AGAIN

ゆー

文字の大きさ
上 下
3 / 13
☆本編☆

友情という永久迷路

しおりを挟む
 親友という役を、もう何年演じてるんだろう。
 距離感はいいんだが、でも本音を言えばつらいなぁ……。
 今日も今日とて、僕は頷きながらリオの恋愛トークを聴いている。
「それで、シュウトがパンケーキを作ってくれたの。それが凄く美味しくて」
 相談しやすいって言うけど、正直、とても微妙な気持ちだ。
 それでも相槌を打ち、必要であらば、その都度なだめてアドバイスまでしている自分に我ながらため息が出る。
「シュウトはお菓子作りというか、料理全般得意なんだけど」
 シュウトの話をしている時のリオはとても楽しげだ。そんな彼女を見るのは嬉しいが……、心中は複雑だ。
 相手がシュウトというのも、僕の気持ちをぐちゃぐちゃにする。シュウトは僕らの友達だ。優しくて、いつも笑顔で、気が利いて、これといった欠点がない人。僕がシュウトにまさっているところなど、数の少ない医術士であることくらいだ。
 せめて、僕の身長が一七〇……いや、一六〇センチあれば、まだ自信も持てたのに、といつもと同じ悩みを噛み締める。
「それでね、シュウトに、いっつも何か貰ってばっかりで申し訳ないなって」
「じゃあ、リオがいつものお礼にシュウトに何か作ればいいんじゃないか?それこそ、比較的作るのが簡単なクッキーとか」
 リオは首を横に振った。
「無理無理!だって、あたしなんかより、シュウトのクッキーの方がずっと美味しいし。あたし、お菓子なんて作ったことないし。下手なクッキーあげるのは恥ずかしい」
 自らの熱を冷ますようにリオは両手を赤くなった頬に当てた。
「そんなの気にする必要はないよ。こういうのは気持ちの問題だから」
 しれっとした風を装いながら僕は言う。
「そうかなぁ」
「そうだよ。シュウトは自分より下手だからって邪険にしたりはしないだろ。むしろ、喜んでくれる奴だろ?」
「……うん」
 アンタは馬鹿だな、好きな子の恋の背中を押すなんて、と自分を嗤う自分もいるのだが、こればっかりは仕様がない。
「まぁ、それでも不安なら僕も手伝ってやるからさ」
「本当!?」
 リオは不安げな表情から一転して満面の笑顔を浮かべた。彼女が笑ってくれるのが嬉しくて、つられて僕も笑って。
 けれども、そんな笑顔の裏でアンタが失恋して、僕に泣きついてくればいいのに、とすら思っている自分が、なんだか情けない。
「うん。リオに教えられる程度になら僕も作れるからね 」
 クッキーは作れるけれど、万が一、失敗したら困るから一応、図書館でお菓子作りの本を借りて予習しておこう、と考えながら言う。
「ありがとう!コウ!」
 その笑顔を僕だけのものにしたい、などと他人事のようにぼんやり思う。
 僕は、友情っていう出口の見えない永久迷路で、更に迷うのも怖いから未だに進めないんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

処理中です...