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第二章 僕と死神さんと、それから……
第22話 天才だよ、先輩ちゃん!
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「えっと。もう一度言ってくれませんか?」
「え? 私も将棋部の活動に参加するって言ったんだけど」
はてなマークを浮かべる僕と先輩に向かって、不思議そうに首を傾げる死神さん。
「いや……いやいやいや。急に何言ってるんですか?」
「だって先輩ちゃんに勝ち逃げされるの悔しいし。まあ、君と一緒に参加するわけだから、帰ってすぐに晩御飯が食べられないっていうのは変わらないけど。将棋のためなら問題なし!」
そう言いながら、死神さんは右手の拳を天井に向かって突き上げます。どうやら死神さんにとって、将棋の価値は晩御飯の価値よりも大きいようです。何という将棋愛。
ですが、まだ問題はあります。
「そもそも、部活は学校の中でやるんですよ。しに……姉さんはうちの学校の人じゃないですよね」
「……は!」
大きく見開かれる死神さんの目。
「分かってなかったんですね」
「ワ、ワカッテタヨ」
「どうして片言なんですか」
理由なんて聞くまでもないでしょうが。って、なんだかこのやりとり、既視感ありますね。
死神さんが将棋部の活動に参加するということは、必然的に彼女が学校の中にいなければなりません。それすなわち不法侵入。もし先生に見つかりでもしたら、大変なことになるのは目に見えています。運動部であれば学外で活動するというのもありそうですが、文化部である将棋部はそれには該当しないでしょう。部室も与えられているみたいですし。
「ううん。何かいい方法ないかなあ?」
「いい方法と言われましても。さすがに学校へ忍び込むのはリスクが高いですよ」
「だよねえ」
その時でした。先輩が「そうだ!」と声を響かせたのは。
「先輩?」
僕の言葉に、先輩はニンマリと笑みを浮かべます。何か悪いことを企んでいるのは明白でした。
「なんとかなるかもしれないわ」
「ど、どうするつもりなんです?」
「外部コーチよ」
「へ?」
外部コーチ? それって確か、学校の外から指導者を招くっていう……。
「最近うちの学校で、部活動をもっと活性化させようっていう話が出てるらしくてね。その一環として、外部コーチの設置を推奨してるみたいなの。だから、それを利用すれば、お姉さんも将棋部の活動に参加できるかもしれないわ」
先輩の言う部活動活性化についての話は、クラスメイトが話題にしているのを小耳に挟んだことがあります。あの時は、自分に関係がないものだと思って「ふーん」としか思いませんでしたが、まさかこんな形で関係してくるなんて。ですが、そんなに上手く事が運ぶものでしょうか。不安は募るばかりです。
「て、天才! 天才だよ、先輩ちゃん!」
そんな僕の気持ちをよそに、死神さんの目がキラキラと輝き出します。そこには不安のひとかけらもありません。
「と、いうわけで。これからよろしくね、お姉さん」
「こっちこそ、よろしくだよー」
二人は、がっちりと固い握手を交わしました。
「ま、コーチとしては頼りないけど」
「むむむ。ま、まだ一回負けただけだし。次は絶対に勝つから」
「ふふ。楽しみにしてるわ」
「あのー。盛り上がってるところ悪いんですけど。本当に大丈夫なんですかね?」
口を挟まずにはいられない僕。どうにも計画が楽観的すぎるような気がしてならないのです。そもそも、外部コーチを雇うのだってたくさんの手続きが必要でしょうし。その他にもつまずきそうなポイントなんていくらでも思いつきます。よほどのご都合主義展開があればなんとかなるんでしょうけど。
「大丈夫、大丈夫。私に任せておきなさい。さて、帰ったらじいちゃんに電話しておこうかしらね。どうやって話をつけようかしら」
「ん?」
突然先輩の口から飛び出した、『じいちゃん』という言葉。その意味が理解できず、僕は首を傾げました。
「あれ? 言ってなかったかしら? 私のじいちゃん、学校の理事長しててね。かなり権力持ってるから、いろいろ口ぎきしてくれるのよ」
「…………へ?」
なんですかそのご都合主義展開は!?
