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サヨナラ鏡くん
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鏡くんは
にこりと笑ってノートを閉じた
「祐貴
良い顔になったね」鏡くん
俺は横の鏡に目をやる
そうかな?
いつもと変わらない
自分の顔を見る
「ここに来て直ぐの時には
不幸を全身に巻き付けて
もう苦しくて窒息してしまいそうだって顔だったのに
今は普通にイケメンんだ」鏡くん
俺は鏡くんの満足げな表情を
少し嬉しく思う
「そろそろお開きの時間だ」鏡くん
鏡くんは名残惜しそうな表情をした
おれもそんな顔をされてしまうと
寂しいような気がした
「最後に
僕からのプレゼント
君が一番幸せだったころを
夢にしてあげるよ」鏡くん
鏡くんが手をくるくるっと回して
僕の方に差し出した
「祐貴
君はいい奴だ
そして
良い子だよ
幸せになれよ!!」鏡くん
鏡くんの声が少し遠くに消えていく
なんとなく
優しい温かいものにくるまれて
俺は目を閉じた
次に目を開くと
ぼんやり霞んでよく見えない
遠くで声がする
水の中から聞いているような
ボアボアした音のような声
目をこすりたくても
腕が思うように動かない
どうなっているんだ?
目を閉じて
耳をすます
心地の良い音
声?
暖かいな・・・
「可愛いね
やっと寝てくれた」
その声は・・・母
「昨日、眠れていないんだろ?
俺がいるから
少し寝たら」
父の声
俺は優しく柔らかい母から
大きく安定感のある父の腕に渡された
「寝顔・・・あなたそっくり」母
母は嬉しそうな声
それは幸せそのもので
今は無い
二人の幸せの中に
俺は包まれていた
・・・
・・・ ・・・
何だ?
眩しい
俺は目を覚ました
ココは?
俺は公園のベンチで眠っていたようだ
身体が痛い・・・
特に背中
あっそうだ
直ぐに横にあった公衆トイレに入る
大きな鏡には
しっかりと俺の寝起きの顔が映っている
そこには
鏡くんはいなかった
夢だったのかな?
俺はそんな不思議な感覚のまま
家に帰った
それから1年が過ぎた
夢だったと言う事にした割には
あの時に聞いた通り
俺は文から彼の事を聞かされ
ちゃんとフラれ
真奈美から告られて・・・
ちゃんとふった
やはり
夢ではなかったんじゃないかと思っていた
そう思う時は必ず
彼の微妙な癖のある笑い声を思い出した
俺は今
一人で暮らしている
父とも母とも暮らさない事を選んだ
あの日
鏡くんが俺に見せた夢
何の不安も感じることのない
揺るぎない幸せ
あの夢を最後に
俺は両親の事を
息子として束縛することをやめたんだ
だからと言って
親子の関係は変わらない
寂しくなんてない
俺たち親子は三つに分かれて
それぞれの人生を生きているけど
終わってしまったわけではなく
形が変化したんだ
変化を受け入れたんだ
そうしたら
俺たちの関係は良くなって
俺が一人で暮らす部屋を決める時
父は色々と心配して反対していたのを
父の奥さんがなだめてくれて
子供な俺にとっては
難しい手続きを手伝ってくれた
母が色々と心配して口うるさく言ってくるのを
母の恋人が優しくなだめて
兄のように愚痴を聞いてくれた
俺の自立を応援してくれた
そんなこんあがありながら
はじめられた新生活
そのおかげで
距離をとってみたおかげで
気が付いた
この四人の大人
けっこう悪くない
引っ越しの日は異例
5人で夕飯食べた
元夫婦
現在の相手
そして息子の俺
一応大人だから
みんな大人しくしていた
特に面白かったのは
夫婦だったくせに
わざとらしい敬語で話をし
よそよそしい両親は
玉子焼きにケチャップとマヨネーズをたっぷりかけて
皆にドン引きされた
長年の習慣は
簡単には改善されることではないようだ
それに
初対面なのに
けっこう馬が合って
ホラー映画の話しで盛り上がる両親の相手たちが話す内容は
食事中にするにはヘビーで
みんなに白い目で見られて
話の内容を控えめにして
それでも盛り上がっていた
変な集まりではあるけど
面白い集まりでもあった
”ピンポン”
誰か来た
俺は、読みかけの雑誌を床に置いて
玄関に行く
「はい」祐貴
ドアの向こうから男の声
「今日、隣に引っ越してきたんですが
ご挨拶に・・・」
俺はドアを開ける
ボーダーシャツの青年
・・・鏡くん・・・
えっ?
