この世界に神などいなくとも

ゆー

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雪兎ノ月18日 イディア王国・王宮

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「いい加減出しなさいよぉ!以前の話と違うじゃないの!」
 ユリは自室の扉を手のひらで叩きながら言った。
「去年の一件(いつか書きたい願望)で私には、もう関わらないってお父様も約束してくれたじゃないの!ねぇ!」
「そんな訳にはいきません。第一皇子様が暗殺されなさった今、王位継承第2位のユリ様を放っておくわけにはいかないのです」
 扉の向こう側から兵士の声。
「いいじゃないの!去年、姉上様が亡くなり、この前は大兄上様が殺されたけど、まだ小兄上様がいらっしゃるじゃないの!」
「第二皇子様は今、王位継承1位でごさいます。ですが、万が一、第二皇子様がお亡くなりになられたら?王位はどうなる?もうユリ様しかいらっしゃいません」
「いやよ!小兄上様に万が一があった場合の予備扱いなんてまっぴらごめんよ!予備なんて絶対いやよ!それなら、今までの3番目や4番目の方がずっと良い!出して!」
 ユリは先ほどにもましてわめく。
 ・・・2番目……“予備“は、3番目以降の「別に必要ない」よりも、考え方によっては苦しくて重いものなのだ。
 3番目以降は、はっきり言って除け者扱いだが、逆に縛られる必要がないから、寂しいけど楽なものなのだ。
「予備なんて嫌!王位なんて興味ないのよぉ!」
「そんな訳にはいきません。国の為です」
 どこまでも冷たい、兵士の言葉。
 ユリは扉を爪で引っかきながら、その場にうずくまって、泣いていた。
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