人形弟子の学習帳

シキサイ サキ

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2章 旅行から入学試験まで

16話 しゃべる食器とメインストリート

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「僕の名前はアレン・フォートレス
 はじめまして、どうぞよろしくお願いします」

『あらあら可愛いお坊ちゃん~、私の姿を見ても驚かないなんて
 勇気があるのね、度胸があるのね

 まるで勇者や冒険家のよう、夢が溢れる~♪』

「この浮遊都市に来るために乗車した、空中鉄道での宿泊部屋で
 貴方によく似た方とたくさんお話したので

 驚きよりも先に、懐かしさを覚えます」


実際、その通りでした。

銀色のクローシュから聞こえた、軽快な返事を皮切りに
アレン達の目の前へと、飛び出してきた謎の物体は……

赤い唇の、コミカルなイラストを型取った
手の平サイズの、小さな手鏡だったのです。

そして、その姿は
数日前にアレンやライルが、散々、目にして耳にした

空中鉄道の旅行にて、朝も昼も夜も止むことも無く、賑やかなおしゃべりを続けていた
宿泊部屋の守り手、おしゃべりな人工精霊のチャッティーを思い起こさせる見た目そのもの。

あの時は、木製の壁から浮きき上がる、やけにリアルな大きめの唇
そして今回は、鏡の裏側にペイントされた、ポップな絵柄の平たい唇なのですから

既に散々、チャッティーとの交流を深めたアレンにとって
今更、食器の中から、唇が1枚や2枚飛び出してきた所で

驚きどころか、衝撃どころか

まずはじめに、あの愉快な語り手を思い出してしまい
どの感情よりもまず先に、親しみや懐かしさを感じざるを得ないのです。


『あらあら物知りさんなのね

 勇気からくる肝の座り方じゃなくて~
 経験から学んだ予備知識だったの~ちょっとジェラシ~

 でもいいの、全然いいの、だってこれから
 私は貴方に質問をして、知らない貴方を知っていく~♪
 貴方は私の料理を食べて、私を通して己を知る~♪

 そうすれば全然全然OK~OK~みんなハッピー、私もハッピー

 それじゃあ、いくわよ少年~準備は良い~? 』

「はい、僕は食事が好きなので
 いつでもどこでも食べられます、さっそくおねがいいたします

 あ、でも、カラシはちょっと……やめてほしいです」

こうして、右や左で、飛び出してきた唇に悲鳴をあげる二人よりも少し早く

愉快で陽気な、唇型の小さな手鏡
ミラーリング・テーブルウェアによる、怒涛の質問責めがはじまりました。

『貴方がこの魔法学校で学びたい事は何かしら?』

「生活魔法の習得が主な目的です

 でも、それだけでなく、他にも色々な魔法や他の事も
 もっと、たくさん知りたいと思っています

 魔法の学習や習得だけでなく、好きや大切を増やす
 拠り所になるような存在を探すのも、僕の使命のうちのようなので」

『あらあら、たくさん~目標がいっぱいでやる事いっぱい!

 では、その好きな物っていうのは
 今の時点では何があるのかしら? なんでもいいのよ? 』

「美味しい物、食事が好きです
 それに本を読むことも好きです

 寝る前に師匠が童話や絵本を読んでくださいます」

『あらあら、すてき~♪ 優しいお師匠様なのね~

 坊やはその中でも、どんなお話が好きなのかしら~?』

「ブリキのおもちゃとゴミ捨て場、というお話が好きです

 子供が成長したため、その子供とお別れをしたブリキのおもちゃが
 たどり着いたゴミ捨て場で、様々なゴミたちと出会い

 広いゴミ捨て場に取り残された、数々の残骸を作り替えて
 道具を作ったり、仲間を増やしたりして

 素敵なおもちゃの町を作り上げていくお話です

 最後に、大きくなった子供と再会して
 おもちゃの町を褒めてもらえたページを、何度も読み返しました」

『ブリキのおもちゃとゴミ捨て場に作られたおもちゃの町
 いいわね~夢があるわ~
 
 きっと毎日お祭りみたいに楽しくて、笑顔の仲間と立派な街に囲まれて
 お祭り騒ぎのような賑やかさだったかもしれないわね

 お祭りと言えば花吹雪、舞い散る花弁は祝い事にはぴったりよん!

 坊や、貴方は何か好きな花とかあるかしら?

