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3章 ― 急追するモノ
第51話-やっぱり行こう③
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「こちら頼まれておりました試作品です」
翌々日。
朝食を取り終わって、リビングの暖炉前のソファーでアサとヴァル、シオン達も入れて全員でお茶を取っていたところ、エンポロスが頼んでいた品をもって訪ねてきた。
ソファー前のテーブルに広げられたのは、ヨルから見れば見たことのあるタイプのメイド服。この世界では見たことが無いフリルの付いた可愛らしいメイド服だった。
「まぁこれを私達が……?」
シオンの母テコアがメイド服を両手で広げて、可愛すぎて似合わないと遠慮しているのだが、そこはこの家で働くための制服だと思って諦めようとシオンが説得している。
「うわーかわいいーこんな可愛い制服でお掃除とかしてもいいんですかっ?」
妹のアリエルは逆にノリノリだった。
黒のベースに白のエプロンとフリルが随所にあしらわれたデザインと、同じくレースが装飾されたホワイトブリム。
ヨルが見ても、アリエルの金髪にはよく似合うだろうなと思う。
「ヨル、私の分もあるのですかっ」
「ちゃんと用意してもらったよ。まだ試作品だからサイズとかはこれから詰めると思うんだけど」
一応五着用意しておいたので、ヴァルもすっかり乗り気だし好きにさせようと思ったので、ヴァルの分のサイズ直しもお願いしようとエンポロスに視線を向けると、その視線に反応したエンポロスもニッコリと笑って黙って頷いた。
「ヨルさん、こちらは別で頼まれていたヘアピンですが、この様な形で良かったでしょうか?」
エンポロスが取り出した革袋には、ヨルが見たことのる形状のピンが数十本詰まっていた。
「おおー、いいですね! 形も硬さも丁度良いと思いますっ!」
ヨルがアメピンのような形のヘアピンを手に取って、一本を前髪に留める。
「おお、ヨルそのピン使いやすそうだな!」
「確かに前髪とか留められるってすごく便利そうです! 私にも一本ほしいです!」
よく運動するからだろうか、アサが前髪を留めるためにほしいと騒ぎ出し、同じショートカットのアリエルも欲しいと言うので作ってよかったと思ったヨルは、エンポロスに追加でお願いをする。
「これで形状はいいので、後はこの色とか、この辺に花の飾りとかのパターンを作れば需要は広がると思います! あ、一応この黒バージョンもそのまま作って欲しいです」
「承知いたしました。こちらも私共の商品に加えさせて頂ければと思います」
そういったエンポロスは、ヨルが既に何度か見た契約書を差し出してくる。
ヨルは色々諦めた様子でざっと眺めた契約書にサインをした。
「ヨル、済まないが、多分これ陛下も欲しがると思うから融通してもらえるだろうか?」
「お、よかったわエンポロスさん、女王陛下が早速買っていただけるそうよ」
「おおっ……それでは最優先で最高品質のものをまずは作りましょう。出来たものは一度こちらにお持ちすれば?」
「えぇ、私はいないと思うので、基本こちらのヴァルに言伝てください。ヴァルもお願いしても良い?」
「はいっ!任せてください」
一旦試作品はすべて貰ったのでヨルが十本確保して、残りは五人に渡す。
「完成品が出来たら届けてもらうから、そしたら好きなだけ使っていいから」
ピンなんて消耗品だと思って使ってもらって構わないと思っているヨルは、エンポロスにメイド用に幾つか欲しいと伝えておく事を忘れなかった。
――――――――――――――――――――
「それじゃ、行ってきます!」
「ヨル!早く帰ってきてくださいね!」
「お気をつけて!」
三日後のお昼前、メイド服姿のヴァルとシオンたち、見送りに来てくれたアサに、ヨルは久しぶりの「行ってきます」をみんなに伝え、家を出たのだった。
――――――――――――――――――――
★人物紹介(三章中間)
■ヨル・ノトー (17) / ヨルズ
種族:セリアンスロープ(猫)
桃色の髪でショートカット。猫耳としっぽがチャームポイント。
前々世では当時の勇者と兄ダグに罠にはめられ消滅した大地神ヨルズ。
誘拐された女王を救い出し、王都一等地の大豪邸を下賜された。
・武器 [ヴェントゥス・グローブ]
補助魔法「瞬間加速」と「重量」が付与されている。
・防具[春を感じる苺のイヤリング]
補助魔法「超加速」が付与されている。
・防具[にゃんこのチョーカー]
魔法「超音波衝撃」が付与されている。
・防具[ピンクブロッサム・ベルト(黒)]
