残虐な魔王は今日も側近を愛でる

２話目

「ラフィン、俺から離れるなよ」

「それは……レイ様の足手纏いになってしまいます」

兵士達を睨みつけながらスイッと視線をラフィンに流せば、困惑しているのか、どう返せばいいのか分からないと言った表情を浮かべていた。

そう言えば、勘違いを訂正するのを忘れていた。

「俺がお前を売るなど、そんな馬鹿な話を信じている訳ではあるまいな？」

「えっ？レイ様が、俺のことをいらないと言ったのでは……」

「そんなことはありえん。俺にはラフィンが必要だ。……と、先にコイツらをどうにかせねばならんかったな」


言い終えると同時に痺れを切らした兵士達が襲い来る。

まあ、誰も待ってくれなど言ってないのだから、待つ必要などいらなかったんだがな。

襲い来る兵士達に向け、腕を横に一振りすることで発生した巨大なサイクロンが兵士達を一瞬のうちに飲み込んでいった。

「ぎゃあああああ！！」

「た、たすけ………うあああ！！」

兵士達の悲痛な叫び声が響き、ビシャっと血が地面を濡らしていく。

その様子を見ていた他の兵士達は、顔を青ざめさせながら後退りしていく。

「俺がお前を離してやることなど、この先一生ない」

「レイ様……でも、」

「くどいぞ、ラフィン」

「………っ、申し訳ありません」

まだ言い募ろうとするラフィンを一喝すると、ハッと我に返ったのか一言謝罪し、口を閉ざした。

「さて、俺の所有物モノに無粋な真似をしてくれた奴に仕置きをせねばならんな」

ラフィンから視線を逸らし、兵士達に向ける。

「俺の所有物モノを見世物にした罪は重いぞ」

目を細め、薄らと笑みを浮かべた。
その笑みは、とても冷たく見るもの全てが恐れ戦くほどだった。

無詠唱で魔法陣を展開させると、頭上に無数の火の玉が現れた。
それを周囲にいた兵士や民間人に放った。

「イヤ！やめて！」

「家には幼い子が！」

「あああ！！熱いいいぃ！！」


無数の悲鳴、叫び、助けをこう声を無表情で眺めながら、ラフィンを姫抱きすると、その場から姿を消した。


レイたちが去った後、まさに地獄絵図が広がっていた。
生きたまま焼き殺された人の顔は原型を留めておらず、誰だか識別するのが困難な状態だった。
ただの炎魔法で焼かれたとは思えない現状に、人々は恐怖に怯えた。


◆

根城の広間に転移し、ラフィンを床に下ろし、手速く両手を拘束していた枷を外し、王座へと腰をかける。

「ラフィン、傷を見せろ」

最早布切れと化している服を脱ぐよう促し、傷を見せるように言う。

「は、はい」

緊張しているのか動きがぎこち無く、ゆっくりとした動作でハラリと服を脱ぎ捨て、全てを曝け出す。

さらけ出された肌には無数の切り傷に、殴られたのか青アザが数箇所出来ていた。

顔にはあまり目立つ傷がなかったから、体もあまり傷がないかもしれないと思ったが……そこまで優しくはないか。

じっくりとラフィンの身体を眺めていると、ラフィンの雄からタラリと蜜が垂れ落ちた。

「見られてるだけで、感じてるのか？」

「こ、これは…」

指摘されて恥ずかしそうに両手で自身を隠す。
期待しているのか紅くなった顔で、チラチラと俺を伺うように見てくる。

そんな様子に今すぐにでも甘やかして、激しく攻め立てたくなる。
だけど、今は我慢だ。
鞭と飴は使い分けなければ意味がない。

「そう言えば手当がまだだったな。その前に、先に身を綺麗にしようか」

何も無かったように話を変えると、あからさまに肩を落としたラフィンだが、俺の言葉に静かに頷いた。