 なければ何色の花、とかでも構わないわ
 貴方を祝ってくれる花は、いったいどんな花なのかしら? 』

「花…花……花ですか

 道に咲いている花はきれいで、師匠やエコー様と歩く時
 見かけたらよく目にとめていますが、好きな花、と問われると………

 あ、そういえば……、僕が最初に着ていた服
 師匠が選んで、僕に着せてくれていた服に

 青いバラの花飾りが、一つあしらわれていた気がします

 何か一つ選ぶとしたら、僕はあの青いバラの花がいいです」

『あらあら素敵、それが貴方の思い出の花なのね~
 それを知れてうれしいわ~

 それじゃあ、次の質問は~………』

延々と、続々と、次々と

おしゃべりな唇型の鏡が問いただす、質問の嵐は続きました。
魔法に関わる事も、そうでない事も根掘り葉掘り。

しかし不思議なことに、人形アレンをはじめ
最初こそ驚きたじろいでいた、テトラやエレラを含めた全員が

そんな、不思議な魔法道具からの質問攻めな会話のひと時を
煩わしくは感じません。

魔法道具としての、催眠魔法の一種なのか。

はたまた、ただ単純に、質問者の話術力が高く
回答を行う彼らが、不愉快にならぬよう配慮していたからなのか。

約1時間にもわたり、繰り広げられた質問大会は
情報を十分に収集した、手鏡の満足げな挨拶で無事終わりを迎えました。

銀のクローシュ内に、一度戻った手鏡は
狭い蓋の中でカチャカチャと何かをしていましたが、ものの数分で無事に準備を終え

再び、アレン達の前へと登場します。

『大変長らくお待たせしました

 さあさあどうぞ、お客様
 心行くまで召し上がれ、これが貴方への贈り物』

手鏡の挨拶を合図として、銀の蓋がパカリと開き
彼らの目の前に、出来立ての料理が姿をあらわしました。

青い人形には、青と白の食器に青いバラの飾り付け

コーンスープ、クロワッサン、トマトケチャップとチーズオムレツ
ミックスサラダに玉ねぎドレッシング、飲み物はよく冷えたリンゴジュース

桃色の少女には、白地の食器に金色の装飾、シオンとローダンセの飾り付け

冷たいカボチャスープ、ライ麦パン、鶏肉の香草焼き
付け合わせにニンジンのグラッセ、飲み物は甘酸っぱいアセロラジュース

緑色の少年には、木彫りの食器に白と黄色の小さなタンポポが一つづつ

コンソメスープ、キュウリのサンドウィッチ、キノコと豚肉の炒め物
ポテトサラダとトマトのサラダ、飲み物は香ばしい麦のお茶

見た事があったり無かったり、けれどどれも美味しそうな香りを漂わせた魔法の料理。
食べれば不思議な祝いと課題をくれる、特別な料理を目の前にして

「とっても美味しそうです、うれしい、さっそくいただきます」

「うぅ、食べたらメリットだけじゃなくて
 デメリットまで付与される料理だっていうのに……

 こんなに美味しそうだなんて、複雑な気分になるじゃない! 」

「見たことない料理が、何個か混じってる……

 でも、どれもすごくいい香り、美味しそう!!」

それぞれがそれぞれに、それらしい感想を述べた後
意気揚々と、その料理に口を付けていきました。

スプーン、フォーク、ナイフにストロー
さすがにお箸はありませんでしたが、それぞれの料理に適した食器で

自分達に与えられた食事を食べ進めていきます。

そしてあっさりと完食してみせました。
食べ残しも無く、飲み残しもなく、3人が皆30分足らずであっという間に食べ終えたのです。

「うむ、お味はいかがだっただろう?
 君達の口に合っていれば、幸いだ

 ……魔法の効果が表れるまでの時間は、ほんの数分だ

 さあ、この先に進むといい
 君達の健闘を、陰ながらではあるが祈らせてもらう

 さようなら、機会があれば、またどこかで会おう」

今まで散々、辺りをたくさんのぬいぐるみと魔法の糸で包囲していた

ウィル・コーリスという、陰気で異質な暗い教師は
そんな激励の言葉をアレン達に投げかけると

いともあっさり、彼らをこの先へと促しました。

こうして、アレン達一行は
突如として現れた、謎のパーティー会場を後にして、この先に待ち構える、最後の難関へと進む事にします。

そして目的地、正門へと続く大通り
メインストリートへの入口付近で

彼らは一度、その足を止めました。

理由は簡単、先ほど口にした食事
ミラーリング・テーブルウェアに掛けられたと思われる

それぞれの祝いと課題の効果内容を
罠だらけのメインストリートに挑む前に、把握しておく為です。


「……それじゃあ、えっと

 ここから先が、ウィル先生が話していた
 罠がたくさん仕掛けてあるっていう道になるわけなんだけど

 どうかな? 2人とも
 体調とかに、目立った変化はあった?