・防具[ブーツ/鹵獲品]
・装飾[進む道を見つめるモノ]
性能不明
・装飾 [ヨルちゃんの嬉し恥ずかし秘密の袋]
神法「次元接続」が付与されている。
・体技 [尖晶弾]
衝撃を広範囲にぶつける技。補助魔法「攻撃分裂」を付与して発動する。
・体技 [流紋撃]
超高速の一撃。補助魔法「瞬間加速」を付与して発動する。
・体技 [玄武撃]
衝撃を連鎖的に発生させる技。補助魔法「流星崩岩」を付与して発動する。
・体技 [琥珀衝]
一瞬で数十発の打撃をぶつける技。
・体技 [紅玉髄牙]
防御無視の貫通攻撃。
・神法[大地ノ棺]
■ヴァーラル・レンノ (16)
種族:人間
ヨルはヴァルと呼んでいるが、元は「白姫」と呼ばれているティエラ教会の神子。
真面目な性格だが友達が居ないためか、初めて合う人への興味は強い。
ウェーブが掛かった銀髪ロングヘアのほわほわとした雰囲気。
■フレイア・スヴァルトリング (18)
種族:人間?(神人族の子孫)
スヴァルトリング王国の女王で十八歳。
酔っ払ったヨルが救い出し、ホテルに連れ込んだ。
柔らかいベッドより硬い床で寝るほうが落ち着くそうだ。
■アサヒナ・フォン・フィンブル (17)
種族:人間?(神人族の子孫)
スヴァルトリング王国 女王近衛騎士団の団長。
赤髪ロングでスラッとしたお姉さんタイプの十九歳。
霜を司る神ペストラが人と交わり生まれた一族の末裔。
★ヨル家の人々
■シオン・アスター (20)
種族:人間
元ティエラ教会執行部の暗殺者。
性格は超弱気。
ヨルに返り討ちにされ、教会を脱退して寝返った。
■テコア・アスター
種族:人間
シオンの母。
■アリエル ・アスター(15)
種族:人間
シオンの妹。
★街の人々
■アイリーン・テウメソス
種族:セリアンスロープ(狐)
王都の冒険者ギルド受付嬢。
スラリと伸びた金髪と豊満な肉体と凶悪な性格にファンが多い。
テウメソスという狐の神獣が人と交わり生まれた一族。
■エイブラム
種族:人間
ガラムの冒険者ギルドサブマスター。インテリ系メガネ。
ティエラ教会の人間で、ヨル暗殺を企てたらしい人物。
突然仕事をやめシンドリに向かったらしい。
■エンポロス
種族:人間
行商人の老商人。ヨルの盗賊の連行を手伝った縁で色々相談することに。
王都に大きな店を構えている凄腕商人。
翌々日。
朝食を取り終わって、リビングの暖炉前のソファーでアサとヴァル、シオン達も入れて全員でお茶を取っていたところ、エンポロスが頼んでいた品をもって訪ねてきた。
ソファー前のテーブルに広げられたのは、ヨルから見れば見たことのあるタイプのメイド服。この世界では見たことが無いフリルの付いた可愛らしいメイド服だった。
「まぁこれを私達が……?」
シオンの母テコアがメイド服を両手で広げて、可愛すぎて似合わないと遠慮しているのだが、そこはこの家で働くための制服だと思って諦めようとシオンが説得している。
「うわーかわいいーこんな可愛い制服でお掃除とかしてもいいんですかっ?」
妹のアリエルは逆にノリノリだった。
黒のベースに白のエプロンとフリルが随所にあしらわれたデザインと、同じくレースが装飾されたホワイトブリム。
ヨルが見ても、アリエルの金髪にはよく似合うだろうなと思う。
「ヨル、私の分もあるのですかっ」
「ちゃんと用意してもらったよ。まだ試作品だからサイズとかはこれから詰めると思うんだけど」
一応五着用意しておいたので、ヴァルもすっかり乗り気だし好きにさせようと思ったので、ヴァルの分のサイズ直しもお願いしようとエンポロスに視線を向けると、その視線に反応したエンポロスもニッコリと笑って黙って頷いた。
「ヨルさん、こちらは別で頼まれていたヘアピンですが、この様な形で良かったでしょうか?」
エンポロスが取り出した革袋には、ヨルが見たことのる形状のピンが数十本詰まっていた。
「おおー、いいですね! 形も硬さも丁度良いと思いますっ!」
ヨルがアメピンのような形のヘアピンを手に取って、一本を前髪に留める。
「おお、ヨルそのピン使いやすそうだな!」
「確かに前髪とか留められるってすごく便利そうです! 私にも一本ほしいです!」
よく運動するからだろうか、アサが前髪を留めるためにほしいと騒ぎ出し、同じショートカットのアリエルも欲しいと言うので作ってよかったと思ったヨルは、エンポロスに追加でお願いをする。
「これで形状はいいので、後はこの色とか、この辺に花の飾りとかのパターンを作れば需要は広がると思います! あ、一応この黒バージョンもそのまま作って欲しいです」
「承知いたしました。こちらも私共の商品に加えさせて頂ければと思います」
