上 下
100 / 140
*決意と始まり

11

しおりを挟む
焦燥感に駆られ動揺しているせいか
体臭交じりの香水は
汗で更に強い匂いを発している。


「話が違うと?
 何の事ですかね、金我様」


『大声出して騒々しい』とでも言いたげに
社長は眉を細めている。


「と、惚けるな!
 社長を辞任するか
 そこの女を追放するか
 選択肢は2つだけだったはずだ!
 どうしてまだどちらもココにいるんだ!」

「それまた愚問ですね。
 ”どちらも拒否した”
 ただそれだけの事です」

「そんな事は許されないはずだ!
 この私が…
 私こそがその席に座るはずなのだ!」


額には、じわりと脂汗が滲み
幾度となくハンカチで拭き取りながらも
感情的になる金我。

彼は”確実に自分の思い通りになる”と
余程の自信を持っていた。
…にも関わらず
想定外の結末になってしまったのだから
悔しさでしかないワケだ。


「ご冗談を。
 誰が貴方等に譲りますか。
 それに…」


フッと口元だけ笑みを浮かべ嘲笑う社長が
”最後の切り札”を突きつける。


「今度はご自身の進退を心配すべきかと。」

「ど、どういう事だ」

「金我様の女性に対する
 冒涜《ぼうとく》、セクハラについては
 以前より問題視されています。
 身に覚えは、あるかと思いますが…」

「そ、それは…」

「まぁ近々その件について話がありますので
 ご承知おきを――」


仕返しという事なのか
勝ち誇った顔で社長は脅しに近く金我を追い詰めると
彼は思い当たる節を感じたのか
瞬く間に社長室から逃げ出していった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

婚約者に嫌われているようなので離れてみたら、なぜか抗議されました

花々
恋愛
メリアム侯爵家の令嬢クラリッサは、婚約者である公爵家のライアンから蔑まれている。 クラリッサは「お前の目は醜い」というライアンの言葉を鵜呑みにし、いつも前髪で顔を隠しながら過ごしていた。 そんなある日、クラリッサは王家主催のパーティーに参加する。 いつも通りクラリッサをほったらかしてほかの参加者と談笑しているライアンから離れて廊下に出たところ、見知らぬ青年がうずくまっているのを見つける。クラリッサが心配して介抱すると、青年からいたく感謝される。 数日後、クラリッサの元になぜか王家からの使者がやってきて……。 ✴︎感想誠にありがとうございます❗️ ✴︎ネタバレ見たくない人もいるかなと思いつつタグ追加してみました。後でタグ消すかもしれません❗️

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

婚約者が不倫しても平気です~公爵令嬢は案外冷静~

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢アンナの婚約者:スティーブンが不倫をして…でも、アンナは平気だった。そこに真実の愛がないことなんて、最初から分かっていたから。

処理中です...