この世界に神などいなくとも

ゆー

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雪兎ノ月17日 午後

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  __たい
  __世界に均衡を……。そのために破壊を……。

「メイっ!!」
   カズタカに肩を叩かれたメイは我に返る。
「え、あ……申し訳ございません!カズさん。ちょっぴり、ぼーっとしてしまいましたわ」
   メイはへこへこと頭を下げる。カズタカは困ったような笑みを浮かべ、顔を上げるように言う。
「それにしても、メイ、ここ1週間くらいぼーっとしていることが多くないか?大丈夫か?疲れてるのか?」
   心配そうにカズタカは言う。
   周りが見えていないカズタカでさえ心配するのだから、メイはかなり放心状態でいることか多いのだろう。
「疲れ……ですか。確かにこのところ、全然寝付けられていないですわ。それが原因かしら?」
「そうそう。多分そうだよ。真面目はメイの良いところだけど、気を積めるのは良くないよ。休むことも必要!試しに僕の開発した睡眠薬飲んでみるかい?まだ被験すらしてないけど」
   メイは勢いよく首を横にふる。
   被験すらしてないようなものを口にするのは躊躇われたのだ。
「そう?残念だなぁ」
   カズタカはそれほど残念ではなさそうな様子だ。
「まぁ、今度、ヒトキあたりで被験してみるか」
「え?」
   ヒトキ、と聞いたメイは怪訝そうにカズタカを見た。
「カズさん……まさか、知りませんの?」
「え?なにを?」
「さっきだって、兵士の人が協力してくれってわざわざ家まできたじゃありませんか。総合大会本戦に出た一般国民に協力を依頼しているって。話は私にきていましたが、カズさんも聞いていらっしゃいましたわよね?」
「ええ?そうだっけ?多分、全く聞いてなかった。別に我輩にきている話じゃなかったし、聞く必要ないと思ってたんだ」
 いかにも我関せずなカズタカらしい言い分である。
「カズさんのことだから、そんなことだろうとは思いましたわ。じゃあ、私が言いますわよ。ヒトキは」
 そのとき、人と人が衝突する音がして、カズタカは地面に尻をついた。
「な、なんなんだよ!?」
 カズタカは悲鳴に似たかすれ声を上げる。
「ご、ごめんっ。カズタカ!前見てなかったんだ」
 ぶつかったのはリョウだった。
 女好きのリョウによく声をかけられいるメイはいつも通り、腰の薙刀に手を掛けかけたが、髪も乱れ、明らかにリョウ自身も取り乱した様子だったので辞めた。
「どうかなさったの?リョウ」
 カズタカを引き起こしているリョウにメイは訊ねる。
「アズサを探してるんだ。アズサを。メイ達はアズサを見かけなかったか?」
「アズサちゃん?しばらく会ってないけど。アズサちゃんがどうしたの?」
「あ、いや、見てないならいいんだ」
 不安げな表情を誤魔化すようにリョウは笑った。
「ヒトキは見かけた?」
「ヒトキなんて尚更、見てませんわ。第一、普通に見かけられるのなら、兵士の方々が大勢で探していらっしゃるんですもの。とうに捕まっているはずですわ?」
 リョウも本戦進出してますから、この話は回っていますわよね、とメイは付け加えた。
「ああ、その話は知ってるよ」
 リョウは難しい顔で腕を組み何か考えていたが、不意にまた走り去って行った。
 じゃあ、また、という言葉を残して。
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