俺は驚いて硬直する
「隣に引っ越してきたカガミ ユウタと申します
19歳大学生です
宜しくお願いします」カガミ ユウタ
「どういう事?」祐貴
その質問に
彼は戸惑う
その理由は・・・後々
想像できるようになった
彼は鏡くんではないらしい
他人の空似
と言えばいいのだろうか?
カガミ ユウタ君も
俺と会ったのが初めてでない気がしてると言って
すぐに仲もよくなった
そして
彼は
あの笑い方をする
彼が笑う度に俺はなつかしくて
嬉しかくなった
俺は彼にあの不思議な経験を話した
笑われてしまいそうな
夢のような話に
彼は真顔で
「そっか
俺と祐貴はそこで出会っていたんだ
だから
しはじめて会った時
懐かしい気持ちになったのかな」カガミ ユウタ
と言って
独特な笑い方をした
神様が
彼をアバターにして
俺の前に現れたと言う事なのかもしれない
俺はそう考えるようにした
やはり
あの日、俺が見て感じたことは
夢ではなかった
鏡くんはあの公衆トイレで
おれの悩みに寄り添い
笑ってくれたんだ
ありがとう
鏡くん
俺は今、孤独ではないよ 終わり
にこりと笑ってノートを閉じた
「祐貴
良い顔になったね」鏡くん
俺は横の鏡に目をやる
そうかな?
いつもと変わらない
自分の顔を見る
「ここに来て直ぐの時には
不幸を全身に巻き付けて
もう苦しくて窒息してしまいそうだって顔だったのに
今は普通にイケメンんだ」鏡くん
俺は鏡くんの満足げな表情を
少し嬉しく思う
「そろそろお開きの時間だ」鏡くん
鏡くんは名残惜しそうな表情をした
おれもそんな顔をされてしまうと
寂しいような気がした
「最後に
僕からのプレゼント
君が一番幸せだったころを
夢にしてあげるよ」鏡くん
鏡くんが手をくるくるっと回して
僕の方に差し出した
「祐貴
君はいい奴だ
そして
良い子だよ
幸せになれよ!!」鏡くん
鏡くんの声が少し遠くに消えていく
なんとなく
優しい温かいものにくるまれて
俺は目を閉じた
次に目を開くと
ぼんやり霞んでよく見えない
遠くで声がする
水の中から聞いているような
ボアボアした音のような声
目をこすりたくても
腕が思うように動かない
どうなっているんだ?
目を閉じて
耳をすます
心地の良い音
声?
暖かいな・・・
「可愛いね
やっと寝てくれた」
その声は・・・母
「昨日、眠れていないんだろ?
俺がいるから
少し寝たら」
父の声
俺は優しく柔らかい母から
大きく安定感のある父の腕に渡された
「寝顔・・・あなたそっくり」母
母は嬉しそうな声
それは幸せそのもので
今は無い
二人の幸せの中に
俺は包まれていた
・・・
・・・ ・・・
何だ?
眩しい
俺は目を覚ました
ココは?
