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1章 ― 旅立ち
第10話-お風呂は心の
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アルに教えてもらったおすすめの宿に向かう途中のよろず屋でヨルは部屋着と普通使いに白シャツと赤色のスカート、裁縫道具を購入をした。
(この尻尾の部分を加工するのが面倒なんだよね……セリアンスロープ用の専門店とかあれば便利なんだけど)
――――――――――――――――――――
背中にリュックを背負い片手に紙袋を抱えて、目的の宿屋に着く頃には夕方近くになっていた。宿屋の看板に引っ掛けられているランプにも明かりが灯っており、木製の扉に手をかけカチャリと開けると、静かな雰囲気のロビーがあった。
「すいませーん」
カウンターの奥に声をかけると「はーい」と女性の声が聞こえ、階段を降りる音が聞こえてきた。
「お待たせいたしました。モルフェ亭へようこそ! ご宿泊でしょうか?」
奥から現れたのは女将さんだろうか、ブラウンの髪を三編みにして肩から前に垂らし、エプロンを付けた優しそうな女性だった。
「はい、何泊か泊まりたいんですが」
「一泊お風呂付きで銀貨五枚になります。朝食などは別料金で頂いておりますが、これは直前にお申し付けいただいても結構です」
「じゃぁ……とりあえず三……いえ五泊でお願いできますか? 食事は必要なときは別で注文しますね」
ヨルは早速、作ってもらったばかりの傭兵ギルドメンバー証と先程の買い物のお釣りから半金貨を一枚取り出しカウンターに乗せる。
「その若さで傭兵さんなのね、凄いわ! はい、じゃぁこれお釣りね」
そう言って銀貨を二十五枚を数えてカウンターの上に並べてくれる。
「それと、お部屋は二階の一番奥を使っていいわ、一番広い部屋よ。お風呂も無料でいいわ、好きな時間に入って頂戴」
ニコッと笑いながらウインクをし、女将さんが鍵を渡してくれた。
――――――――――――――――――――
ベッドとクローゼット、それと簡素なデスクが備え付けられた、シンプルながらも居心地の良さそうな部屋だった。
窓が南と東に付いており、日当たりもよさそうだ。
ヨルはベッドにダイブしたい気持ちをぐっと堪え、デスクの上にさっきのお釣りや、小物をじゃらじゃらと並べる。
(やっぱりお金って微妙に重くて邪魔なんだよなー……)
余談だが、この世界では印刷技術もそこまで発展しておらず、取引では貨幣が用いられている。
金本位制でいわゆる金貨が一番価値があり、アウルと呼ばれている。半分に割れた形をした金貨が"半金貨"で金貨の半分、銀貨五十枚分。
補助貨幣としては"銀貨"と"銅貨"となっている。
(そう思うとこの傭兵ギルドメンバー証の銀行機能はありがたい)
机の上に胸ポケットから取り出したメンバー証を並べる。
『ヨル・ノトー 十七歳 傭兵ギルドがこの者の身分を保証する』と書かれている。
続けてリュックから荷物を取り出しデスク脇の床に一つづつ整理しながら並べてゆく。ランタン、ロープに水筒。それとナイフなどの細々とした道具類。替えの服は途中で川で洗ってあるが、せっかく宿に泊まったのでまとめて洗濯をお願いすることにする。
ついでに窓のカーテンを閉め、ブーツを脱いで、脛当てを外す。手にはめていたグローブはアレに溶かされてしまったので替えを探さないといけない。胸当てを外し、シャツも脱い下着姿になる。
防具類はあとでメンテナスするので、そのままデスクの隣に並べておき脱いだ服は麻袋に詰めて紐でキュッと縛る。紙袋を開き、先程買ったばかりの部屋着に袖を通した。
(もう少しTシャツっぽいのがあればば動きやすいんだけど)
少しゴワゴワするが、それなりに着心地はよく、このまま寝てても気にならなさそうだった。
(あっ、そういえばお風呂があるんだった! お風呂!!)
