡単には逃がしてはくれず、階段を昇る手前で止められてしまった。
もしかして私の深読みと嫌な予感まで的中した?
この子の質問って、まさかそんな……ね。そんなはずないって信じたい。
続きを聞くのが怖かったけど、私は意を決して振り返った。
「なんの話……?」
恐る恐る訊ねると、彼女も私の方にくるりと体を向けてニコッと笑顔を見せてくる。
その笑顔はなに? 彼女が何を考えているのかわからないだけに、余計に怖い――――
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