 僕の方は、なんだか、魔力量が少しつづ減って来てる感覚があるから
 課題については、これの事かな? っていうのはあるんだけど」

「私は、たぶん
 目に何かしらの課題、デメリットを受けた気がするわ

 さっきまではなんともなかったのに、席を立って、ここまで歩いてくる途中から
 だんだんと視界が薄暗くなってきているもの

 今では、立っているこの場所が
 さっきまでいた、校舎裏の日陰なんじゃないかってくらい

 目に見える景色がどんどん暗くなってきてる

 もしかしたら、このまま見えなくなっちゃうのかも

 祝い、メリットの効果の方はまだ分からないわね

 テトラやさっきの根暗教師の話では
 魔法発動の範囲が広がったり、魔力量が減ったりって事だから

 私も魔力や魔法に関する変化がないか、ちょっと注意してみるわ」

「うん、わかった

 なんにしろ、このメインストリートを、魔法の効果が出る前に
 急いで渡りきるとかは、罠の数や場所が分からない、今の状況じゃ難しそうだし

 とりあえず、それぞれが貰った祝いと課題っていうのが
 どういった内容なのか、明確になってから動いた方が良いのは確かだと思う

 何が出来るようになって、何が出来なくさせられたのかも分からないまま
 突っ込んで抜けられるほど、最後の課題は甘くないはずだし

 少し時間を置いて、料理に掛かっていた魔法が発動しきるまで待とう

 アレン君の方はどうかな? 何か体調に変化とか……

 あれ? アレン君? 」


自分達の身に起き始めた、些細な変化を整理するテトラは

ふと、自分達よりも一歩引いて歩く
背後のアレンへと視線を移しながら、とある違和感に気がつきます。

先程まで、美味しい食事を堪能し、上機嫌であったはずの彼が
どうまいつもより静かなのです。

いえ別に、普段から、決してうるさい部類に入るという訳ではないのですが
だからといって、アレンが無口であるのかと問われると、そんな事はありません。

良くも悪くも、高い能力で得た情報を元に動くアレンは
この3日間、彼の不思議な体質で知りえた様々な情報を

協力者であるテトラやエレラに、逐一こまめに欠かすことなく、いつも共有してくれていました。

それに加えて、自身の好奇心や興味には、無意識か意図的か定かではありませんが
積極的に突き進み、自ら進んで打開策を提案する傾向もあったのです。

そんな彼が、久しぶりの美味しい食事を終え
新たな問題に直面し、これからの方針を決める為に、状況を整理している今の場面で

何も言わず、何も知らせず
二人よりも一歩下がって、後ろを歩いているのは何故なのでしょうか?

目視での魔力探知や常人離れした力を持つ彼が
発言を控えているという行動そのものが

短い時間ではありますが、アレンと行動を共にし、力を合わせ
ここまで進んできたテトラにとっては、違和感の塊でしかありません。


「アレン君? どうしたの? なにか体調に変化があったとか? 」


緑の少年は、少し後ろ側で佇んでいた彼に近寄り、声を掛けます。

改めて、アレンを真正面から見た感想は
やはり、いつもと様子が違いすぎる、という物でした。

まず、目が合いません。

ややうつむきぎみに、下を向いているせいで
いつもの無表情すら、今は確認する事ができません。

次に、立ち方がおかしいのです。

立っているとはいえ、それは棒立ちです。
巨大な杖は、相変わらず抱えたままですが、両腕はピンと下方向に伸びきっており

厚手のグローブに覆われた手の平で
自身が身に着けている作業服のズボンを、ぎゅっと握り絞めてしまっていました。

これは明らかに様子がおかしい

この3人の中で、アレンがもっとも、身体に辛い影響が出る効果を、引き当ててしまったのかもしれない。

焦ったテトラは、急いでアレンの肩に手を掛け
体を支える形で、彼を一度その場に座らせようと試みます。


「アレン君! 一度、今持っている荷物も全部降ろして座ろう!
 今、体調にどんな変化が出てるのか話せそう?

 無理に話さなくてもいいから、とにかく、楽な態勢に……」

「え!? アレンがどうしたのテトラ!?
 二人して座り込んで、どこか痛むの?

