想い想う

着信

俺は何も言えないよ
どんな顔してここに居ていいかもわからない
ただ
片瀬をこのまま一人にしたくないんだ

「彼女だと思うよ
あの人」

そう言うと
片瀬は崩れるように座り込んだ

「そうだよね
だって
そうじゃなきゃ留守中に料理しないよね」

俺は頷く

「もう嫌だ
もうどうすればいいか分からない」

俺も片瀬の横に座る
そして
彼女の背中に手を当てて
慰める

「あったかい
仲山君、優しいね」

俺はにこりと笑って

「そうかな・・・片瀬の事がほっておけないだけだよ」

片瀬はこちらを見て

「なんで？」

何でって・・・

「・・・　・・・」

黙り込んでしまう俺
片瀬は見ている
涙で潤んだ瞳で
良い雰囲気
これって
しちゃっていいのかな？キス
こんな勢いで
そういう事しちゃったら
簡単な関係になってしまいそうで躊躇う

その時
俺のスマホが鳴る
鞄から取り出すと彼女からの着信だった
それだけではない
メールも何件か入っていた

そうだ
今日はデートの約束だった
一緒に彼女の部屋でゲームするんだった

こりゃオカンムリだな

小さくため息をつく

「大丈夫？」

そう聞かれて
大丈夫ではないなんて言って
片瀬を置いていけないよ
俺はスマホの電源を切った

「大丈夫」

そう言って空を見た

今日は満月か・・・
月が綺麗だった

そうしていると
片瀬のスマホがなった
片瀬は画面を見た
山田からだった

「どうしよう」

俺の方を見る

「出たら」

画面を見て固まる片瀬
俺は指を出して画面をなぞった

「もしもし」

スマホから山田の声
片瀬は固まっている
俺はスマホを片瀬の手から取って

「もしもし」

応答した

「あれっ？片瀬さんのスマホでは？」

男の俺が出て驚いているのか？
丁重な口調になる

「って、うそうそ
仲山だろ？」

ばれている
そうか、さっき彼女が俺たちを見たから
でも何で
片瀬の事は予想できそうだけど
俺ってわかるの？

「そう・・・」

こちらが戸惑う

「今どこ？」

来る気か？

「２０分くらい歩いたところ
住所わかんない」

山田は少し笑って

「迷子の子猫ちゃんたちだね」

笑っている
何だよその余裕
何でこの状況で笑えるわけ？

「どっち側に歩いた？」

山田はそれを聞き
この場所の特徴を聞くと

「ちょっと待ってて」

そう言ってこちらに来ると言った
片瀬は

「今、会いたくない」

と言ったけど
俺はこういう時に
逃げるようなことはしない方が後々良いと思うから
強引に引き止めた
しっかり話した方がいい
傷つくなら
しっかり傷ついた方がいい
目を逸らしたら
いつまでも逃げることになるから

もしもの時は
俺が付いているから

そう言っては無いけど
そう言う思いで一緒に居た