俺は公園のベンチで眠っていたようだ
身体が痛い・・・
特に背中
あっそうだ
直ぐに横にあった公衆トイレに入る
大きな鏡には
しっかりと俺の寝起きの顔が映っている
そこには
鏡くんはいなかった
夢だったのかな?
俺はそんな不思議な感覚のまま
家に帰った
それから1年が過ぎた
夢だったと言う事にした割には
あの時に聞いた通り
俺は文から彼の事を聞かされ
ちゃんとフラれ
真奈美から告られて・・・
ちゃんとふった
やはり
夢ではなかったんじゃないかと思っていた
そう思う時は必ず
彼の微妙な癖のある笑い声を思い出した
俺は今
一人で暮らしている
父とも母とも暮らさない事を選んだ
あの日
鏡くんが俺に見せた夢
何の不安も感じることのない
揺るぎない幸せ
あの夢を最後に
俺は両親の事を
息子として束縛することをやめたんだ
だからと言って
親子の関係は変わらない
寂しくなんてない
俺たち親子は三つに分かれて
それぞれの人生を生きているけど
終わってしまったわけではなく
形が変化したんだ
変化を受け入れたんだ
そうしたら
俺たちの関係は良くなって
俺が一人で暮らす部屋を決める時
父は色々と心配して反対していたのを
父の奥さんがなだめてくれて
子供な俺にとっては
難しい手続きを手伝ってくれた
母が色々と心配して口うるさく言ってくるのを
母の恋人が優しくなだめて
兄のように愚痴を聞いてくれた
俺の自立を応援してくれた
そんなこんあがありながら
はじめられた新生活
そのおかげで
距離をとってみたおかげで
気が付いた
この四人の大人
けっこう悪くない
引っ越しの日は異例
5人で夕飯食べた
元夫婦
現在の相手
そして息子の俺
一応大人だから
みんな大人しくしていた
特に面白かったのは
夫婦だったくせに
わざとらしい敬語で話をし
よそよそしい両親は
玉子焼きにケチャップとマヨネーズをたっぷりかけて
皆にドン引きされた
長年の習慣は
簡単には改善されることではないようだ
それに
初対面なのに
けっこう馬が合って
ホラー映画の話しで盛り上がる両親の相手たちが話す内容は
食事中にするにはヘビーで
みんなに白い目で見られて
話の内容を控えめにして
それでも盛り上がっていた
変な集まりではあるけど
面白い集まりでもあった
”ピンポン”
誰か来た
俺は、読みかけの雑誌を床に置いて
玄関に行く
「はい」祐貴
ドアの向こうから男の声
「今日、隣に引っ越してきたんですが
ご挨拶に・・・」
俺はドアを開ける
ボーダーシャツの青年
・・・鏡くん・・・
えっ?
俺は驚いて硬直する
「隣に引っ越してきたカガミ ユウタと申します
19歳大学生です
宜しくお願いします」カガミ ユウタ
「どういう事?」祐貴
その質問に
彼は戸惑う
その理由は・・・後々
想像できるようになった
彼は鏡くんではないらしい
他人の空似
と言えばいいのだろうか?
カガミ ユウタ君も
俺と会ったのが初めてでない気がしてると言って
すぐに仲もよくなった
そして
彼は
あの笑い方をする
彼が笑う度に俺はなつかしくて
嬉しかくなった
俺は彼にあの不思議な経験を話した
笑われてしまいそうな
夢のような話に
彼は真顔で
「そっか
俺と祐貴はそこで出会っていたんだ
だから
しはじめて会った時
懐かしい気持ちになったのかな」カガミ ユウタ
と言って
独特な笑い方をした
神様が
彼をアバターにして
俺の前に現れたと言う事なのかもしれない
俺はそう考えるようにした
やはり
あの日、俺が見て感じたことは
夢ではなかった
鏡くんはあの公衆トイレで
おれの悩みに寄り添い
笑ってくれたんだ
ありがとう
鏡くん
俺は今、孤独ではないよ 終わり
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