 待ってて、治療系の魔法陣もいくつか書いてた紙が鞄の奥に……

 うぅ! どうしよう、もう視界が暗すぎて、どれがどの魔法陣か分かんない!」

「エレラ! 目が見えなくなってる状態で、無暗に動くと危ないから
 君も一回こっちに来て、鞄の中身、僕に見せてみて」

「…………テッ、……テト、ラッ、………ぁ、ぅぐっ! 」

「アレン君しっかり! やっぱりどこか痛むの!?
 僕の体に体重掛けていいから、寄りかかって楽に……」


荷物を下ろし、その場に座り込み
アレンがテトラの肩を掴み、彼の体に向かって倒れこんだ、次の瞬間


「……ヴッ、ヴうぅっおぼえぇっ!!

 ゲボッ!! おおぉえええぇぇっ――――!!!! 」

「ぎゃっあぁぁっ―――――――!?!?!?!?!
 あ、アレン君しっかりっ――――!!!!!

 い、息!!!とりあえず、息だけはしてっあとあとあと、えっと

 とりあえずしっかりっ――――――!?!! うわぁっ――――――!? 」

「え!? これ何の音!? 二人ともどうなってるの!?
 大丈夫!? え、どうしようこれ!!?? 

 あぁっ―もう! 何にも見えないよっ――!!! 」


人形アレンは、産まれて初めての嘔吐を経験しました。

しかも、それはそれは盛大に、大胆に
彼、自らがはじめて同志と呼んだ、テトラの胸の中で思いっきり

先ほど食べた料理も含めて、胃の中に入れた物を、ほぼ全て吐き出してしまったのです。


こうして、テトラ、エレラ、アレンの
二人と一体が、ミラーリング・テーブルウェアから受けた

それぞれの 祝い と 課題 の効果内容が、大まかに判明しました。


《アレン》

祝いの効果
魔力による探知機能の範囲拡大と性能アップ
魔力の量や場所、色までしか分からなかった効果が
魔法の詳細な効果や発動条件などの詳細まで探知可能

課題の効果
激しいめまい、吐き気
また、魔力探知や視覚による情報量が
極端に増えた事などが原因と思われる、激しい頭痛と体の感覚麻痺

《エレラ》

祝いの効果
魔力量と、魔力出力量の大幅な増量
元々のエレラの物と比べると、3~5倍程の増加量と思われる
↑アレンの魔力探知による測定

課題の効果
視力の喪失と発熱
体温が平熱の36.4℃から37.5℃までの上昇を確認
↑アレンの特異体質(人形ボディーの機能の1つ)による測定

《テトラ》

祝いの効果
身体的に目立った効果は確認できず
しかし、怖さや不安をあまり感じなくなった
との本人からの申告あり
↑アレンによる心拍数、体温、脈拍共に安定の数値を確認済み
 (こっそりと黙って計測した)

課題の効果
魔力と精霊の加護による恩恵の完全な封印
それに伴い、精霊の声を聞く能力や魔力探知のような能力も使用不可
↑アレンの魔力探知による測定


「アレン、調子はどう?
 めまいや吐き気とか、少しはましになったかしら? 」

「はい、おかげでだいぶ落ち着きました
 エレラ、認識疎外の魔法陣を施してくれてありがとうございます

 入ってくる情報量が減ったおかげで、他の症状も先程より弱くなりました」

「よかった、一時はどうなるかと思ったけど
 アレン君の体調が落ち着いてくれて、ひとまず安心だね!

 エレラちゃんもお疲れ様!
 ごめんね、熱もあってフラフラするのに、無理させちゃって」

「これくらい、どうってことないわよ

 それに、この発熱の症状は
 課題による、デメリットの効果っていうよりも
 魔力量の増加による、副作用みたい感じなのかもしれない

 魔法をいくつか使ってみて、魔力が消費されている最中の方が
 何もせず休んでいる時よりも、ずっと楽だったもの

 もしかしたら、アレンに表れた効果も
 全部が全部、あのしゃべる食器の魔法による効果ってわけじゃなくて

 視力や聴力なんかの、身体能力に優れているアレンだからこそ出た
 副作用みたいなものも、中にはあるんじゃないかしら? 」

「それも確かにあるかも!

 だって実際に、エレラちゃんが持ってた
 いくつかの認識疎外の魔法って

 本来は、呪いの類に入ってくるような
 相手を妨害する系の魔法なのに、今のアレン君にはうまく薬として働いたわけだから
 
 認識できる情報が増えすぎて、僕たちだったら出ないような症状も出たのかも!
 
 でも、応急処置とはいえ
 こうして、対処法を見つけられたのは本当に良かった」

「……え、えぇ、僕は、よかったです、けど

 ………あの、テトラ
 作業服とか、その、その下の肌着とか、ごめんなさい

 まさか、あんなことになってしまうなんて、僕、どうしたらいいか……」

「大丈夫! 気にしないでよ、アレン君!