「え? 私も将棋部の活動に参加するって言ったんだけど」
はてなマークを浮かべる僕と先輩に向かって、不思議そうに首を傾げる死神さん。
「いや……いやいやいや。急に何言ってるんですか?」
「だって先輩ちゃんに勝ち逃げされるの悔しいし。まあ、君と一緒に参加するわけだから、帰ってすぐに晩御飯が食べられないっていうのは変わらないけど。将棋のためなら問題なし!」
そう言いながら、死神さんは右手の拳を天井に向かって突き上げます。どうやら死神さんにとって、将棋の価値は晩御飯の価値よりも大きいようです。何という将棋愛。
ですが、まだ問題はあります。
「そもそも、部活は学校の中でやるんですよ。しに……姉さんはうちの学校の人じゃないですよね」
「……は!」
大きく見開かれる死神さんの目。
「分かってなかったんですね」
「ワ、ワカッテタヨ」
「どうして片言なんですか」
理由なんて聞くまでもないでしょうが。って、なんだかこのやりとり、既視感ありますね。
死神さんが将棋部の活動に参加するということは、必然的に彼女が学校の中にいなければなりません。それすなわち不法侵入。もし先生に見つかりでもしたら、大変なことになるのは目に見えています。運動部であれば学外で活動するというのもありそうですが、文化部である将棋部はそれには該当しないでしょう。部室も与えられているみたいですし。
「ううん。何かいい方法ないかなあ?」
「いい方法と言われましても。さすがに学校へ忍び込むのはリスクが高いですよ」
「だよねえ」
その時でした。先輩が「そうだ!」と声を響かせたのは。
「先輩?」
僕の言葉に、先輩はニンマリと笑みを浮かべます。何か悪いことを企んでいるのは明白でした。
「なんとかなるかもしれないわ」
「ど、どうするつもりなんです?」
「外部コーチよ」
「へ?」
外部コーチ? それって確か、学校の外から指導者を招くっていう……。
「最近うちの学校で、部活動をもっと活性化させようっていう話が出てるらしくてね。その一環として、外部コーチの設置を推奨してるみたいなの。だから、それを利用すれば、お姉さんも将棋部の活動に参加できるかもしれないわ」
先輩の言う部活動活性化についての話は、クラスメイトが話題にしているのを小耳に挟んだことがあります。あの時は、自分に関係がないものだと思って「ふーん」としか思いませんでしたが、まさかこんな形で関係してくるなんて。ですが、そんなに上手く事が運ぶものでしょうか。不安は募るばかりです。
「て、天才! 天才だよ、先輩ちゃん!」
そんな僕の気持ちをよそに、死神さんの目がキラキラと輝き出します。そこには不安のひとかけらもありません。
「と、いうわけで。これからよろしくね、お姉さん」
「こっちこそ、よろしくだよー」
二人は、がっちりと固い握手を交わしました。
「ま、コーチとしては頼りないけど」
「むむむ。ま、まだ一回負けただけだし。次は絶対に勝つから」
「ふふ。楽しみにしてるわ」
「あのー。盛り上がってるところ悪いんですけど。本当に大丈夫なんですかね?」
口を挟まずにはいられない僕。どうにも計画が楽観的すぎるような気がしてならないのです。そもそも、外部コーチを雇うのだってたくさんの手続きが必要でしょうし。その他にもつまずきそうなポイントなんていくらでも思いつきます。よほどのご都合主義展開があればなんとかなるんでしょうけど。
「大丈夫、大丈夫。私に任せておきなさい。さて、帰ったらじいちゃんに電話しておこうかしらね。どうやって話をつけようかしら」
「ん?」
突然先輩の口から飛び出した、『じいちゃん』という言葉。その意味が理解できず、僕は首を傾げました。
「あれ? 言ってなかったかしら? 私のじいちゃん、学校の理事長しててね。かなり権力持ってるから、いろいろ口ぎきしてくれるのよ」
「…………へ?」
なんですかそのご都合主義展開は!?
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