ヨルはそそくさとタオルと買ったばかりの服を持ち、一階に降りてお風呂に向かった。
――――――――――――――――――――
まだ少し早い時間のためか、お風呂はヨルの貸し切りだった
「ふぁぁぁ~……思ってたより広い~……」
木造りで六畳ぐらいの浴室。そのの半分ぐらいが浴槽となっていた。
(これどうやって水とか……あぁ井戸から汲んで火魔法で温めているのかな?)
壁から突き出たパイプが外につながっているようで、覗いてみるとその先には井戸があるようだった。
髪を洗い、尻尾を丁寧に洗ってから身体を洗っていく。
タオルに石鹸をつけてもみもみするが、あまり泡立たない。
あれ以来、たまにこの世界の"普通"ってどうだったかな?と思ってしまうことがありるのは仕方がないことだとヨルは思う。石鹸の泡立ちが悪いのはこの世界では普通だった。
(あるだけ感謝感謝。お風呂もない文化だったら、入浴文化の普及から頑張らなきゃならないところだったわ)
足の指の間を手で洗い、洗面器で浴槽からお湯を汲んで流し終えてから、脱衣所に誰も居ないことを確認し湯船に飛び込んだ。
「はぁぁぁぁ~……きもちいい……」
手足をぐっと伸ばしてから脱力し、風呂の縁にタオルを置き頭を乗せる。
もうこのまま寝てしまいたいという気持ちを我慢して、目を閉じながら湯船でゆらゆらと温まる。
――――――――――――――――――――
脱いだ服をまとめて女将さんに洗濯を頼み、水をもらってから部屋に戻ってきたヨルは、そのままベッドにダイブし猫のようにくるんと丸まった。
(はぁぁ~久しぶりのベッドだー……気持ちいいー……お風呂も気持ちよかったし……はふ…………)
ベッドの上で横向きに丸まったまま尻尾と足をぴーんと伸ばして伸びをする。
「んにーー…………」
そして暫くもぞもぞとしていたが、そのまま動かなくなった。
(この尻尾の部分を加工するのが面倒なんだよね……セリアンスロープ用の専門店とかあれば便利なんだけど)
――――――――――――――――――――
背中にリュックを背負い片手に紙袋を抱えて、目的の宿屋に着く頃には夕方近くになっていた。宿屋の看板に引っ掛けられているランプにも明かりが灯っており、木製の扉に手をかけカチャリと開けると、静かな雰囲気のロビーがあった。
「すいませーん」
カウンターの奥に声をかけると「はーい」と女性の声が聞こえ、階段を降りる音が聞こえてきた。
「お待たせいたしました。モルフェ亭へようこそ! ご宿泊でしょうか?」
奥から現れたのは女将さんだろうか、ブラウンの髪を三編みにして肩から前に垂らし、エプロンを付けた優しそうな女性だった。
「はい、何泊か泊まりたいんですが」
「一泊お風呂付きで銀貨五枚になります。朝食などは別料金で頂いておりますが、これは直前にお申し付けいただいても結構です」
「じゃぁ……とりあえず三……いえ五泊でお願いできますか? 食事は必要なときは別で注文しますね」
ヨルは早速、作ってもらったばかりの傭兵ギルドメンバー証と先程の買い物のお釣りから半金貨を一枚取り出しカウンターに乗せる。
「その若さで傭兵さんなのね、凄いわ! はい、じゃぁこれお釣りね」
そう言って銀貨を二十五枚を数えてカウンターの上に並べてくれる。
「それと、お部屋は二階の一番奥を使っていいわ、一番広い部屋よ。お風呂も無料でいいわ、好きな時間に入って頂戴」
ニコッと笑いながらウインクをし、女将さんが鍵を渡してくれた。
――――――――――――――――――――
ベッドとクローゼット、それと簡素なデスクが備え付けられた、シンプルながらも居心地の良さそうな部屋だった。
窓が南と東に付いており、日当たりもよさそうだ。