 元々、作業着っていうのは
 動きやすさに特化した、汚れても大丈夫な服なんだから

 汚れるのは仕方がない事だもん! だから平気!!

 それに、パンツはなんとか無事だったんだから
 ゴールまであとちょっとだし、きっと何とかなるよ! 」

「う、うん、パンツだけは、なんとか無事で、本当によかっわね
 それ以外の服は、貴方もアレンも、ほぼ全滅しちゃったみたいだけど

 ……ね、ねえ、テトラ
 やっぱり、私の作業服のジャケットだけでも、上から羽織ったら?

 私は今、熱があって暑いくらいなんだし
 それに、私は今、目が見えないから、よく分からないけど

 今、貴方たちって、屋外ではありえないくらいの薄着ってことよね?
 薄着っていうか、ハッキリ言うと、下着姿ってことになるんだけど……

 アレンは黒色のインナーとかサポーターを着けた姿で
 テトラにいたっては、革製のブーツとパンツ一枚しか身に着けてないって

 春先とはいえ、さすがに寒すぎるし、絵面もひどいじゃない

 何も事情を知らない人が見たら
 露出狂とか変態に間違えられちゃっても、全然おかしくないわよ」

「大丈夫! なんか大丈夫な気がするし、たぶんいけるいける!
 エレラこそ、熱も出てるんだから薄着はだめだよ!

 僕たちの事は気にせず、温かくしててね! 」

「あ、あの、テトラ

 僕はこの、長袖の黒インナーの下にも、もう一枚タンクトップを着ているので
 せめて、この長袖のインナーだけでも、上半身に身につけて下さい

 なんというか、僕は寒いというより、関節部を見られたら困る、というだけなので
 保護用のサポーターさえ、装着していれば、後は何も問題なく………」

「問題大ありだよ! それだとアレン君が寒いじゃないか!

 心配しないで、大丈夫だから!
 アレン君も、落ち着いたとはいえ、まだ一人じゃ立てないくらいフラフラなんだから

 僕のことは、本当に気にしないで!

 なんだか今は、なんでもうまくできる気がするんだ
 こんな気持ちはじめてだ……

 なんなら、パンツもいっそ、履かなくて大丈夫なんじゃ……」

「それはやめて!!! 絶対にやめて!!!! 」


ミラーリング・テーブルウェアからうけた、摩訶不思議な魔法を発端に
ものの数分で陥った、これまでに類を見ない非常事態。

視力を制限されたうえ、副作用の発熱でフラフラのエレラ。

猛烈な吐き気と眩暈が原因で、作業服をゲロまみれにしてしまった
長袖のインナー、太ももまでのサポータースパッツ、ブーツとグローブに加え
人形特有の関節部をカバーする為のサポーターを身に着けた薄着のアレン。

そして、そんなアレンの巻き添えを受けて
ほぼ全身の服をダメにしてしまった、ブーツにパンツ一丁の元気なテトラ。

三名中、二名がほぼ下着しか身に着けていない
全裸手前の状態のせいで
彼らはその場に座り込むしか出来ない程、おかしな追い詰められ方をしていました。


情報過多による、身体的機能の多数の麻痺
それに加えて、体内のエネルギー源をほぼ全て吐き出してしまった人形は
いざという時の為に考えていた、とっておきの力技も使えず

和らいだとはいえ、いまだに続く激しい頭への衝撃に耐えながら
次なる方法を探します。


(………、だめだ、なんかいろんなことが、頭の中に入ってきて
 さっきから全然、考えがまとまらない

 ………なんでテトラは、あんなに元気なままなのだろう? 
 あ、だめだ、また余計な事を考えてる)


さて、どうしたものか
まとまらない頭を、必死に回転させるアレンの横から

パンツ一枚で元気いっぱいなテトラが、ハイテンションに質問してきます。


「アレン君、アレン君、ところでさ
 魔力探知がすごくなったってことだけど、具体的にどんなことが分かるの!?

 アレン君の探知能力って、一日目からの探索でも大活躍だったし
 それが強化されたなんて、どうなるんだろう!

 あれかな? 建物とか人とかも全部、スケスケになって中身も見えちゃうとか!? 」

「いえ、あの、そんな感じじゃなくて……
 数値とか、文字で見えるみたいな、あと、魔力が通ってる道筋とか」

「すごい! かっこいい! SF小説のロボみたいだ! 」

「っ!?!?!? ちが、ちが、い、ます、ロボ、じゃないです」


そして、テンション高めなテトラの魔の手は
熱と盲目でフラフラなエレラにも及びました。


「エレラちゃんの魔力量はどうなのかな!?

