上 下
92 / 145
4章:誕生日プレゼントは2人きり?

1

しおりを挟む

 あのあと私は、桐葉さんの謎の優しさ(?)に対して違和感を持ちながらも帰宅。翌朝その本人はどんな態度なんだろ? と思ったけれど――――

「おい。例の資料はもう出来ているのか? 早くしろと言っただろ」
「あ、はい……」

 朝の10時から顔を合わせるなり『おはよう』の挨拶もなく、あいかわらずのふてぶてしい態度でいつも通り”鬼”は絶好調だ。昨日のあの優しさは夢だったんじゃないかってくらいの違い。
 ううん、あれは絶対に夢か幻聴だったと思う。

 事務所の自分のデスクでスマホや名刺入れ、それに筆記用具や持ち帰っていたデータ資料のファイルを取り出して席につくと、そのタイミングで仁菜も今出社。

「瑠歌、おはよ」
「おはよう」

 彼女のデスクは私の右斜め前。普段は資料やら電話やらでで遮られていて話せるほどの距離はないけれど、席が近いのもあって忘れ物をしたときなんかは貸し借り出来て便利だったりする。確か、前にその話を凪にしたら『小学生みたいだな』って笑われたっけ。

「昨日はあれから大丈夫だった?」

 私の横でまわりを気にしながら小声で耳打ちする仁菜は、どうやら私に気を使ってくれているらしい。

「全然平気。……って言いたいところだけど、ちょっと複雑」
「その様子だと結構絞られたね」
「……だね」

 笑顔なんて到底無理。苦笑いしながら意気消沈しているのは、彼女にも伝わったみたい。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

Good Bye 〜愛していた人〜

鳴宮鶉子
恋愛
Good Bye 〜愛していた人〜

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

処理中です...