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雪兎ノ月18日 騎士団
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「これだけの人数で影も形も捉えられないってどういうことなんですかね」
リュウトは弓の弦をいじりならぼやいた。
「見つからないってことは、向こうは恐らく、単体行動で逃げているんだろうな」
リクの言葉にハヤトは腕を組んで頷く。
「国を囲む城壁は高すぎて越えられないだろうし、出入国は全面禁止。さらに出入口の城門は50人体制で守っている。……国内にはいるはずなんだが。……ん?誰か倒れている?」
ハヤトは素早く駆け寄って声を掛けた。
しかし、返事はない。ただの屍のようだ。
「な、なんだ…この腕」
ハヤトが言葉を失っている間に他の仲間が集まって来た。
リュウトも異形の腕を見て一瞬顔をしかめたが、直ぐに死体を調べ始めた。
「闘った形跡がありますね。この人も相当派手に暴れたようです。服がまだ若干湿ってる……相手は水系の術式でも使ったんでしょうか?そして、最後は頚動脈をばっさり、ですか。この切り口は鎌か小刀でしょうか?一発で仕留めてます。かなりの手練れですね。冬も近いとはいえ、腐敗している様子もないですし、それほどの時間は経っていないと思いますが」
リュウトの報告を目を閉じて無表情で聴いていたリクだったが、なにを思ったのか、ハヤトの肩を掴んだ。
「近くにいる他の部隊を呼べ。多い方が望ましい」
「は、はい?」
ハヤトは目を白黒させる。
「この殺り方は間違いなく“3番目“のアレの殺り方だ」
ハヤトは理解したのか、表情が硬くなる。
「あの中で一番、面倒な相手と遭遇しそうな展開だな」
硬いハヤトとは対照的にリュウトは楽しげだ。
「おお、シオリですか。シオリですね!一番の難関どころですね!一番、首に金が掛かっている奴ですね!」
リクは頷く。相変わらずの無表情だ。
「おっしゃ!俄然やる気が出てきました!頑張りましょう!」
リュウトは弓の弦をいじりならぼやいた。
「見つからないってことは、向こうは恐らく、単体行動で逃げているんだろうな」
リクの言葉にハヤトは腕を組んで頷く。
「国を囲む城壁は高すぎて越えられないだろうし、出入国は全面禁止。さらに出入口の城門は50人体制で守っている。……国内にはいるはずなんだが。……ん?誰か倒れている?」
ハヤトは素早く駆け寄って声を掛けた。
しかし、返事はない。ただの屍のようだ。
「な、なんだ…この腕」
ハヤトが言葉を失っている間に他の仲間が集まって来た。
リュウトも異形の腕を見て一瞬顔をしかめたが、直ぐに死体を調べ始めた。
「闘った形跡がありますね。この人も相当派手に暴れたようです。服がまだ若干湿ってる……相手は水系の術式でも使ったんでしょうか?そして、最後は頚動脈をばっさり、ですか。この切り口は鎌か小刀でしょうか?一発で仕留めてます。かなりの手練れですね。冬も近いとはいえ、腐敗している様子もないですし、それほどの時間は経っていないと思いますが」
リュウトの報告を目を閉じて無表情で聴いていたリクだったが、なにを思ったのか、ハヤトの肩を掴んだ。
「近くにいる他の部隊を呼べ。多い方が望ましい」
「は、はい?」
ハヤトは目を白黒させる。
「この殺り方は間違いなく“3番目“のアレの殺り方だ」
ハヤトは理解したのか、表情が硬くなる。
「あの中で一番、面倒な相手と遭遇しそうな展開だな」
硬いハヤトとは対照的にリュウトは楽しげだ。
「おお、シオリですか。シオリですね!一番の難関どころですね!一番、首に金が掛かっている奴ですね!」
リクは頷く。相変わらずの無表情だ。
「おっしゃ!俄然やる気が出てきました!頑張りましょう!」
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