 アレン君の測定では
 昨日のアレン君やいつもの僕程じゃないらしいけど、すごく増えたって話だったね!

 エレラちゃんは、僕よりもいっぱい頭が良いし
 たくさんの魔力で、なんでも出来ちゃいそう!

 そういえば、魔法陣のストックって、あとどれくらいあるんだろう?
 なにか探して欲しかったり、取ってほしかったら教えてね!

 僕、頑張ってエレラちゃんの持ってたリュックを漁って探すから! 」

「い、言い方もひどければ、話の勢いもひどい!

 質問が多すぎて、何から答えていいか分からないじゃない!
 とりあえず、鞄は漁らなくていから、私の手元に持って来てよ

 魔法陣の紙くらい、目が見えなくたって、自分で取り出せ……あ、いたっ!

 はさみの先が、ポケットから飛び出してた? 指先を切っちゃった、のかも? 」

「エレラ、それは普通に危ないので
 今は、ハイテンションなテトラにお願いしましょう

 とりあえず、切った箇所を消毒液か水で洗わないと……」

「エレラちゃん! ちょっと待っててね!
 今、君のリュックを漁って探すから! 」

「えぇ~ん!! なんか、やだよ~!!!
 今のテトラ、圧が強いし暑苦しいよ~! 誰か助けて~~!!! 」


しかし、話の流れは
意外な所から、解決に向けた糸口へと動き出します。

やいのやいのと、しばしの茶番が続いた後


「でも、よかったよね! この調子なら、日暮れまでに何とかなりそう! 」


そんな、今の彼らの惨状からは、とても想像できない程
希望に満ち溢れた意見を言ったのは

何を隠そう、先程からテンションのおかしくなっている
パンツ一枚のテトラだったのです。


「え? それは、どういうことですか? 」

「そうよ、テトラ
 今は私もアレンも、ほとんど自分達だけじゃ動けないし

 貴方だって、自信満々の言動をしてはいるけれど
 パンツ一丁の、変態ファッションであることには変わりないのよ!? 」

「違うよエレラちゃん! 僕は今、パンツだけじゃなくて
 自分のブーツと、アレン君から貸してもらったグローブを手にはめてるから

 厳密にいうと、これはパンツ一丁じゃないんだ
 ただの、服を着ていない人なんだ! 」

「どっちでも変態よ! 」

「二人とも、話がすごくそれてきました
 パンツの話題は、一度どこかに置いておきましょう」


なんとか会話の流れを元に戻して
パンツ姿のテトラが語ったのは、お茶会の会場に入る前にやっていた作戦

彼らの強みをそれぞれに活かした、三人一組の防御編成
それを、今の状況に合わせて役割を変える、配置換えの提案でした。


「さっきの、紫色の根暗な……えっと、なんて言ったっけ
 あ、そうそう! ウィル先生、だったっけ? あの人も言ってたじゃん!
 
 即席なのに~いい感じだね~見事だね~、みたいなことを!

 試験監督の先生が、そんなこと言うんだから
 あのやり方自体は、そこまで悪い方法じゃなかったはずなんだよね

 それに、ああいう三人で一組のやり方を、
 たしか、スリーマンセル? とか言うんだって、ついさっき思い出してね!

 かっこいいよね~スリ~マンセル~だって~、フフフ
 なんだか、特殊任務を任されたスパイのチームみたいだよ~

 響きがね、もう、かっこよくてずるい! なら、これはやるっきゃないでしょ! 」


かくして、彼らは進み続ける事を決めました。

誰かの弱さを、誰かの強さで支えながら
共に手を取り、目指すゴールへとたどり着く事を決めました。


「手を取りっていうよりも、僕に至っては、これ完全におんぶじゃないですか?

 テトラ、降ろしてください、怪我をしてしまいます

 僕はたしかに、師匠や周りの大人に比べれば
 テトラたちと、体格は近しい部類には入るとは思いますが

 体重だけでいえば、テトラやエレラとは
 比べ物にならないくらいには、相当重いはずなのです」

「そ、そうよ、アレンの体重とかはよく知らないけど

 左手で私と手をつないで、右手で背中におぶさるアレンを支えるなんて
 改めて考えると、やっぱりこのやり方は無茶過ぎないかしら!?