そういったエンポロスは、ヨルが既に何度か見た契約書を差し出してくる。
ヨルは色々諦めた様子でざっと眺めた契約書にサインをした。
「ヨル、済まないが、多分これ陛下も欲しがると思うから融通してもらえるだろうか?」
「お、よかったわエンポロスさん、女王陛下が早速買っていただけるそうよ」
「おおっ……それでは最優先で最高品質のものをまずは作りましょう。出来たものは一度こちらにお持ちすれば?」
「えぇ、私はいないと思うので、基本こちらのヴァルに言伝てください。ヴァルもお願いしても良い?」
「はいっ!任せてください」
一旦試作品はすべて貰ったのでヨルが十本確保して、残りは五人に渡す。
「完成品が出来たら届けてもらうから、そしたら好きなだけ使っていいから」
ピンなんて消耗品だと思って使ってもらって構わないと思っているヨルは、エンポロスにメイド用に幾つか欲しいと伝えておく事を忘れなかった。
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「それじゃ、行ってきます!」
「ヨル!早く帰ってきてくださいね!」
「お気をつけて!」
三日後のお昼前、メイド服姿のヴァルとシオンたち、見送りに来てくれたアサに、ヨルは久しぶりの「行ってきます」をみんなに伝え、家を出たのだった。
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★人物紹介(三章中間)
■ヨル・ノトー (17) / ヨルズ
種族:セリアンスロープ(猫)
桃色の髪でショートカット。猫耳としっぽがチャームポイント。
前々世では当時の勇者と兄ダグに罠にはめられ消滅した大地神ヨルズ。
誘拐された女王を救い出し、王都一等地の大豪邸を下賜された。
・武器 [ヴェントゥス・グローブ]
補助魔法「瞬間加速」と「重量」が付与されている。
・防具[春を感じる苺のイヤリング]
補助魔法「超加速」が付与されている。
・防具[にゃんこのチョーカー]
魔法「超音波衝撃」が付与されている。
・防具[ピンクブロッサム・ベルト(黒)]
・防具[ブーツ/鹵獲品]
・装飾[進む道を見つめるモノ]
性能不明
・装飾 [ヨルちゃんの嬉し恥ずかし秘密の袋]
神法「次元接続」が付与されている。
・体技 [尖晶弾]
衝撃を広範囲にぶつける技。補助魔法「攻撃分裂」を付与して発動する。
・体技 [流紋撃]
超高速の一撃。補助魔法「瞬間加速」を付与して発動する。
・体技 [玄武撃]
衝撃を連鎖的に発生させる技。補助魔法「流星崩岩」を付与して発動する。
・体技 [琥珀衝]
一瞬で数十発の打撃をぶつける技。
・体技 [紅玉髄牙]
防御無視の貫通攻撃。
・神法[大地ノ棺]
■ヴァーラル・レンノ (16)
種族:人間
ヨルはヴァルと呼んでいるが、元は「白姫」と呼ばれているティエラ教会の神子。
真面目な性格だが友達が居ないためか、初めて合う人への興味は強い。
ウェーブが掛かった銀髪ロングヘアのほわほわとした雰囲気。
■フレイア・スヴァルトリング (18)
種族:人間?(神人族の子孫)
スヴァルトリング王国の女王で十八歳。
酔っ払ったヨルが救い出し、ホテルに連れ込んだ。
柔らかいベッドより硬い床で寝るほうが落ち着くそうだ。
■アサヒナ・フォン・フィンブル (17)
種族:人間?(神人族の子孫)
スヴァルトリング王国 女王近衛騎士団の団長。
赤髪ロングでスラッとしたお姉さんタイプの十九歳。
霜を司る神ペストラが人と交わり生まれた一族の末裔。
★ヨル家の人々
■シオン・アスター (20)
種族:人間
元ティエラ教会執行部の暗殺者。
性格は超弱気。
ヨルに返り討ちにされ、教会を脱退して寝返った。
■テコア・アスター
種族:人間
シオンの母。
■アリエル ・アスター(15)
種族:人間
シオンの妹。
★街の人々
■アイリーン・テウメソス
種族:セリアンスロープ(狐)
王都の冒険者ギルド受付嬢。
スラリと伸びた金髪と豊満な肉体と凶悪な性格にファンが多い。
テウメソスという狐の神獣が人と交わり生まれた一族。
■エイブラム
種族:人間
ガラムの冒険者ギルドサブマスター。インテリ系メガネ。
ティエラ教会の人間で、ヨル暗殺を企てたらしい人物。
突然仕事をやめシンドリに向かったらしい。
■エンポロス
種族:人間
行商人の老商人。ヨルの盗賊の連行を手伝った縁で色々相談することに。
王都に大きな店を構えている凄腕商人。
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