上 下
16 / 16

しおりを挟む
一次会
真田の姿を見かけなかった
探してはいたけど
分からなかった

もう15年もたったから
彼だって変わってしまって
お互いに気が付かないのかもしれない

二次会・・・
どうしようかな・・・

そう考えていると

「佐久間さん」

声をかけられて振り返ると
理玖

「健人と話した?」

私は首を横に振る
やはり来てはいるんだ

「さっき話しかけろって言ったのにな~」

えっ?

「あっ、お~い
お~い、健人!!」

理玖は大きな声で私の後ろに呼びかける
振り返れない

どうしよう・・・

「何だよ!!」

背中に声が響く
真田の声

理玖はニコニコしながら

「ほら!話せよ!!恥ずかしがるなよ~」

そう言うと理玖が手を伸ばし
私の後ろに立っていた真田を私の前に引っ張り出した

真田・・・ばつの悪そうな顔

あの頃より
髪が短く
ジャケットなんか着て
社会人らしくなってるけど
あの日のまま

「そんなんじゃねーよ」

「じゃ、何で話しかけないんだよ」

「それは…」

「ま、いいや
後は二人で…しっかり話せよ」

そう言って
真田の肩をポンポンと叩いて
理玖は去っていった

「久々」

真田がぺこりと頭を下げる

「お久しぶり」

私がそれに返すと
遠くから
理玖が私たちに

「じゃ、二次会行くぞ」

そう言って誘うから
私たちはそれから、無言のまま
みんなの後ろを並んで歩いた

二次会場所は
同級生のお母さんの経営するスナックだった
けっこう広いお店だけど
人数が多いからぎゅうぎゅうで
話し・・・できる?

「ちょっと表で話す?」

真田は外を指さすから
私は頷いてついていった

私たちは店の外の植え込みの端っこに腰かけて
話をすることにした

真田はカフェオレと無糖コーヒーを買ってきた

「どっち?」

私はカフェオレを指さす

「普通だね」

「何それ?」

「だいたいの女はそうだなって思って」

そう言うと意地悪な笑みを浮かべる

だいたいの女って
よっぽど知ってるみたい
なんだか嫉妬心が芽生える

私から言葉を出す

「元気だった?」

真田は目を合わさない

「ああ」

素っ気ない

「どうしてた?」

「普通に・・・」

なによ、よの返し
話が止まる

「・・・ ・・・」

「・・・ ・・・」

沈黙

「話、続かないね」

真田は遠くを見て
頷く

「中、入ろうか?」

何を話せば良いか
分からないよね

お話上手じゃない私達は、15年の事を
1から話すの大変だし…

私は店の中に戻ろうと立ち上がると

「俺さ・・・」

真田が話し始めた
私は何も言わずに座りなおす

「俺さ・・・お前の事好きだった
初めて好きになったやつが
親友の相手でさ、まいった
理玖ってさ
めっちゃニコニコして俺に言ったんだ
”好きになった子がいて
告白するんだ
協力して”
って
俺さ、なんも言えなくてさ
諦めようと思ってた
だけどさ
親友の彼女になったらさ
お前、俺にとってもめっちゃ身近になってさ
話しとかいっぱいしてたらさ
好きな気持ち
抑えられなくなってさ
・・・ダメだって思えば思う程
お前の事が好きになった」

・・・ ・・・

「だけど
あの日、理玖がめっちゃ泣いてるの見てさ
俺は酷い事したんだって
気付いてさ
もうやめようって思った
ま、だいぶん遅かったけどな」

・・・遅いよ・・・

「あれから
いろんな女と付き合った
だけどさ、ダメなんだわ
どんな女と付き合っても
真剣になれない
見た目
最高にいい女と付き合ったって
あん時みたく好きになれない
俺さ
俺・・・やっぱどっかでお前が諦めきれていないっていうか
こんな齢までお前を思い出す
・・・お前って・・・何?」

私だって
あの頃の恋を忘れきれないでいる
理玖と真田を傷つけた事
引きずっている

真田と私は
似ている

「理玖はお前に会いに行けって
何度も俺に言って来てさ
結城もさ、色々と口出してきたりしてさ
あいつら
お節介だから
心配されて…
だけど
何年も何年も時間だけ過ぎて
今更だよな
今更、ごめん」