 メインストリートがそこまでの長距離じゃないとはいえ
 かといって、短い距離でもないわけだし

 これじゃ、テトラの負担があまりにも大きい気が……」

「だからだよ、言ったでしょ?
 お互いが今抱える弱点を、それぞれの強みで補おうって

 祝いの効果で、魔力探知の性能がすごく上がっているアレン君が
 メインストリートに仕掛けられている罠を調べて僕たちに教える

 それでも、回避させる気が無いような罠も、いくつかあるってことだから
 それをエレラの防御魔法で防いでもらう

 エレラにはそれに加えて、アレン君や僕の杖とか
 他の荷物なんかも浮遊魔法で運んでもらう

 それで、体への魔法効果が一番なかった僕が
 アレン君が教えてくれる道を進みながら、動けないアレン君と
 目の見えないエレラを、正門前まで連れて行く

 逆を言えば、今の僕はお得意の魔力量も精霊の加護も封じられてるから
 やれる役割には限りがあるし

 やっぱり、この配置が今できる一番の方法だと思うんだ! 」

「……でも、さすがにこれは」


背中に担がれたアレンが、ここまでこのやり方に難色を示した訳は

何も、この恥ずかしい姿を
正門前で待っているかもしれない、自分の師匠に見られたくないとか

いつもより大きいテトラの声が、軋む頭に響いて辛いとか

そういった理由だけではありません。


先程、会話の中で何気なく紛れた
アレンの体重に関する一つの情報。

10歳の少年、と身分を偽る人形のアレン

その見た目は、10歳という設定に相応しく
身長は、テトラよりも少し低めの141cm

決して大きくはありませんが、10歳という設定にはピッタリの背格好です。

しかし、その例外にあたるのが彼の体重でした。

身長141cm、肉付きは程よく
瘦せ型でも、かといって肥満気味というわけでも彼の体重は

  65kg

10歳男児の平均体重とされる33.9kgと比べると、約二倍近い重さです。

これは、人形の体を構成する、特別な材料に由来する重さなのですが

しかも、これだけの重さにもかかわらず
その数字はあくまで、アレンそのもの、彼の体だけの重さを計測した時の物なのですから

実技試験に向け、体の中に予備のパーツやちょっとした道具を隠し持っている
今のアレンの体重は、おそらく70kg近くはあると予想できました。

それを、アレンよりも少し身長が高いだけのテトラが
笑いながら、にこやかに背負っているのです。

約70kg、大の大人でも抱えられるかと問われると、顔をしかめずにはいられない
そんな重さであるにも関わらず

12歳の、中肉中背の少年テトラが
そのアレンを背負って、メインストリートを進むと言います。


「テトラ、無理です
 たしかに、テトラには今のところ、体調への大きな影響はあまり確認できませんが

 それでも、僕を抱えて進むなんて……」

「大丈夫だよ、アレン君」

心配するアレンを背中に乗せたまま
低い姿勢で、そう力強く答えるテトラ。

目の見えないエレラの手を、決して離さぬようにと縄でつなぎ
手足の一つすら、まだ満足に動かせないアレンを
絶対に落とさないようにと、まだ細いその体に縛り付けました。

訳の分からない、底なしの自信を語る彼に
人形は困惑を隠せず、再び彼に問いかけます。

しかし、テトラからの返答は
人形のアレンには、まだよく理解できない内容でした。


「ごめん、実は根拠とか理由とか、特に何も無いんだ
 このまま、低い体勢を保って、道に敷かれた大きなタイルを
 
 一枚づつ、ゆっくり進んでいければ

 途中で、アレン君の足を地面につけて、僕も休憩をとれるし
 回避が難しい魔法は、エレラちゃんに防いでもらえれば、なんとか進めると思った

 たぶん、普通に進んだり、走ったりするよりも、何倍も時間はかかるけど
 日暮れまでには、なんとかたどり着くんじゃないかな~って

 それぐらいの、ざっくりした計画なんだ、でも」


続けて、彼は話しました。
テトラの背中に身を預けた、アレンくらいにしか聞き取れない程に

小さく、独り言をこぼす時くらいの
か細い、囁くような声で。


「空中列車でも、ペンダントを取り戻したのは僕じゃなかった
 アレン君や見知らぬ親切な人に、助けてもらっちゃって

 この実技試験でもそうだ、運よく君と再会できて、協力しようってなって
 エレラちゃんみたいな、頭のいい子にも出会って、いろんなことを教えてもらった

 僕の魔法だって、たくさんの魔力や遺産の加護に寄って来る
 精霊たちの手助けが無いと、ほとんど何もきないものばっかりだった

 僕、よく考えたら
 いつも誰かに助けてもらってばかりだ、貰ったり、引き継いだり
 誰かが作ってくれた、綺麗な道ばっかりを言われた通りに歩いているだけ

 中身、スカスカすぎるんだよね
 何も無くて、空っぽ、詰まってなくて、やたらと軽い
 
 それが嫌で、辛くて、あの悪い夢の先みたいな、最悪な未来にしたくなくて
 わざわざこんなところまで来たのに、これじゃ何も変わらないよ」


違和感しかありません。
どうして、こんなに辛そうな話をしているのに

アレンを持ち上げて、少しづつ進む足は
既に、わずかながらにとはいえ、震えはじめているというのに

どうして、テトラは笑っているのでしょうか?


