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☆本編☆
友情という永久迷路
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親友という役を、もう何年演じてるんだろう。
距離感はいいんだが、でも本音を言えばつらいなぁ……。
今日も今日とて、僕は頷きながらリオの恋愛トークを聴いている。
「それで、シュウトがパンケーキを作ってくれたの。それが凄く美味しくて」
相談しやすいって言うけど、正直、とても微妙な気持ちだ。
それでも相槌を打ち、必要であらば、その都度なだめてアドバイスまでしている自分に我ながらため息が出る。
「シュウトはお菓子作りというか、料理全般得意なんだけど」
シュウトの話をしている時のリオはとても楽しげだ。そんな彼女を見るのは嬉しいが……、心中は複雑だ。
相手がシュウトというのも、僕の気持ちをぐちゃぐちゃにする。シュウトは僕らの友達だ。優しくて、いつも笑顔で、気が利いて、これといった欠点がない人。僕がシュウトにまさっているところなど、数の少ない医術士であることくらいだ。
せめて、僕の身長が一七〇……いや、一六〇センチあれば、まだ自信も持てたのに、といつもと同じ悩みを噛み締める。
「それでね、シュウトに、いっつも何か貰ってばっかりで申し訳ないなって」
「じゃあ、リオがいつものお礼にシュウトに何か作ればいいんじゃないか?それこそ、比較的作るのが簡単なクッキーとか」
リオは首を横に振った。
「無理無理!だって、あたしなんかより、シュウトのクッキーの方がずっと美味しいし。あたし、お菓子なんて作ったことないし。下手なクッキーあげるのは恥ずかしい」
自らの熱を冷ますようにリオは両手を赤くなった頬に当てた。
「そんなの気にする必要はないよ。こういうのは気持ちの問題だから」
しれっとした風を装いながら僕は言う。
「そうかなぁ」
「そうだよ。シュウトは自分より下手だからって邪険にしたりはしないだろ。むしろ、喜んでくれる奴だろ?」
「……うん」
アンタは馬鹿だな、好きな子の恋の背中を押すなんて、と自分を嗤う自分もいるのだが、こればっかりは仕様がない。
「まぁ、それでも不安なら僕も手伝ってやるからさ」
「本当!?」
リオは不安げな表情から一転して満面の笑顔を浮かべた。彼女が笑ってくれるのが嬉しくて、つられて僕も笑って。
けれども、そんな笑顔の裏でアンタが失恋して、僕に泣きついてくればいいのに、とすら思っている自分が、なんだか情けない。
「うん。リオに教えられる程度になら僕も作れるからね 」
クッキーは作れるけれど、万が一、失敗したら困るから一応、図書館でお菓子作りの本を借りて予習しておこう、と考えながら言う。
「ありがとう!コウ!」
その笑顔を僕だけのものにしたい、などと他人事のようにぼんやり思う。
僕は、友情っていう出口の見えない永久迷路で、更に迷うのも怖いから未だに進めないんだ。
距離感はいいんだが、でも本音を言えばつらいなぁ……。
今日も今日とて、僕は頷きながらリオの恋愛トークを聴いている。
「それで、シュウトがパンケーキを作ってくれたの。それが凄く美味しくて」
相談しやすいって言うけど、正直、とても微妙な気持ちだ。
それでも相槌を打ち、必要であらば、その都度なだめてアドバイスまでしている自分に我ながらため息が出る。
「シュウトはお菓子作りというか、料理全般得意なんだけど」
シュウトの話をしている時のリオはとても楽しげだ。そんな彼女を見るのは嬉しいが……、心中は複雑だ。
相手がシュウトというのも、僕の気持ちをぐちゃぐちゃにする。シュウトは僕らの友達だ。優しくて、いつも笑顔で、気が利いて、これといった欠点がない人。僕がシュウトにまさっているところなど、数の少ない医術士であることくらいだ。
せめて、僕の身長が一七〇……いや、一六〇センチあれば、まだ自信も持てたのに、といつもと同じ悩みを噛み締める。
「それでね、シュウトに、いっつも何か貰ってばっかりで申し訳ないなって」
「じゃあ、リオがいつものお礼にシュウトに何か作ればいいんじゃないか?それこそ、比較的作るのが簡単なクッキーとか」
リオは首を横に振った。
「無理無理!だって、あたしなんかより、シュウトのクッキーの方がずっと美味しいし。あたし、お菓子なんて作ったことないし。下手なクッキーあげるのは恥ずかしい」
自らの熱を冷ますようにリオは両手を赤くなった頬に当てた。
「そんなの気にする必要はないよ。こういうのは気持ちの問題だから」
しれっとした風を装いながら僕は言う。
「そうかなぁ」
「そうだよ。シュウトは自分より下手だからって邪険にしたりはしないだろ。むしろ、喜んでくれる奴だろ?」
「……うん」
アンタは馬鹿だな、好きな子の恋の背中を押すなんて、と自分を嗤う自分もいるのだが、こればっかりは仕様がない。
「まぁ、それでも不安なら僕も手伝ってやるからさ」
「本当!?」
リオは不安げな表情から一転して満面の笑顔を浮かべた。彼女が笑ってくれるのが嬉しくて、つられて僕も笑って。
けれども、そんな笑顔の裏でアンタが失恋して、僕に泣きついてくればいいのに、とすら思っている自分が、なんだか情けない。
「うん。リオに教えられる程度になら僕も作れるからね 」
クッキーは作れるけれど、万が一、失敗したら困るから一応、図書館でお菓子作りの本を借りて予習しておこう、と考えながら言う。
「ありがとう!コウ!」
その笑顔を僕だけのものにしたい、などと他人事のようにぼんやり思う。
僕は、友情っていう出口の見えない永久迷路で、更に迷うのも怖いから未だに進めないんだ。
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