頭を下げる
真田

理玖と由香ちゃん
真田と色々と話していたんだ

知らなかった

由香ちゃん
私には何も言わなかったから…

でも、
どうして良いか分からないよ

「何が言いたいのか分からない」

そう言うと
真田は立ち上がり
お店に戻ろうとする

「ちょっと待って」

私は彼の手をつかみ
それを止める

真田は振り返る

「俺も分かんねーよ
話せ話せって言われても
分かんねー

どうしたいのか?
わかんねー」

「じゃ、私の話も聞いて
私、真田が好きだった
理玖の事も好きだった
そんなんが
初めての恋だったから
だから
いまだって拗らせてる
まともに恋愛できない
また、あんな風に人を傷つけてしまうんじゃないかって
そういう人間なんじゃないかって思うと
怖くてまともに人と向き合えない」

真田はこちらを向いて

「・・・っで?お前だって意味わかんねぇ」

「っでって・・・
あの・・・責任取って」

私、本当に意味が分からない事言ってる

「責任取って・・・ください」

「敬語に直しただけたよな?」

頷く私

私、こんなに久しぶりに会って何言ってるんだろう?
彼がどんな人生を今まで歩んできたのか?
15年の空白は全く埋まっていないのに
もしかしたら
彼女がいるかも
結婚しているかも
子供いるかも
そもそも
あの頃の関係を引きずっているだけで
今の私に
興味を持てるかどうかも分からない
走りすぎた…
何も聞いていないのに何してるんだろう
どうしよう・・・

だけど
目の前にいる
あの頃と変わらない
不器用な彼が・・・私はたまらなく愛おしい

すると
真田はスタスタとこちらに来て
私を胸に抱いた

"えっ?"

「言わせてごめん」

そう言って
頭に唇をつけた

真田の臭い
懐かしくて
柔らかい気持ちになる

うっとりしてしまう

でも、
どういう意味?
どうしよう
その先が
悪い想像しかできない

真田はこちらを見る
私も真田を見上げる

「ずっと好きだった
お前の事が好きだった
誰と居ても何をしてても
お前の事ばかり思い出して・・・」

「好きだった・・・の?」

「いや、好き・・・だ」

そう言ってはにかむから
私も笑顔になって

「私たちこれからどうなるの?」

そう言うと
真田は私のオデコにキスをして
またギュッと抱きしめた

私も彼をしっかり抱きしめて
彼の温もりを感じた

心の奥に支えていたものが
サラサラと消えてなくなるのが分かった

「キスしてもいい?」

「それ、聞く?」

私は頬が熱くなるなを感じる

「いや、聞かないとさ
お前、目、閉じないだろ!」

私達は、初めてのキスを思い出して
クスクスッと笑いあった
そして、
真田は真剣な顔でこちらを見て
私も、彼を見て
ゆっくり唇を合わせ
私は目をそっと閉じた

                                                    終わり








"ガチャッ"

店の中から酔っ払いが、勢いよく出てきた
私達は直ぐに離れたけど
見られたようだ

彼は店の戸をもう一度開けて
大きな声で皆に

「真田と佐久間がチューしてるぞ!!」

と、騒ぐから
みんなが勢いよく店外に出てくる

「マジで!」

「付き合ってるの?」

「何でなんで?」

「狙ってたのに~」

「見せて見せて~」

酔っぱらいたちに囲まれ
私達はただ、照れて困るしかできない

理玖と由香ちゃんが慌てて出てきて
冷やかす皆を店の中に入れる

手際よく
しかし、ドタバタと
最後の一人を入れると
由香ちゃんはクスクスっと嬉しそうに笑って店に入っていった
理玖は最後に

「ごゆっくり~」

とふざけながら手を振って入った

「なんだよあいつ!
"ごゆっくり~"って!」

私と真田は照れながら目を合わせて笑った
そしてまた抱き合って
あの頃、叶わなかった恋のはじめを味わうように
またキスをした



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

さよなら私の愛しい人

ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。 ※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます! ※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...