ヨルはベッドにダイブしたい気持ちをぐっと堪え、デスクの上にさっきのお釣りや、小物をじゃらじゃらと並べる。
(やっぱりお金って微妙に重くて邪魔なんだよなー……)
余談だが、この世界では印刷技術もそこまで発展しておらず、取引では貨幣が用いられている。
金本位制でいわゆる金貨が一番価値があり、アウルと呼ばれている。半分に割れた形をした金貨が"半金貨"で金貨の半分、銀貨五十枚分。
補助貨幣としては"銀貨"と"銅貨"となっている。
(そう思うとこの傭兵ギルドメンバー証の銀行機能はありがたい)
机の上に胸ポケットから取り出したメンバー証を並べる。
『ヨル・ノトー 十七歳 傭兵ギルドがこの者の身分を保証する』と書かれている。
続けてリュックから荷物を取り出しデスク脇の床に一つづつ整理しながら並べてゆく。ランタン、ロープに水筒。それとナイフなどの細々とした道具類。替えの服は途中で川で洗ってあるが、せっかく宿に泊まったのでまとめて洗濯をお願いすることにする。
ついでに窓のカーテンを閉め、ブーツを脱いで、脛当てを外す。手にはめていたグローブはアレに溶かされてしまったので替えを探さないといけない。胸当てを外し、シャツも脱い下着姿になる。
防具類はあとでメンテナスするので、そのままデスクの隣に並べておき脱いだ服は麻袋に詰めて紐でキュッと縛る。紙袋を開き、先程買ったばかりの部屋着に袖を通した。
(もう少しTシャツっぽいのがあればば動きやすいんだけど)
少しゴワゴワするが、それなりに着心地はよく、このまま寝てても気にならなさそうだった。
(あっ、そういえばお風呂があるんだった! お風呂!!)
ヨルはそそくさとタオルと買ったばかりの服を持ち、一階に降りてお風呂に向かった。
――――――――――――――――――――
まだ少し早い時間のためか、お風呂はヨルの貸し切りだった
「ふぁぁぁ~……思ってたより広い~……」
木造りで六畳ぐらいの浴室。そのの半分ぐらいが浴槽となっていた。
(これどうやって水とか……あぁ井戸から汲んで火魔法で温めているのかな?)
壁から突き出たパイプが外につながっているようで、覗いてみるとその先には井戸があるようだった。
髪を洗い、尻尾を丁寧に洗ってから身体を洗っていく。
タオルに石鹸をつけてもみもみするが、あまり泡立たない。
あれ以来、たまにこの世界の"普通"ってどうだったかな?と思ってしまうことがありるのは仕方がないことだとヨルは思う。石鹸の泡立ちが悪いのはこの世界では普通だった。
(あるだけ感謝感謝。お風呂もない文化だったら、入浴文化の普及から頑張らなきゃならないところだったわ)
足の指の間を手で洗い、洗面器で浴槽からお湯を汲んで流し終えてから、脱衣所に誰も居ないことを確認し湯船に飛び込んだ。
「はぁぁぁぁ~……きもちいい……」
手足をぐっと伸ばしてから脱力し、風呂の縁にタオルを置き頭を乗せる。
もうこのまま寝てしまいたいという気持ちを我慢して、目を閉じながら湯船でゆらゆらと温まる。
――――――――――――――――――――
脱いだ服をまとめて女将さんに洗濯を頼み、水をもらってから部屋に戻ってきたヨルは、そのままベッドにダイブし猫のようにくるんと丸まった。
(はぁぁ~久しぶりのベッドだー……気持ちいいー……お風呂も気持ちよかったし……はふ…………)
ベッドの上で横向きに丸まったまま尻尾と足をぴーんと伸ばして伸びをする。
「んにーー…………」
そして暫くもぞもぞとしていたが、そのまま動かなくなった。
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