しかも、今まで何気なく見ていたような
晴れやかで明るい、まだ幼さを残す、彼のあどけない笑顔ではありません。

彼の顔には、口も目も、三日月のように丸く歪めんだ
影の差す、恐ろしい笑みが浮べられていました。


「だから、僕は今、賭けをしたんだ

 この試験の最後の課題、この道を進み切れずに
 途中で諦めたり、また誰かに助けを求めて救われたり、そんなことするなら

 僕は一生このままだ、何も変わらず、何処にも進まない

 誰かに与えてもらった物を頼りに、言われた通り進むだけの
 中身も何も空っぽのまま、バカみたいな終わり方をする、どうでもいい人生になる

 こんな所で、ここまで来て、何も出来ずに終わるやつが
 これから先、何かできるわけがない

 でも逆に、今ここで、この道を渡りきって
 エレラちゃんもアレン君も、誰一人の手も放さずに、正門までたどり着けたら
 
 僕はこの先、何だってできる
 なんにでもなれて、何処にでも行ける

 僕がここまでやってきたことは、何も無駄じゃなかったって
 そう思うことにしたんだ」

「……テ、テトラ?」


これは、先ほどかけられた魔法の影響なのか
テトラが奥底に秘めて、隠し続けた本心なのか

産まれて日の浅い、人形のアレンには、まだその心が分かりません。

ただ一つ、アレンに言えることがあるとすれば

この追い詰められた状況の中で

突然の視力の喪失や
体をむしばむ、熱の苦しさに耐えているエレラが

今、テトラの顔に浮かぶ
恐ろしい笑みを見ずに済んで良かった、という事だけでした。


「? 二人とも、さっきから静かだけど、どうかしたの?

 今、私何も見えないから
 二人が黙っちゃうと、周りの状況がほぼわかんないのよ!
 
 こわいの! もう、手を繋いで引っ張られてるのが恥ずかしいとか
 見えないけど、テトラがほぼ半裸だって聞いて複雑な気持ちになるとか

 わがままなこと言わないから! 作戦でも何でもやるから!
 お願いだから、何かしゃべってよ~!! 」

「あー、ごめんごめん、もう大丈夫だよ
 不安にさせちゃってごめんね、エレラちゃん

 さあ、ゴールまであとちょっとだ
 
 気を引き締めて、みんなで進もうか!

 ………アレン君も、それでいいよね? 」

「………………わかりました
 
 罠の仕掛けられている場所は、既に把握済みです
 このまま、みんなで進みましょう」


彼らは再び進みます。
もうすぐそこに迫った、試験の終わりを目の前にして

それぞれの思いを、心に秘めながら。
 
 


(おまけ)

〔誰かのノートより抜粋〕

兄様達の近況を調べてもらった
それぞれが、うちの家が管理する領地の監理をしていたり

まだ体調の回復が思わしくない兄様は
少し離れた位置にある、別邸に身を寄せて療養をしているらしい。

うちの領地は主に、食糧生産を目的とした土地がほとんどだから
農作業に寄った魔法を覚えておくと後々困らないかもしれない。

また、農業だけでなく酪農という分野もあるから
動物や植物関係の魔法や技術も習得しておいて損はないと思う。

また、領地の経営となると金銭管理の作業も多くなるわけだから
自動計算系の技術もぜひ取得しておきたい。

他にも、領地経営に関わらず
もし万が一、僕が何かの間違いをおかしたり
周りにそう、勘違いされ、ここを出なければいけなくなった時にも備えて

野営経験、商業に関する知識、一人での日常生活能力など
学んでおきたいことは、いくらでもある。

今後の方針や習得技術の目標を整理するために
こうして紙に書き出してみたのに、結局まとまらない。

必要なことが多すぎる。

成人の儀式までに、なんとか行けるところまで行かなくちゃ

たとえ夢であったとしても、用心しておくにこしたことはない。
なんとしても、あのみじめな終わり方だけは回避する。




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